ぐりーくらぶろぐ -25ページ目

SS『一方通行 「……なンだァ? はちみつパック?」』(とある魔術の禁書目録)

その日。
一方通行は少々苛立っていた。
別に深刻な事情があるわけではない。ないのだが、初めて体験する“これ”は、どうにも鬱陶しくて仕方ない。

「どうかしたの、一方通行。……あらあなた、ひょっとして唇荒れてる?」
「……あァ」

声をかけてきた芳川に、唸るように応える。
なるほど、これが『唇が荒れている』という状態なのか。
未体験の事態について、一方通行はようやく把握した。

それと同時、唇のカサつきがさらに増したような気がしてやけにカンに障る。
乾燥しているからには湿らせればよいはずなのに、先ほどから舐めても舐めても治らないのだ。
それどころか、余計ひどくなっている気さえする。

「以前のような『反射』ができなくなってる影響が、こんなところにも出ているのね」
「……うるせェ」
「あら怖い」

その件について、他人にあれこれ言及されたくはない。……色々な意味で。
じろりと睨み付けると、芳川はわざとらしく肩を竦めた。
どうも最近、この元研究者の女から舐められている気がしてならない一方通行である。

芳川はくすくす笑いながら、それでも一応は気遣わしげに言った。

「最近乾燥してるものね。
 キミの場合は能力のせいで抵抗力が極端に低いのだから、気をつけなさい。唇の荒れくらいならまだしも……ね。
 さしあたっては、つらくても舐めないようにすること。余計ひどくなるだけよ。
 あとは、どうせキミはまたコンビニに行くでしょう? ついでにリップクリームでも買ってきなさいな」
「……なンだそりゃァ?」
「……知らないの?」

意外そうな顔をする芳川。
しかし、唇が荒れたことなどなく、周りの人間からその手の悩みを聞かされるような環境にもなかった一方通行は、舐めたら悪化するということも知らなければリップクリームと聞いてもぴんとこない。
lip creamというからには、唇に塗るためのクリーム状の薬品なのだろうか――

ドスン、という衝撃。
何者かによる背後からの体当たりに、杖を突いたままの一方通行は危うくそのままひっくり返りかけた。
意地で持ちこたえたところに、幼い少女の元気な声が響く。

「唇の荒れにははちみつパックがよく効くんだよ、ってミサカはミサカは19090号からこっそり教えてもらった豆知識を伝えてみた――いたっ!?」
「脅かすンじゃねェよクソガキ!」

もちろん、この黄泉川家においてそんなマネをするのは、打ち止め(ラストオーダー)の名を持つこの少女の他にないわけで、一方通行は怒鳴りつけると同時に手刀を打ち下ろした。
しかし、頭を抱えてしゃがみこむ打ち止めを見て、少々強すぎたかとちょっとだけ反省する。
彼女が再び立ち上がるのを待って、一方通行は一応聞くだけ聞いてやることにした。

「ンで……なンだァ? はちみつパック?」
「う、うん……ってミサカはミサカは泣きべそをこらえつつうなずいてみたり。
 あのね、はちみつを塗ってラップで十分くらい保護するだけでいいんだよ、ってミサカはミサカは19090号の受け売りを語ってみる!」
「そンなの自分でやりゃァいいだろうが。大体この家に蜂蜜なンてあンのかよ?」
「はい」

不意に差し出されたチューブに、一方通行はしばし固まった。
ラベルに曰く、「まろやかで風味豊かな国産純粋はちみつです。」
そういえばこの一瞬で芳川がいなくなっていたな、と今になって気づいた。
なンでそンなわくわくした顔してンんだこっちみンじゃねェ! 一方通行は胸中毒づく。
準備のいいことに、芳川のもう片方の手には既にラップがスタンバイしていた。

