ぐりーくらぶろぐ -24ページ目

SS『求め合う二つの魂・1』(GS美神)

 原作終了後、5年。
 横島は高校卒業後、美神と共同経営者として美神・横島除霊事務所で働いています。
 共同経営者となった頃から、二人の仲は少しづつ接近。
 相変わらず美神はあまり素直ではありませんが、以前ほど横島の事を邪険にしなくなったのも事実。
 無論、横島が以前ほどには節操なしではなくなった事も影響していますが。

 この話は、横島忠夫、22歳の誕生日に始まります……。

   ◇◆◇◆◇◆

 現代に生きる魔女が経営するレストラン『魔鈴』。質の高い食事を良心的な価格で提供し、人々の憩いの場となっているこの店の営業時間は、基本的に夜9時までとなっている。
 しかし今夜は別だ。深夜まで──ひょっとすると、朝までになるかもしれないが──この店は貸切られている。それも、女主人のごく私的な関係者たちのために。
 本日、横島忠夫はめでたく22歳の誕生日を迎えた。『美神・横島除霊事務所主催』のそのパ-ティ(個人名を出すことを頑として拒否した人物がいたとかいないとか……)を行う会場に選ばれたのが、この『魔鈴』である。たとえ彼の共同経営者たる女性が店主を毛嫌い……というか、苦手意識を抱いているとしても、参加者の顔ぶれを考えればここがベストなのであった。
 ましてや、特に悪感情を持っているわけではない他の面々が、賛同しないはずはない。

 そんなわけで、今夜は横島の仲間達がこの店に勢揃いしていた。
 最近、「気の所為か、少し丸くなったような……?」等と影で言われている、美神令子。
 少女と呼ばれる年齢を卒業し、大人の女性への成長を果たしつつあるおキヌ。
 ようやく少し落ち着きが出てきた、人狼のシロ。
『傾国の美女』と呼ばれた色気を、少しずつ身に纏い始めた、妖孤タマモ。
 彼女達、事務所のメンバーをはじめとして、神・人・魔の別なくたくさんの者たちが集っている。

 様々な人々に囲まれ、馬鹿騒ぎしている横島。今も雪之丞と共に、美神が持ち込んだ(正確に言えば、横島に命じて持ち込ませた)カラオケセットで昔のアニソンを歌っている。
『カラオケ忠ちゃん』の異名は伊達ではない。意外に美声の持ち主である事が判明した雪之丞共々、ノリノリで歌っていた。


 賑やかな歌声。やんやと湧き上がる歓声。楽しげな会話。当初から争奪戦の様相を呈していた食事。
 だがその一方、今日の主役である横島は、騒ぎを余所にまったく別の事に思いを馳せていた。

 ここ数年、考え続けていることがある。そうして今日まで、悩み続けていた。
 答を出すのは容易ではない。

 彼の悩み。それは美神へのプロポ-ズ。

 その行為が、一般的に言って相当な難題であることは間違いない。
 横島忠夫はあらゆる意味で一般とは言いがたい男であるが、彼にとってもやはりプロポーズの決心は困難を極めていた。
 ただ、その困難の意味合いは大きく異なる。否、重なる部分もあるのだが、より深く彼を悩ませる要因が、一般とは言いがたい経歴を送った彼にはあった。
 そうでなければ5年間も悩み続けたりはしない。

 しかし、何時までも逃げていたくはなかった。今日は22歳の誕生日、区切りとするには、なかなかに相応しい日であるはずだ。
 今日こそ、結論を出そう。彼は、そう決心していた。

(さあ、よく考えろ。
 俺は、ちゃんと成長できているか? あの美神さんに相応しい男に、なれたのか?)

 あの南極での、そして最終決戦での、美神との共振合体。
 その経験を通じて、横島は彼女の精神の深奥に触れ、そして理解した。
 美神の中には、確かに彼を想う気持ちがあるのだという事を。
 それなのに、彼女自身の性格もさる事ながら、彼のいいかげんな態度の所為で、まるで素直になれずに居るのだという事を。
 他の女に惚れ込み、彼女のために強くなろうとする彼を見ながら、密かに傷ついていた事を。
 そして、ルシオラの死以降も変わらず流れ続ける時の中、横島は自分の中にも確かに彼女への想いがある事を知ったのだ。

 そんな彼であったが、彼は己に対する評価が誰よりも低かった。
 こと仕事に限れば、事務所のメンバーは、稀に見る素晴らしいチームだ。その一員として、家族にも似た掛け替えのない絆を作っているという自負はある。
 だが、自分が美神の隣に立つに相応しいだけの力を持っているとは、どうしても思えずにいた。

