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私の小説レビューG

私の読んだ小説の記録です

                麒麟の翼

 

★★★☆☆

東京都中央区にある日本橋の上で胸を刺された男性が死亡した。 男性は少し離れた別の場所で

刺され日本橋にある麒麟の像まで何とか自力で移動してきた様子だった。 その後に、巡回中の警察官に職務質問された20代の男性が急に逃げてトラックにはねられ意識不明の重傷を負う。 逃げた男性は刺された被害者の財布を所持しており警察は容疑者として捜査を進めていく。

 

被害者男性は、建設部品メーカーの本社製造本部長で、妻と2人の子供がいるが、家族からは

疎外されていて特に息子との関係が上手くいってなかった模様。 一方の容疑者の男性は、同じ郷里出身の同棲している恋人がいて貧しい暮らしの中で相手女性は妊娠していた。

 

容疑者は、被害者が会社の工場で工場長をしている時に派遣社員として働いていて、警察は、その時の労災トラブルの恨みで被害者を襲ったものと考えた。 そうこうしている内に容疑者が病院で意識が戻らないまま死亡する。

 

加賀刑事は、被害者の不可解な行動を調べていく中で、被害者が七福神巡りをしていた事を突き止める。 そして、ここから話は思わぬ方へ急展開して、被害者の一連の行動は、被害者の息子が中学時代に起きた学校の部活でのプール事故に息子が関わっていた事で被害者生徒に対する、加害者生徒の父親としての償いだった。 タイトルの麒麟の翼というのも、その被害者生徒とその家族の苦悩、並びに回復の祈りを込めた深い意味合いのあるものだった。

 

そして、事件の真犯人は、プール事故に被害者の息子と共に関わっていた息子の友人で、被害者が息子の友人に自首を説得したために起こった事件だった。 そして、中学の水泳部の顧問の教師も真犯人と共に自己保身しか考えない非常に悪質な人物だと思う。 それから死んだ容疑者だった男性は、たまたま犯行時に通り合わせただけで、生活苦から魔が差して被害者の財布を盗んだのだった。 でも、いくら生活苦でお金に困っていても、瀕死の重傷の人物から財布を盗んで逃げるなんて事するだろうか。 普通すぐに救急車を呼ぶだろう。 

 

本作は、被害者の父親と息子の関係を、加賀親子とも多少重ね合わせながら描かれているが、

この作品には他に解せない所がある。

冒頭の、加賀の父親が3年前に死んだ時の病院の担当看護師が、三回忌の法事まで面倒を見るなんて職務範囲を超えた事を普通するか。加賀の気を引くためならちょっとキモいし、加賀刑事シリーズの別作品で、彼女は加賀の親戚筋とか加賀と深い仲だとか描写があったかな?

 

私は東野圭吾の加賀刑事シリーズを、ほとんど読んでいると思うが、加賀刑事の頭脳明晰でそつのない姿に人間味を感じず、いつもただの文章の中の人という薄い印象しかない。

                円卓

 

★★☆☆☆

かなり風変わりでめんどくさい性格の小学3年生の琴子(通称こっこ)は、祖父母、両親、三つ子の姉の8人家族で暮らし、家族みんなからとても愛されていた。 タイトルの円卓は、近所の

中華料理店から貰った大きな円卓が、こっこの家庭の居間に所狭しと置かれていて家族の団らんの象徴的存在だからか。

 

とにかくこっこは、目新しい事、未知な事、変な事に興味があり、普通の人が嫌がるモノ、みっともなくて恥ずかしいと思う事が、クールでカッコイイ事だと感じ、自身は大家族の影響か孤独を愛し常に凡人ではいたくないと強く思っていた。

 

いくら見た目が可愛い女の子でも、クラスにこんな変人がいたら私は積極的に関わりたいとは思わない。 でも、同じ公団に住むこっこと仲の良い男の子のぽっさんは、吃音で少しスムーズには喋れないけど(こっこは、吃音もクールに感じてる)、心優しくて賢くて誠実で、このぽっさんの存在が作品全体を通して凄くいい。 私の子供時代にも、こんなぽっさんのような子が友達としていたら良かったなと思えた。 

 

きっとこっこは、年頃の女性になったらダサい変な髪形をし、ダサい変な服を着て、ダサい変な色の車に乗るんだろうなぁ。 私の職場にも顔は凄く可愛いのに、野暮ったい服を着て、年寄りが乗るような色の車に乗っていた若い女性がいたが、彼女曰く若い女性が着るような服や、若い女性が乗るような車の色は絶対に選ばないと言っていた。 なるほどなぁ。 そりゃ野暮ったくなるはずだわ。 何かこっこの将来も不安になるが、ぽっさんがいてくれるから大丈夫か?

