銀座みやこクリニック院長の濱元誠栄です。


 

前回は、予後が非常によい

分化型(乳頭がん・濾胞がん)の

甲状腺がんのお話をしました

 

 

今回はそれらとは打って変わって

予後が極めて悪い(最悪クラス)

甲状腺未分化がんのお話です

 

甲状腺未分化がんは

年間200‐300人新たに診断され

診断からの生存期間中央値は6ヶ月以下

1年生存率は20%以下となっています

 

診断された時点で約半数の人が

余命半年も期待できないという…

 

ちなみに、1年以上生存した症例は

長期生存例と言われます…

 

 

病期分類でも診断された時点で

転移がなくてもステージ4とされます

 

 

 

この超難治性のがんを克服するために

研究組織も作られています

 

 

未分化がんの治療方針は

診断時に手術できるようなら

できるだけ早くに手術を行います

 

ただ、診断時点ですでに

甲状腺の外に浸潤していることが多く

浸潤している食道や気管、首の筋肉を

甲状腺と一緒に切除する手術になります

 

その手術の後に

・放射線治療

・放射線+抗がん剤治療

を行い

やっと1年生存の可能性が出てくる

といった感じです

 

遠隔転移があれば手術不可ですが

遠隔転移がなくても局所で進行しすぎて

手術が不可能な場合があります

 

その場合は、

術前パクリタキセル投与で病変を縮小させ

手術が可能になる可能性もありますが

甲状腺に対してパクリタキセルが

保険適応となっていないため

自費での治療となってしまいます…

 

 

現在、未分化がんに対しては

保険適応となっている薬剤は

前回のブログでも登場した

レンビマのみとなっています

 

切除不能甲状腺未分化がんで

部分奏効率27%

というデータがあります

 

 

もう一つ、未分化がんで

BRAF遺伝子に変異がある場合に

タフィンラー+メキニスト

という分子標的薬の組み合わせが

注目されています

 

 

奏効率 56%

奏効期間中央値 13.6か月

1年生存率 51.7%

2年生存率 31.5%

というものすごい結果でした

 

オンコロでも取り上げられました

 

FDAでは2018年に承認されましたが

残念ながら日本では未承認です

 

 

他にも遺伝子パネル検査で

NTRK遺伝子変異が見られた場合には

前回紹介したヴァイトラックピが

適応となる可能性はあります

 

 

また

レンビマ+オプジーボの組み合わせで

治験が行われているようですので

こちらの結果にも注目です

 

 

 

 

 

リクエストの方が気にされていました

 

初めは分化型のがんであったのが

再発した時に未分化がんに転化した

というケースが稀にあります

 

未分化がんへの転化は稀すぎて

確率はまったく不明です

 

ただ

再発場所によって予後が変わるようで

 

頚部リンパ節で未分化転化の場合

生存中央値 5.8 か月

1年生存率 30%

と通常の未分化がんよりやや良くて

 

遠隔転移巣で未分化転化の場合は

生存中央値 1.5 か月

1年生存はなし

となかなかシビアな結果でした

 

 

 

もう一つ

分化がんと未分化がんの中間的存在に

低分化がんというのがあります

 

ちょっとややこしいですが

どちらかというと分化がんに近く

放射性ヨウ素とかTSH抑制療法が

効く可能性が低いですがあります

 

あとは、分子標的薬である

ネクサバールとレンビマが使えるので

それで治療していくことになります

 

10年生存率が52%とのことなので

やはり分化がんに近いのかもしれません

 

 

 

次回は

甲状腺髄様がんについて

 

 

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