(しかし、俺も事務所の共同責任者。
 美神さんが……あの美神さんが、今では俺を一人前だと認めてくれてるんだ。
 十分じゃないにせよ、分不相応だと言われないだけの人間になれたはずだ)

 そう。客観的に見れば、彼は世界最強のゴ-ストスイ-パ-。
 背も伸び、収入も格段に増え、加えて煩悩に節度が伴うようになった(煩悩魔人から煩悩青年に変わっただけだが)彼は、恐ろしく高スペックの男であると断言してもいいはずだった。

 文句無し、と判断できる、今の自分。
 だが、彼はまだ悩んでいた。
 それは……。

「こんばんは~。
 お、横っち、元気そうやな!」
「銀ちゃん!? 来てくれたんか!!」

 幼い頃からの親友、堂本銀一の来訪に、横島は悩む心を毛筋ほども表情に出さず、一段と嬉しそうな表情を浮かべた。
 だが、その顔はすぐに心配そうになる。

「……ええんか、銀ちゃん? 仕事忙しいんやろ?」
「馬鹿言え、俺等は親友やないか。そんな気ィつかうなや」

 大袈裟に手を振る親友。その姿から、自分への友情を感じ取り、横島の胸に熱いものが込み上げてくる。

「よっしゃ、じゃあ銀ちゃん! プロの歌声、みんなに聞かせたれや!!」
「おおっ! 任しとき!!」

 拍手で迎えられながら、自らの持ち歌を熱唱する銀一。
 そんな親友を皆と同様拍手で盛り上げながら、しかし心の一部は中断された思考へと向かう。

(美神さんの最大の魅力は、何といってもその溢れんばかりの命の輝きだ。容姿の美しさは無論だが、それがあの人をさらに美しくしている……)

 本当は、初めて出会った時から気づいていたのかもしれない。
 彼女の真価に。
 彼女の、本当の素晴らしさに。
 だからこそ余計に……。

(俺はあの人の隣に立てるだけの輝きを持てるようになったんだろうか。あの人に見劣りしない、魂の輝きを……)

 今までは、ここで止まっていた。どうしても、自分の中の誰かが、

『まだ駄目だ。おまえでは、とても彼女に相応しくない』

 と彼に囁くのだ。

 だが、今日は。

(なれた、筈だ。俺もこの何年か、必死で頑張ってきた。
 あの人と同じ種類の強さを、輝きを手に入れたいと思って、努力してきたんだ……)

 22歳の誕生日を迎えたことが、彼の背中を後押ししてくれた。彼に、客観的に自分を見る目を与えていた。



「お料理追加ですよ~!」

 軽やかな声に、あっという間に料理がなくなった為(人数が多い上に、飢えた大喰らいが多いのだ。虎とか爺とか吊り目とか)食いっぱぐれていた女性陣が反応する。

「も-お腹ペコペコなワケ」
「うわあ~~、おいしそう~~」

 そんな欠食人間達の姿を横目で見、自分の周りに席をとったおキヌやシロタマと談笑しながらも、彼はさらに心の一部で自問自答を続けていた。

 彼が自分の気持ちを言えずにいたもう一つの理由。
 それは、ルシオラの事。
 初めて恋愛感情を自覚した相手。誰よりも愛した魔族の少女。
 彼が、彼自身の手で止めを刺す形になってしまった女性。
 いつものセクハラで誤魔化しても、彼女への気持ちはそう簡単に薄れなかった。守れなかった、救えなかった後悔と共に、生々しいまま残り続けていた。
 そんな状態で他の女性に想いを打ち明けられるわけがない。

 そして、それとは別の、大きな問題があった。
 それは……。

(アイツを産ませる為の、道具にしてしまうんじゃないか?)

 自分に命を分け与え、死んでいったルシオラ。彼女は、横島自身の子供として転生する以外に復活の道は無い。
 つまり、彼の恋人を取り戻す為には、他の女性との間に子供を作らなければならないということだ。
 この策を知りながら美神にプロポーズすることは、彼にはできなかった。ルシオラと彼女と、双方への侮辱としか思えなかった。
 仮に結婚し、美神が身篭ったとして、『ルシオラ』を期待せずにいられる自信が、彼にはなかった。そして、その思いを隠し通す自信もなかった。美神がどれだけ傷つくか、想像するまでもなくわかる。彼は苦悩した。

 だが。

(いい加減振り切らなくちゃ、な。
 俺の子は俺の子として幸せにする。それだけだ)

 ルシオラのことは、忘れない。彼女と恋をした記憶は、大切な思い出として残り続ける。
 その思い出を大事に抱えながら、前へ進んでいこう。彼はそう決めた。

(──ぉおっし!)

