東大病院放射線科医 前田恵理子さん(1) 肺がん 4度の再発越えて

 

Facebookで知り合いになっている

東大の放射線科医のがん闘病の様子が

先日、日経新聞に掲載されていました

 

 

<日経より前田医師の闘病歴>

2015年2月 肺がん発見

手術に臨むも、術中にステージ4の診断

(肺がんステージ4の5年生存率は約3割)

→術後化学療法

 

2017年7月 再発

→分子標的薬で縮小するも、

 1年半で効かなくなる

 

2019年1月 リンパ節再発に対して手術

 

2019年2-5月 化学療法

 

2019年6月 再発に対して手術

 

2019年9月 再発に対して放射線治療

 

現在、再発無く経過

来月で診断から5年経つ

(5年生存率3割の中に入った)

 

 

 

この経過は特殊だと思いますか?

 

実は、例えステージ4と診断されても

前田医師のような経過をたどり、

さらには根治してしまう例があります

 

 

ステージ4だと、ほとんどのがんでは

抗がん剤治療が選択されます

 

そして、抗がん剤が効かなくなったら

「標準治療ではこれ以上できません」

と宣告されてしまう訳ですが…

 

抗がん剤で全身の転移を抑えつつ、

それでもコントロールできない転移が

少数(個数の定義はない)であった場合、

 

局所治療(手術や放射線)を加えることで、

予後を延ばし、中には根治例もあります

 

 

大腸がんを例に取ってみると

手術後に抗がん剤を行っていても

肝転移が出現することがあります

 

肺など他に転移が無く、

転移が肝臓の少数だけの場合には

手術で肝転移を切除することで

5年生存率が有意に上がります

 

ただ、肝転移が10個以上あるとか

肺にもたくさんあるといった場合は

局所治療は適応になりません

 

 

進行がんは全身病と言われ、

原発巣だけにあるように見えても

全身に微小転移が存在している

可能性が非常に高いと言えます

 

この微小転移に対して

抗がん剤治療などが行われますが、

それでも転移することがあります

 

 

そうなると、抗がん剤を変更したり

治療を諦められたりする訳ですが、

 

もし転移が少数しかなく

他に転移が出現しない時は、

 

この少数の増大する転移巣は

抗がん剤ではやっつけきれない

かなりの力をもった相手で、

転移のスーパーエースと言えます

 

これらエース級の転移に対しては

強力な局所治療が必要です

 

そして、

次々と現れる少数転移に対して

局所治療を繰り返しているうちに、

根治してしまう例も少なくありません

 

たとえステージ4と言っても

オリゴメタシスの場合は

根治を諦めないで欲しいと思います

 

 

参考までに

Ⅳ期肺癌の根治を目指す ~Oligometastasis に対する外科治療~

 

 

 

先述の前田医師も

オリゴメタシスの根治性について、

がん診療医は一度立ち止まって

考えた方が良いと思います

と発言していました

 

 

がんの治療にあたっている医師でも、

オリゴメタシスの概念がない医師は

結構多いと思います

 

ステージ4を一緒くたにしてしまい、

救えたかもしれない命を手放してしまう

そんな悲劇が起こして欲しくありません

 

 

ちなみに、樹木希林さんも

オリゴメタシスだったと思います

 

次々と現れる転移に対して

放射線治療を繰り返すことで、

あれだけ長生きしていましたから

 


膵臓がんのブロガーさんで、

再発しながらも局所治療を行い

9年間生きている方がおられます

 

ハマリョウの膵臓がん初回手術から9年、2度の再発再手術を乗り越え元気に生きていますが…

 

 

主治医が初めからステージ4の

根治を諦めている場合でも、

患者さんには諦めて欲しくありません

諦めてしまったらそこで終わりです

 

 

 

 

最後に、記事の中から

術後4カ月にわたって化学療法を受けたのち、通常業務に復帰した。初めの1年間は、頭の片隅から、がんや死のことが離れることはなかったが、大学教員として日々の診療、教育、研究に忙殺され、国内外の学会出張を数多くこなすうちに精神の健康も取り戻した。仕事は最良の薬だった。

 

間違いなく、がん治療では

精神の健康も非常に重要です