「ミサカはあんまり唇荒れないから、あなたで試してみたいの、ってミサカはミサカは訴えてみたり!」
「……あァ、もう好きにしろよ」

打ち止めくらい幼い体だと、荒れる間もなく治るのかもしれない。
拒否するのも面倒になった彼は、片手で椅子を引いて座り込み、杖を床に横たえた。
もう治るならなんでもいい。

(本当に効き目があるンなら、わざわざリップクリームとやらを買いに出る必要もねェしな。
 それにまァ――このガキがやりたいってンなら、やらせておけばイイ)

……僅か一分の後。
そんなのんきな考えを、一方通行は早くも撤回したくなっていた。

蜂蜜をほんの少しずつ小指に取り、一生懸命自分の唇に塗る打ち止め。
面白そうに見守る芳川。
唇に感じる小さな指の感触と、自分達に注がれる悪意のない(むしろ好意的な)視線。
一方通行は原因不明のいたたまれなさを覚え、ただただ困惑していた。
こんなことなら、ガキの言うことを聞いてやろうなどと気紛れを起こさずさっさと出かけてしまえばよかった、と後悔するも、楽しそうな打ち止めを見ていると今更やめろとも言えない。

僅かに染みてくる甘さを感じつつ、一方通行はしばしの苦行に身を置いた。

******

いい加減塗りすぎじゃないのかと一方通行が思い始めた頃、ようやく打ち止めは満足したようだった。
芳川が適当な大きさに切ったラップを、打ち止めが彼の唇に貼り付ける。

「でーきた、ってミサカはミサカは――っ!」
「……ンァ?」

満足そうな顔から一転、目を見開いた打ち止め。
元々表情の豊かな少女だが、これだけ顔が近いとなおのことその変化がわかりやすい。
パックってのはこういうもンなのか、などと適当に考えていた一方通行は、ラップが邪魔で声が出せないことに気づき視線だけで問いかけてみたが、打ち止めからの反応はない。
芳川は……くすくす笑っているだけだ。こういう時の芳川はあてにならないことを、彼はよく知っている。

「え、えっと、タイマー取ってくるね、ってミサカはミサカは慌ててみたり!」
(……なンだァ?)

打ち止めの謎の反応に、喋ることのできない一方通行はただ首をかしげる他なかった。

******

アラームが鳴る。何もすることのない十分は意外と長かった。
打ち止めはアラームをセットするだけセットしてどこかに行ってしまっていたし。

戻ってきてぺりぺりとラップを剥がす打ち止めは、どことなくもじもじしているように見える。
一方通行は表情にこそ出さないものの、

(さっきからどうしたンだコイツは)

と不思議に思っていた。

……それはそれとして、唇の上に残ったはちみつはどうすればいいのだろう。

と、ラップを捨ててきた打ち止めが一方通行を見上げる。
意を決したような瞳、やや赤みを帯びた頬。
ぼんやりしているところに大切な少女のそんな顔をいきなり見てしまい、一方通行の鼓動が微かに揺れ、

「え、えっとね! ってミサカはミサカは決意を固めてあなたに話しかけてみる。
 パックを終えた後のはちみつは、洗っちゃってもいいんだけど――」
「――っ?!」

愕然とする。
寄せられた顔。
小さな、柔らかい何かが、彼の唇を這い回る。
打ち止めの舌。
近すぎる視界の中、ぴんと立つ特徴的な髪の一房が揺れ、背筋がぞくりと泡立った。

「――こんなふうに舐めとったりしてもいいんだって、ってミサカはミサカは恥じらいながら猛ダッシュ!!!」

きゃーっ、と両手で頬を包んで駆け去る少女を、一方通行は呆然と見送った。
――今、自分は何をされたのだ?
硬直していた思考が徐々に動き出し、完全に己を取り戻す。

「あ……ンのクソガキ……っ!!!」

自分でも理解できない衝動のまま歯軋りしようとして、ふと舌の先に甘味を感じた。
どうやら無意識のうちに唇を舐めていたらしい。
――つい先ほど、打ち止めが舌で辿ったその場所を。