 膝を叩いて立ち上がる。
 考えはまとまった。今夜、自分は美神にプロポ-ズする。
 そして、約束するのだ。彼女を幸せにする事を。

「よっしゃ、銀ちゃん!! 次一緒に歌うで!!」

 マイクを雪之丞から奪い、横島は叫んだ。
 大事な時を控えて、頭を一度空っぽにしておきたかったから。
 横島忠夫、一世一代の晴舞台になるはずだから。

書式が決まらん

HPをブログに統合してしまおうと画策しているわけなのだが、SSの書式をどうしようかで迷っている。
この機会に一気に修正してしまいたいなと思っているのに、そこが決まらないと直しようがない。

具体的には、

・会話文の前と後を一行空けるか否か
・段落始めを一文字分空けるか否か

この二つ。

……うーん、書式が混在してるのは正直気持ち悪いけど、迷ってる間に無駄に時間が過ぎていくのを考えると、もう過去のSSについてはそのままにしとこうかなあ。

SS『同じ味』(とある魔術の禁書目録)

その日。
『グループ』のアジトにいたのは、一方通行と結標淡希の二人だけだった。
火にかけられたケトルの、シュンシュンという音のみが支配する室内。
結標の姿は一方通行の視界にはない。ただ何やらこそこそしている気配だけが伝わってきていた。
もちろん、彼女が何をしていようが気に留める一方通行ではない。ごく自然に意識から外し、杖の分解整備を進めていた。
そして、それは『仕事』時以外の『グループ』としては、ごく当たり前の姿だった。

だから、その呼びかけは、実のところきわめて異例のものだったのだ。

「ねえ、一方通行」
「あァ? なンだ結標」
「コーヒー飲もうとしたんだけれど、ちょっと淹れすぎちゃって。
 あなたコーヒー好きだったでしょ?」

言われて顔を上げると、結標が彼の方へ歩いてきていた。
両手に一つずつ、マグカップを手にしている。

「……あァ、つまり余ったから飲めってか。
 俺ァ別に、コーヒー好きってわけじゃねェんだがなァ」
「どうせ缶のしか飲んだことないんでしょ。
 たまにはちゃんと淹れたの飲んでみれば?」
「……なンだとォ?」

缶コーヒーは、彼の数少ない趣味だ。
それをあっさりけなされ、一方通行は少しばかりカチンときた。

「いいぜェ? そこまで言うなら飲ンでやろうじゃねェか。
 早く寄越しやがれ」
「何よその言い草。……はいどうぞ」

ふわり、と漂う香気が、鼻先をかすめる。
カップを受け取りながら、一方通行はふと思った。
先ほど結標に揶揄されはしたが、そういえば確かに、

(こうやって淹れたのを飲むのは、初めてかもしれねェなァ)

口をつける。

まず感じたのは、鮮烈な苦味。
次いで広がる、缶コーヒーとは比較にならないくらい深いコク。
その裏に隠された、僅かな酸味。
ややクセのある、なのに飲みやすいその味に、一方通行は目をしばたかせた。
これは――

「……どう?」
「コーヒーってなァ、こンな味だったのか――っ!?」

問われ、零れ落ちた言葉に愕然とする。
なんだ今の満足げな呟きは。
まるで『今まで自分が飲んでいたのはコーヒーじゃなかった』とでも言っているみたいではないか。

「ふふん」
「ち、ちげェよ、今のは……くそォっ!」

得意げにニヤニヤされ、一方通行は歯軋りしたが、出てしまった言葉は取り消せない。
彼はなるべく結標の顔を見ないようにしつつ、ちびちびとカップの中身を空にした。
押し付けるように結標に返す。

「……おらよ」
「ごちそうさま、の一言くらい言えないのかしらね」
「あァもううっせェなァごちそうさンでしたァ!!」

余計に淹れてしまった分を処理してやっただけなのに、何故からかわれなければならないのか。
一方通行は憤然として座りなおし、頬杖を突いた。納得がいかない。

それでも――

「気が向いたら、また淹れてあげるわよ」
「……気が向いたら、また飲ンでやるよ」

結標の言葉に、彼は少々の間を置いてそう答えた。
彼女が淹れたコーヒーは、間違いなく美味だったのだ。
そう、自身の缶コーヒーへの拘りを、少しくらい曲げてもいいと思えるくらいには。
あっさり陥落した自覚のある一方通行は、せめてもの抵抗にそっぽを向く。

