新日本の『BEST OF THE SUPER Jr.』

6・6後楽園ホール大会が大爆発した。


率直なところ、

開幕戦の5・27後楽園ホール大会を振り返ってみると、

超満員の観客で埋まったものの、

「これぞ!」と言えるほどの公式戦を見ることはできなかった。


やはり開幕ということで、選手の動きも固かったように思う。

気持ちはあるのだが、身体、動きがついていかないという感じ。


しかし、今大会は見事にはまった。

6月6日は、平日の水曜日だし、

4日後の後楽園ホールでは準決勝2試合と

優勝決定戦が組まれている。


それにも関わらず、会場はギッシリと満員。

もう新日本の勢いは止まらない……

と、また安易な言葉で片づけてはいけないだろう(苦笑)。


当日、会場に詰めかけたファンの多くは、

メインイベントの公式戦が目当てだったのではないか?

プリンス・デヴィットvsPACの極上対決である。


PACを送り込んだドラゴンゲート側も気合十分だった。

セコンドには吉野正人が付いたし、重鎮・望月成晃も来場。

2009年のスーパーJr.参戦をキッカケに、

一気にトップ戦線へ駆けあがったYAMATOの姿もあった。


それより、おもしろいのが飯伏幸太(DDT)が

チケットを買って観戦に来ていたこと。

彼のお目当てもメインイベントにあった。


飯伏にとって、デヴィットは最大のライバルであり、

いずれ絶対に決着をつけなければならない相手。

同時に、PACとの関係も注目なのである。


関係者に聞いたところ、彼らはお互いのことをかなり意識しているという。

飯伏が「PACはスゴイ、彼の空中戦には敵わないかもしれない」と言えば、

PACは「昔から飯伏のことが気になっていた。素晴らしい選手だ」と語っているらしい。


まあ、当然だろう。

こと空中戦に限れば、この2人は双璧であり、

世界最高峰を争う両雄と言ってもいいのではないか?


では、メインイベントを振り返ってみたい。

結果は、17分24秒、片エビ固めでPACの勝利。

そこで内容はというと…素晴らしいの一言。

それと同時に、異次元のプロレスというか、

違う競技を見せられているような錯覚にもとらわれた。


ただし、紛れもなくプロレス。

なぜなら、決して大技の品評会、

空中戦の発表会的な試合とはならなかったからだ。


前半、5分はしっかりとレスリングの攻防も披露した。

しかも、基本的にはヨーロッパ出身らしいキャッチレスリング。

リストの極め方、逃れ方も理にかなっている。

あの初代タイガーマスクも同じだった。

これができるからこそ、2人とも本物なのである。


さて、ここからは、プロの写真をお見せしたい。

私とは、週刊ファイト、週刊ゴング、Gリングでともに過ごした

25年の腐れ縁(笑)であり、空中戦を撮らせたら世界一と思われる

大川昇カメラマンに試合写真を借りた。


あ、まずい!

彼がブログのなかで、PACの試合写真は

私のブログを見てくれるようにと催促しているではないか!

プロレスカメラマン 大川 昇のブログ


それでは、入場シーンから。


                    金沢克彦オフィシャルブログ「プロレス留年生 ときめいたら不整脈!?」Powered by Ameba


普段は陽気で笑顔の絶えないデヴィちゃんだが、

試合が近づくとナーバスになり口数も減る。

メインの出番直前には固い表情でシューズの紐を締め直していた。


一方のPACも真面目でストイックな若者。

まだ24歳だが、試合に納得がいかなければ、

共同インタビューでも多くを語ろうとしない。


例えば開幕戦では、少年時代から憧れの存在であり、

シューティングスタープレスの元祖でもあるライガーを、

360°シューティングスタープレスで破っている。

だが、試合内容に納得がいかなかったのか

表情は冴えなかったし、口数も少なかった。


2人とも、常にパーフェクトを追求するプロ中のプロ。

そして、何よりもプロレスに対してピュアなのだ。

PAC、デヴィットの順に入場して、いよいよドリーム対決へ。


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レスリングの攻防を経て、5分過ぎ俄然、動きが激しくなる。

コーナーへ走るPACを追走したデヴィットが串刺しドロップキック。

痛烈に顔面を捉えた。


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先に飛んだのはデヴィット。

ご存知、十八番のノータッチ・トぺコンヒ―ロ。

ライガーが「世界一美しい!」と太鼓判を押すように、

上体を残したまま宙に舞う。

真横からのショットがその跳躍力を物語る。


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10分過ぎ、ついにPACが飛んだ。

エプロンからトップロープに飛び乗り、

バック回転してのトルニ―ジョ・アタック。


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さらに、カウント2でデヴィットに返されたもののセカンドロープからの

フェニックス・スプラッシュという離れ技も披露した。

(※注:Jkさんからのコメント欄でのご指摘により訂正し、写真も追加しました)


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一進一退の攻防で15分経過。

PACが勝負を賭けた360°シューティングスタープレスへ。

これで勝負あり!と思われたが、

なんと寸前でデヴィットが両膝で迎撃する。


両膝での剣山から、デヴィットがすぐに丸めこむもカウント2。

その直後、PACも丸め返して、カウント2。

予測不能な展開にホールは沸きっ放し。


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これでフィニシッシュ!とばかり、

エグイ角度のリバース・ブラディサンデー。

だが、PACがキックアウトすると、デヴィットは驚いた表情。

ホールが大爆発する。


追い打ちのダイビング・フットスタンプから

止めのブラディサンデーを狙うデヴィットだったが、

それを回避したPACはリバース・フランケンシュタイナー。

さらに、ジャーマンスープレックス。


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最後は、驚愕の空中殺法が出た。

リングに背を向けるかたちでコーナーに立つと、

後方にジャンプして前方2回転のリバース・ファイヤーバードスプラッシュ。


ホームのドラゲーでも滅多に披露することのない奥の手、

フレーミングスター・プレスを完璧に決めて、3カウントを奪取した。


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セコンドの吉野も飛び込んできて、

2人で歓喜の雄叫び、勝利のポーズ。

試合中、「レッツゴー!デーヴィ」と「レッツゴ―!PAC」の声援が

交錯していたが、この瞬間、PACを称える拍手・歓声に包まれた。


試合後、PACはデヴィットへのリスペクトの気持ちと、

優勝を狙うことを宣言した。

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一方、ほとんど息は上がっていないものの、

表情は険しかったデヴィット。


「PACはこれまで闘ってきた飯伏やケニー(オメガ)、丸藤に匹敵する。

いや、それ以上に素晴らしい№1のレスラーかもしれない。

相手は誰か分からないけど、ボクは必ず決勝のリングに立つ!」


ジュニアの名勝負製造マシンであるデヴィットと

驚異の身体能力を持つPACによる名勝負。

これもプロレス、あれもプロレスとはよく言うが、

これぞ新プロレス…進化しすぎたプロレスと言ったほうがいいのかもしれない。


PACのパフォーマンスには、まるで体操の鉄棒やマットの選手、

水泳の高飛び込みの選手を彷彿させるシーンが度々ある。

それでいて、レスリングもしっかりできるのだから、

文句のつけようもないのだ。


本当に、度肝を抜かれるプロレス……

なにか別競技のようでもある空間を見せつけられた思いである。