認識すると同時、カッと生じた熱の正体を、一方通行は知らない。
こんなにも不愉快なのに、こんなにも熱い感情を、彼は体験したことがない。

ひどく落ち着かないソレを打ち消すように、一方通行は乱暴に杖を手に取り、逃げるようにリビングを出た。
打ち止めが去ったのとは逆、玄関の方へ。
とにかく外で頭を冷やして、ついでに今のことは忘れてしまおう……。


そうして外出した先。
カサつきが取れ潤いを取り戻した自身の唇に気づき、またしても盛大に赤面する一方通行であった。
相変わらず、その理由がわからないままに。

******

後に残ったのは、芳川桔梗ただ一人。
途中から一切口を挟まずこっそり見ていたおかげで、打ち止めも一方通行も彼女の存在を完全に忘れ去っていたらしい。
打ち止めの背伸びした恥ずかしげな振る舞い、一方通行の日頃のイメージに反して随分と初心な姿は、彼女を大いに満足させた。

(愛穂にもぜひ話してあげなくちゃね)

……こうして二人、特に一方通行は、後々までこの時の話を持ち出してからかわれることになるのだが……それはまた別のお話。

今俺は物凄く興奮している

最近まったくもってSSを書いてないせいで、Web拍手のチェックもほとんどやっていなかったんだけど、今ひさしぶりにチェックしたんだ。
そしたら、2月18日に、とあるお方からの拍手メッセージが届いているじゃないか!!!

2月にふと思い立って色んなアイマスSSサイトを巡ったんだけど、その時出会ったサイト様のマスター。
アイマスSSに関して自分が理想とするパターンは簡単に言うと二つあって、ひとつはPとアイドルがいちゃいちゃしてるもの、ひとつはアイドルとPが“アイドル”、特に歌手としての進化を追い求めて二人三脚で突き進んでいくもの。
何しろ俺ってば、ラブと歌が大好きだからさ。
そしてその方のSSは、その両方を満たしてくれていた。しかも大長編。狂気すら感じる情熱的な文章に、まったく飽きを感じないまま数時間にわたってノンストップで読み進めてしまった。
本当に理想的なSSだったんで、ブログにコメントを残させてもらったんだ。

そう。
読んで一発で尊敬したその方が、メッセージくれてたんだよおおおおおおおおおっっっっっ!!!!!!
しかも、俺のようなモノのSSには過分なほどの賞賛のコメント。
誇張抜きで数秒間固まった後は、もう大興奮だったねwww
最近はもっぱらぐりーくとして『歌ってみた』での活動ばかりしてたけど、ひさしぶりにSSの世界に戻りたくなっちゃったぜ!!!

残念ながら彼の御方はサイトを閉鎖されてしまっていたけど、いつの日か戻ってきてくれることを信じてる。

新作・only my railgun

もはや新作報告ブログと化していますね。
滅多に投稿しないことも加わって完全放置状態。
よくないとは思っているのですけれども。すいません。
mixiではそれなりに活動しているので、よろしければ「ぐりーく」で検索してみてください。

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さて、新作です。


アニメ『とある科学の超電磁砲』の主題歌である、
『only my railgun』を歌って投稿しました。

僕は基本的に女性の歌を歌うことが多いのですが、
カラオケなどでは原曲キーで、レコーディング時はオクターブ下で歌うのが基本です。
しかし最近ようやく気づいたのですが、単純にオクターブ下げて歌うより、オケのキーを2,3個上げてオクターブ下で歌う方が色んな意味で得策でした。
まず、手持ちの機材だと録音しづらい、低音域の登場頻度が減る。
次に、自分の実声の限界域近くの登場頻度が増えるので、上手い具合にギリギリを出せる。
オケの音が若干変質してしまうのは確かですが……うん、今後は自分の声域に合わせて歌いましょう。