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鉄道カメラマンの菊地は、仕事で阪急電鉄を撮るために大阪に来ていた。 そのついでに六甲に住む大学時代の先輩女性の木内と久しぶりに会う約束をしたが、木内は菊地との待ち合わせ場所に来る前に阪急六甲駅のホームから転落して電車に撥ねられ死亡した。 木内の胃の内容物から睡眠薬が検出され、木内の部屋からはPCが消えていた。
事件は、敗戦間近の昭和20年に軍を批判していた木内の祖父が特高に逮捕され死亡したが、孫の木内が祖父の自伝を自費出版しようとして、それを阻止しようとする何者かに殺害されたもので、更に大阪で菊地の助手を務めた女性も、菊地に協力し木内の祖父の事を調べている内に、真相に近づきそうになったために犯人に殺害される。
十津川は、マスコミと協力し犯人逮捕間近と報道し犯人を焦らせ、逃亡の為に急に動き出した犯人兄妹らを逮捕する。 犯人兄妹の祖父は、昭和20年に後の総理大臣になる吉田茂の家にスパイとして潜入していた人物で、終戦直後に東条英機から莫大な機密費を貰い、それを元に会社を立ち上げ大きくした。 そして、吉田茂の友人である木内の祖父は、その事に気が付いていた。
その事を木内の祖父の自伝に書かれると、絶対に秘密にしておきたい会社設立の経緯が公になり株価に影響すると考えた現経営陣の孫の兄妹らが、木内と菊地の助手を殺害したものだった。
元々木内は、兄妹らの祖父の会社設立の秘密を暴きたかったのではなく、祖父の自伝を出したかっただけだと思うから、兄妹は木内と話し合って事情を説明してある程度お金を積んで、その部分にだけは、今更もう触れないようにしてもらえば良かっただけなのではと思うのだが。
そもそも何で菊地が、木内が殺されたと思われる事件に、そんなに熱心に深入りするのかの動機が弱いし、西村京太郎と云えばトラベルミステリーだが、阪急電鉄と関係しているのが、木内が阪急電鉄の社員で、殺害されたのが阪急六甲駅というだけで、あとは話が大方終戦の年の昭和20年に飛ぶし、菊地の助手の女性が東京で殺されて、それが大阪での木内の事件と結びついていると東京の十津川警部がすぐに分かるはずがなく、まったく話に整合性を欠いている。
他にも同じ事が何度も何度も書かれていて無駄に重複する文章が多い。
昔、西村京太郎の作品を乱読していた時期があったが、今回数十年ぶりに読んでみて、相変わらず人物描写が無機質であっさりし過ぎている。 それが西村作品の特徴で手軽な読み易さに繫がるのだが、登場人物に感情移入できず心に残るような作品にならない。