その直前。
やけに嬉しそうな結標の笑顔が、ちらりと目に映っていた。

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・・・

「何よ、妙に緩んだ顔しちゃって。どうかしたの、一方通行?」
「ン……あァ。オマエが最初にコーヒー淹れてくれた時のことを思い出してたンだよ」
「えっ!? ふ、ふーん……そうだったの」

緩んだ顔、ねェ。マグカップを傾け、一方通行はひとりごちた。
中にはもちろん、結標が――『彼女』が淹れてくれたコーヒー。

今でこそ結標とは恋人としての付き合いをしているが、ファーストコンタクトは最悪中の最悪だった。
何せ、目的も仲間も失いぼろぼろの彼女を最後に蹴散らしたのが、一方通行だったのだから。
その後も『グループ』の同僚ではあったが、あれは共通の目的のために互いを利用しあうだけの関係に過ぎなかった。

こんな仲になったのは――結標のことを単なる戦力ではなく『女』として見始めたのは。
今思えば、あの淹れすぎたコーヒーがきっかけだったかもしれない。
一方通行が初めて飲んだ、缶以外のコーヒー。

そうやってあの日と同じ味を楽しむ。
旨い、と一方通行は感慨にふけり、

――同じ味?

浮かんだのは単純な疑問だった。

「なァ、淡希」
「な、何かしら?」
「あの時のコーヒーなンだがよォ。
 オマエは『淹れすぎた』って言ってたが、つまりなンかしら失敗してやがったんだろ?
 それであンなに旨く淹れられるもンなのか?」
「そ、それは……その……」

途端に、結標の目が泳いだ。
……今の会話に、何か慌てる要素があったのだろうか。一方通行は考える。
そもそも思い返してみれば、彼女はさっきから何か様子がおかしくはなかったか。
いつからだ? おそらくは、自分が『オマエが最初にコーヒーを』云々と言ったあたり、から、で――。

ぼーっとしていた学園都市最高の頭脳が、無駄に回転を始める。
あれが実は失敗ではなく、意図的なものだったとしたら?
淹れすぎ、というのは口実で、最初から一方通行に飲ませることこそが目的だったとしたら?
今でも変わらぬ旨さの理由が、既に相当の試行錯誤を経ていたためだったとしたら?
まさか、

「まさかありゃァ――アピール、ってやつだったのか?」

今更な衝撃に、一方通行はうっかり思考をそのまま口に出してしまった。
奇しくも、結標のコーヒーにぽろっと感想を言ってしまったあの時のように。

沈黙が降りる。
結標はとうとう顔を伏せ、ふるふると震えだしてしまった。
一方通行は途方に暮れたが、この状態の彼女を放っておくのはさすがに罪悪感が刺激されたので、とりあえず呼びかけてみることにした。
それが、導火線に火をつけるような行為だとは気づかずに。

「なァ、おい淡――」
「……もうやだなんなのこの男何で今頃そんなこと思い出すのよばかああああああ!!」
「お、おィ?」

爆発。そう表現しても差し支えないほどの勢いで、彼女はまくし立てる。

「ええそうよわざわざ缶コーヒー飲み比べて色々豆買ってあなたが好きそうな味を研究して上手に淹れられるように一生懸命練習したわよ悪かったわねこれで満足かしら!?」

……そうか、と一方通行は納得する。
わざわざ確認したことなどなかったが。
彼女は、自分が思っていたよりずっと前から、心を寄せてくれていたのだ。

ぜいぜいと肩で息をし、涙目で睨み付ける結標。
それを見る胸中に生まれた感情は、さてなんと表現すればいいのだろうか。

内面で言葉にする労すら惜しみ、一方通行は立ち上がる。

「……あァ。もうすンげェ満足」
「……へ? ってちょっと、アクセ――っ!」

強引に肩を抱き寄せ、そのまま唇を奪った。
舌先に感じるのは、先ほど飲んだのと同じ味。そして、二人のきっかけとなったあの日とも。
結標淡希が一方通行のためだけに練習して淹れた、二人分のコーヒー。
奇妙な興奮に敢えて逆らわず……むしろ積極的に身を任せ、一方通行は結標の咥内を貪る。

(最近はそもそもあンまり買っちゃァいなかったが。
 こりゃ、缶コーヒーなンざ金輪際飲めねェなァ)

顔を離す。
とろん、と早くも頬を上気させた恋人を眺め、ぺろりと唇を一舐めする。
そこに僅かな苦味を感じ、一方通行は口の端を歪め、微かな笑みを零した。