銀座みやこクリニック院長の濱元誠栄です。


 

昨年の消化器外科学会の記事を

そのままタイトルにしました 

コンバージョン手術を行うことで

根治が可能になるかもという話

 

難しいので上記は無理に読まなくても

これから解説していきます

 

 

 

前回厳しいことを話しましたが

たとえステージ4の胃がんでも

長期生存(=根治)する症例は

非常にまれですがあります

 

*必ずしも長期生存=根治ではないですが

 今回のブログでは根治と表現します

 

 

2004年の古いデータですが

通常の胃がんと異なり

スキルス胃がんステージ3以上で

5年生存率ががくんと下がります

 

そんなスキルス胃がんやステージ4でも

根治する可能性はあります

 

 

毎年約13万人が胃がんになり

ステージ4は約10%なので

胃がんのステージ4と診断される人は

1.3万人/年となる計算です

 

スキルスも含めた胃がんステージ4で

長期生存している症例報告が

1年に数件くらい見られます

(20年前は2-3年に1件くらいでした)

 

論文ベースでみると

胃がんのステージ4でも

2-4千人に1人くらいの確率で

根治する可能性があるということです

(実際はもうちょっといると思います)

 

 

それらの症例報告を見てみると

必ずと言っていいほど

手術による完全切除

が行われています

 

 

本来ステージ4の胃がんは

手術の対象になりません

 

その理由は、転移巣や腹膜播種を

完全に切除するのは不可能なので

侵襲の大きな手術は行わないのです

 

ステージ4の場合は基本的に

はじめから最後まで抗がん剤治療です

 

 

ただ、中には例外があって

抗がん剤がめちゃくちゃ効いて

転移巣や腹膜播種がほぼ消滅して

完全切除手術ができることがあります

 

 

この抗がん剤治療後の手術を

コンバージョン手術と言います

 

コンバージョンは『転換』という意味で

根治が絶望的な抗がん剤だけの治療から

根治の方針に転換したことを指します

 

 

長期生存の症例報告を紹介します

 

 

胃がん皮膚転移ステージ4で

化学療法後にコンバージョン手術

術後10年無再発生存


 

 

胃がん遠位リンパ節転移ステージ4で

化学療法後にコンバージョン手術

術後6年無再発生存

 

 

上記と同じような症例

 

 

上記のHER2陽性胃がん版

 

 

ステージ4の中でも

大動脈周囲リンパ節転移の場合は

コンバージョン手術が行えれば

全体的な予後は良さそうです

 

 

 

コンバージョン手術ではないが

肝転移ごと手術切除し長期生存

(術後化学療法は不明)

 

 

 

ステージ3スキルス胃がん手術

術後無治療→卵巣再発

卵巣切除後に化学療法を行い

術後4年8か月無再発生存

 

 

 

スキルス胃がんステージ2手術

術後無治療→腹膜播種再発

腹膜播種切除後に化学療法を行い

手術後8年無再発生存

 

 

 

スキルス胃がんステージ2手術

術後無治療→小脳再発

(開頭小脳腫瘍切除後の化学療法は不明)

術後12年間無再発生存

 

 

 

 

やはり長期生存例に必要なのは

根治をめざした

手術ができること

だと思います

 

 

・初回手術で転移巣ごと切除する

・切除可能なら再発巣を切除する

・抗がん剤が奏功し手術可能になったら

 転移巣(再発巣)+胃切除をする

このパターンに当てはまる場合には

根治する可能性があります

 

 

これは手術ではなく放射線でも良いです

 

胃がんの肝転移がある2症例に

肝転移に放射線治療を行い

長期生存が得られているという報告

 

ただ、日本は外科手術が中心で

抗がん剤も外科医が行うことが多く

あまり放射線治療に回りません

 

放射線治療の症例がもっと増えても

良いと思うんですけどね…

 

 

 

最後に

手術でも放射線でもないですが

化学療法のみで長期生存している症例

三次治療までいっていますが

5年以上生存しています

 

 

 

たとえステージ4でも再発でも

抗がん剤がむちゃくちゃ効いて

その後、

手術や放射線で抑えることができれば

根治は可能だと思います

 

ただ残念ながら

ステージ4・再発

=抗がん剤=治らない

という図式に凝り固まっていて

手術や放射線治療にバトンを渡さない

という医者は少なくありません

 

患者側が賢くならないと

根治の希望を逃してしまうかも…です

 

 

 

最後に…

スキルス・ステージ4胃がんに対して

自由診療などの代替療法は

根治手術・放射線にもっていく

抗がん剤治療の確率を上げるための

補助的な手段だと思っています

 

代替療法だけで治しましょう

という考えは危険ですが

そう説明するクリニックには行かないことをお勧めします

 

ただ、代替療法が劇的に効くことも

まれですが無い訳ではないので

それにかけるのも否定はしません

 

がんって何がどう効くか分からないし

何より患者さんひとりひとりに

人生の背景や考え方、生活があるので

ガイドラインの型にハメすぎるのが

一番やってはいけないことです

 

 

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