                傍聴者

 

★★★

本作は、木嶋佳苗死刑囚が実際に起こした連続不審死婚活殺人事件を元に作られた作品。

 

牧村花音は、複数の交際相手を練炭自殺に見せかけて殺害したとして逮捕起訴されている。 

その裁判の初公判で知り合った野間佳代、リリー、お良、ミルクの4人の女性は、佳代をリーダーに毒っ子倶楽部と称して、いつも公判の傍聴後に集まり、リリーが持ってくるライターの池尻が書き上げ、リリーが補足した報告書も合わせて議論を交わして楽しんでいた。 

 

話の時間が前後するが、結婚が決まっていた親友が車内で練炭自殺した事に疑問を抱いた池尻は、親友から名前も素性も聞かされていない婚約者の女性を怪しみ、親友と婚約者の女性が知り合ったという合コンでカップルをマッチングするクラブに参加し、そこで栗栖汀子(偽名)と知り合い付き合うようになる。 話は毒っ子倶楽部の集会がある現在と、池尻が汀子や花音と関わる過去とが交互に描かれていく。

 

池尻は、親友の婚約者だった女性を捜すために再び合コンに参加するが、そこで親友が言っていた特徴と一致する女性の牧村花音と接触し、その花音が汀子と同じマンションに住む汀子の顔見知りだと判明する。 その後、池尻は街で花音と遭遇し花音の部屋に招かれるが、コーヒーに何か薬を盛られ気を失い目が覚めたら汀子の部屋にいた。 これはあまりにも怪し過ぎる。

池尻は更に花音に近づくが、すぐに花音の魅力の虜になりズルズルと男女の仲になりながらも親友の死の謎を探ろうとする。 

 

いずれ池尻が花音に殺害されるのであろうとは最初から思っていたが、池尻が、まんまと3回も花音に睡眠薬入りの飲み物を飲まされるのには、ほとんど小学生低学年くらいの知能しかなくて呆れたというより、あまりのバカさ加減に驚愕した。 こんなバカなかなかいないと思う。

 

毒っ子倶楽部のリーダーの佳代は、池尻に息子の死の調査を求めた池尻の親友の母親だというのと、汀子は花音がいっしょに暮らしているというが姿を見せない妹であり、尚且つ毒っ子クラブのミルクの1人3役なのではないかとは早い内から想像がついていたが、お良が花音の母親であり、リリーが佳代と共に事件を調べているノンフィクション作家だとは分からなかった。 

そして、終盤での花音の弟の事件の中での存在と役割も唐突だった。

 

事件の真相は、花音は男を騙して金を奪い睡眠薬で眠らせていただけで、練炭自殺に見せかけて殺害していたのは花音の家族らの犯行だった。 本作は、実際にあった事件を作者が捻って付け足し膨らませたものであるが、事実は小説より奇なりで、どう捻りに捻って巧みに描いても実際の事件に勝る事はないのかもしれない。

               イノセント・デイズ

 

★★★★

元恋人男性にストーカーとしてつきまとい、男性が留守の間に妻とお腹の子、1歳の双子の姉妹を部屋に放火して殺害して死刑が確定した死刑囚の田中幸乃。

物語は、幸乃の出生時に取り上げた産婦人科医、母親が結婚して小学3年生までいっしょに暮らした家庭での異父姉、中学時代の友達、大人になってから付き合っていた男の友人男性、拘置所の女性刑務官から見た幸乃が描かれていく。

 

確かに幸乃は、小さい頃から不幸で可哀そうな人生だったと思う。 母親が事故で死んだ直後にショックで泥酔した義父に「必要なのはお前じゃない」と一度だけ思い切り殴られるが、小学3年生の少女にとって、今まで自分の事を愛してくれていると思っていた義父の思いがけない本心を知り決して消える事のない大きな心の傷を負ったのだと思う。 

 

その後、母方の薄情で陰湿な祖母に引き取られ辛く貧しい暮らしの中で、中学時代には友達の身代わりになって強盗傷害で児童自立支援施設に送られ、施設を出てから付き合った男からは金をむしり取られ幾度も暴力を受けた。 それでも自分は、その男に必要とされているんだとすがりつく幸乃。 結局、その男に幸乃は捨てられるが、今度は幸乃が執拗にストーカー行為を繰り返して男と妻を追い詰めてしまう。  

 

