雲霧の 暫時百景を 尽くしけり
―芭蕉
お盆のある一日由美ママは、
少しでもこの厳しい残暑を逃れようと、
『河口湖CC』へ出かけました
『河口湖CC』 http://www.kawaguchiko-cc.co.jp/
富士山の裾野に広がるこの林間コースは、
正面に霊峰富士山を望み、
赤松や唐松に囲まれた森林の中で、
頬に涼やかな風を浴びながら、
ゆったりとした贅沢な空間を
愉しむことができました
ただ残念だったのは、
「珠玉を持つ富士の首飾り・・・」
と呼ばれる富士五湖のひとつ「河口湖」からの富士山は、
掲句のごとく
「“雲が走り、霧が急に立ち上り”
瞬く間に“百景”を形成するがのごとく“皆雲にかくれたり”」で、
この時季の赤黒く輝く「赤富士」の夏らしい雄大な景観は拝めませんでした・・・
さて、ここで河口湖の歴史に少し触れてみますと、
富士山他、西湖、青木ヶ原樹海など豊かな自然を持つこの地域には、
古くから「富士講(富士山を登拝する山岳信仰)」や、
親鸞・日蓮上人などに纏わる神社仏閣や伝説が多く存在しますが、
中でも「冨士御室浅間神社」は、
699年、藤原義忠によって
富士山に祀る神社として建てられており、
河口湖畔の勝山には「里宮」が存在しますが、
富士山周辺では最古のお宮で、
神社には新羅三郎義光ゆかりの
900年以上の伝統を誇る「流鏑馬祭」が伝わっています。
また、富士山の大噴火を鎮めるため勅令により建立された
「河口湖浅間神社」は、
864年、富士山と対峙する河口の地に富士山の神を祀ったもので、
古くから鎌倉街道沿いの交通の要衝として栄え、
鎌倉時代には、多くの宿坊があることから登山口としても賑わいましたが、
やがて、江戸時代の「富士講」の流行に伴って、
多くの人が吉田口を利用するようになり、
一時は陰りを見せるものの、
昭和39年に富士スバルラインが開通したことにより、
また活気を取り戻し、
2003年、南都留郡河口湖町・勝山村・足和田村が合併し、
多くの魅力ある観光地を持つ“町”として新しい歩みを始めています。
http://www.kawaguchiko-town.com/history/
南コース“標高1715メートル”
ところで、河口湖「天上山公園」の天上山辺りは、
太宰治の名作「お伽草子」の中の
一篇「カチカチ山」の舞台として描かれており、
この物語は富士山と河口湖の景色を配して、
有名な昔噺の“兎”を美少女に、
“狸”を中年男に置き換えた物語ですが、
天上山のナカバ平には太宰治の石碑があり、
「カチカチ山」の一節から「惚れたが悪いか」と彫られていますから、
展望台にて“兎”と“狸”の像と一緒に、
昔噺に想いを馳せ、河口湖畔の豊かな自然を
眺めてみてはいかがですか?
http://www.h7.dion.ne.jp/~ropeway/
雰しぐれ 富士をみぬ日ぞ 面白き
―芭蕉
あいにく「河口湖」では、
聳え立つ優雅な富士や
湖面に映る逆さ富士の美が
堪能できなかったものの、
中央道から赤茶けた素肌の夏らしい「赤富士」を眺め、
存分に森林浴を堪能できた由美ママのひとときでした・・・