深まる産地の苦境 | 銀座きものギャラリー泰三

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一度は袖を通したい着物がここにあります。きもの創作工房 (株)染の聚楽

以前に糸の値段が上がっていることを書きましたが、その影響が明らかに出始めており、すべての製品が値上がりし始めています。


私共が使用する高級な白生地でも想像以上の値上がりで正直驚いていますし、それよりも上質な糸自体が手当てできないくなりつつあるようです。


また麻も相当に値上がりしています。


小物などは生地価格が占める割合が高いので、いち早く値上げをしています。

このコスト高は単に糸だけでなく、最近染料なども相当な値上がりです。


ボイラーを焚くような仕事などでは重油などの値上がりもありますし、当然加工賃の値上げをしてきます。


製品価格に転嫁がもし出来なければ、安価なものほどその影響は大きく、この夏以降大変な苦境に陥ることでしょう。


織物産地はすべて糸を自前で手当てしますから、作り控えもあり、益々減産傾向に歯止めがかかりません。


来年消費税値上げも見えており、色々な値上げ分が転嫁されると、益々新規生産の物の販売は翳り、作り手として、本当に塗炭の苦しみとなると予想されます。


キモノ業界も高齢化は進む一方ですし、この1、2年で廃業、退職して行く人は一挙に増えることでしょう。


京都市の行政などは大変頭を痛めており、色々と策を考えているようですが、肝心の業界もまとまらず、作り手の苦境に対しての具体的な援助プランもありません。


経産省の役人はとんでもなく教養が無く、この業界の数字の小ささに、何の関心も示さないようです。


まあキモノ等知りもしないものに、いくらああだこうだと陳情しても詮無い話ですがね。


そう言う文化を知らないことを今の官僚は恥とも思っていないのです。日本を代表する文化はアニメだという程度ですからね。


つまりはこの苦境を脱するのは自助努力しかありませんし、また産地協力を推し進めることだという思いは募ります。


今叙勲の季節ですが、色留袖の新規の注文は本当にありませんし、高級なキモノづくりはこのコスト高が追い打ちとなって、今後も減るばかりでしょうし、質の低下も目に見えて始まると予想されます。



次世代に最高の物をつなげる努力はしていますが、消費が無ければで無駄なことですし、
本当に上物をお買いになるなら早い目の方がいいというのはあながちウソではありません。


日本が誇る伝統文化の行く末を、誰が支えて行けるのか、本当はそれがこの国にとって一番の懸案なのですが、成長戦略だ規制緩和だと言っているような程度では、話題にも上りません。


茶道の衰退を心配している人はそれをよく知る人です。茶道も華道も縁の無い人にとっては、全く関係の無い話です。


今そういう国になっているのです。残念ながら。