そして、あの放火殺人事件が起きてしまうのだが、警察が幸乃を犯人だと断定し、本人の自供もあれば世間はもちろん、婦人科医、異父姉、中学時代の友人、元恋人の友人、それから子供の頃の幼馴染の丘の上探検隊のリーダーで、今は弁護士になっている翔らも幸乃の犯行を信じてしまうだろう。 その中で一人だけ放火殺人事件を、幸乃がまた誰かの身代わりになっていると思っているのが、丘の上探検隊の1人だった慎一だ。 その理由は、中学時代に幸乃が起こしたとされる強盗傷害事件の一部始終を見ていたし、盗みの方の本当の真犯人は慎一自身だったからだ。

 

仲の良かった異父姉は幸乃の死刑確定をただ傍観し、中学時代の友人は、幸乃が死んでくれたら強盗傷害事件の真相を知る者がいなくなるから死刑を歓迎し、元恋人の友人も自分が幸乃を救ってあげられなかった罪悪感から逃れたいだけだし、翔も昔の丘の上探検隊のリーダーとしての責任と弁護士として少しでも幸乃の罪を軽くしたいと思っているだけで、慎一以外に誰も幸乃を信じている者はいなかった。 そんな慎一にしたって幸乃が中学時代に施設送りになった自分自身の罪悪感から逃れたいだけなのかもしれないが。

 

そして、いろいろ動いていた慎一は、放火殺人事件の犯人は別の少年だと知る事になるが、時すでに遅く幸乃の死刑が執行されてしまう。 心底もう死にたいと切望していた幸乃は、心穏やかに旅立っていった。 この死刑執行は幸乃にとって大いなる救いなのか、それともこの物語は最初から救いがないのか。 いやいやこれが救いのあるハッピーエンドなわけないだろう。

とにかく読後感の悪い重っ苦しい内容だった。

               そしてミランダを殺す

 

★★★

飛行機の搭乗待ちのために空港のバーにいたテッドに、謎の美女リリーが近づき声をかける。

テッドは、どうせ行きずりの気安さで、1週間前に妻のミランダが、テッドが新築している自宅の工事業者のブラッドと浮気をしている事を知り半ば冗談で妻を殺したいと話す。 リリーは、そんな妻は殺されて当然と殺人に協力する事を申し出る。 

 

第一章は、テッドの現在とリリーの少女時代からの事が交互に描かれ、これまでにリリーは、

少女時代にリリーにしつこかった中年男と、大学時代に自分を裏切っていた恋人の男の2人を殺害していた。 そして、第一章の最後に、財産を独り占めしようとしたミランダに利用されたブラッドにテッドは射殺されてしまう急展開。 その事件を新聞で読んで驚くリリー。 しかし、リリーは、空港のバーで、行きずりにテッドと出会ったのではなく、大学時代に自分が殺害した恋人が二股をかけていた相手の女性の夫だと知って近づいたのであった。

 

第二章は、リリーとミランダが交互に描かれ、人を殺した事に怯えるブラッドに苛立ちと共に不安を覚えるミランダと、ミランダを殺害するためにブラッドに近づくリリー。  でも、人殺しのプロでもない限り、初めて人を殺したら犯行現場でヘマもするし、犯行後に怯えるのが普通だろう。

 

そして、事件を捜査する刑事から犯行現場付近での目撃者の証言からの犯人のモンタージュを見せられたミランダは、しかたなく家の工事業者のブラッドに似ていると証言する。  そして、ミランダは刑事から犯行当日のテッドの行動を聞かされ、ふと大学時代のリリーの事を思い出すが、この展開にはちょっと無理がある。 そして、すぐに刑事はリリーの元を訪ねるが、てか刑事は、リリーの所へ行く前にブラッドの事を調べる方が先だろう。 その事を刑事は作中で後悔していた。

 

ミランダは、刑事がブラッドの所へ行くから口裏を合わせるためにブラッドの所へ向かうが、そこでブラッドと接触しているリリーを目撃する。 絶対に刑事は、財産の事でミランダの事も疑っているはずで、何で刑事に見張られているかもしれないのにブラッドの所へ行くのか。

リリーにしたって、ミランダとブラッド2人の殺害計画を立てただけで実行はしてないし証拠もないのだから、テッド殺害容疑で、ミランダとブラッドが逮捕されるように警察に協力すればいいだけなのに、どうしても自分がミランダを殺さないと気が済まない腐れ縁なのか。

 

第一章は、わりと退屈だったが、狩る者と狩られる者が逆転に逆転していくスリリングな第二章からは面白かった。 結局、性悪女vsソシオパス女の闘いは、リリーがブラッドを使ってミランダを殺害し、直後にブラッドも始末する。 しかし、最後に少女時代に殺した男とブラッドを埋めた井戸がある実家隣の農場の草地が掘り起こされる事になり、リリーは刑事を刺して留置所にいる中で、遺体を別の場所に移したり、逃亡できない状況で、すべてが露見しようとする破滅の足音が近づいてくる所で終わるが・・・。