銀ラメLD50。 -4ページ目

銀ラメLD50。

脳内 文章化 実験。


昔よりは電話をかける回数が減った。

それでも

たまに思い出しては

母へ電話し

無機質な女性の声のガイダンスを聞くようになった。

ある日

例の通り

母へ電話をかけた。

しばらくの無音の後

コール音が鳴った。

え?え?

混乱した。

いや混線か?

この番号は母の電話番号だけど

もう使われていないはず。

いつもガイダンスが流れるだけだったのに

どういうこと?

もしかして母が出てくれるの?

いや、そんなはずはない。

でももしそうなら…。

ドキドキする音が受話器から聞こえる位

鼓動が早くなった。

しばらくのコール後

「はい。

もしもし?」

と相手が出た。

繋がった瞬間、

心臓を吐くかと思った。

えー、なんて言おう、

母の番号に電話かけたんだけど、

そうじゃなくて、母ではなくて、

えーと、あなたは誰?

それは電話かけておきながら失礼な。

でもえーと、えーと…

この瞬間0.1秒以下。

すみません。

この番号は**-****-****ですか?

「はい。そうです。」

と電話先の相手は答えた。

変声期を迎えたばかりような

中学生位の男の子の声だった。

電話番号は合っている。

この番号は母の電話番号だ。

ということは?

私は素直に話した。

この電話番号は母の電話番号で

たまに電話をかけていた。

母はもういないから

ずっと繋がらなかったけど

あなたの家になぜか繋がった。

そちらは**市になるの?

そう。

私の地元もそこなの。

中学生?

もしかして**中学?

私そこの卒業生なの。

在校生?

なんか嬉しいね。

電話の相手は

ハイッハイッと

元気よく応えたので運動部かなと思った。

たまに変わりきってない声が裏返り

甲高くなるのが微笑ましかった。

わかった事は

母の電話番号は

現在同じ市の

違う家の番号として使われている事。

電話の相手は

私の地元にある中学の在校生で

最近引っ越してきた事。

他愛のない話をしばらくした。

ドキドキは安堵と寂しさが入り混じった感情に変わった。

そろそろ電話切るね。

話してくれてありがとう。

と言うと

「はい。

僕も話せてよかったです。

…あの…その…

よかったと思います。」

ありがとう。

私は電話を切った。

もう母の電話番号に電話をかける事は

ないだろう。

新しい番号には

新しい家庭がある。

*

今日ね

母の電話番号に電話をかけたの。

たまにかけていたんだけど

いつも誰も出なかったの。

もう実家には誰も住んでないから

当たり前なんだけどね。

そしたら

今日

相手が出たの。

すごく驚いて相手と話したんだけど

電話に出たのは中学生の男の子だったんだけど

母の電話番号は今そこの家で使ってるみたい。

と

帰ってきた娘に話した。

電話をかけていた事を

誰かに話すのは初めてだ。

すると娘は

目に涙を溜めて

「よかったじゃん。」

と言った。






電話をかけた。

何度かけても

無機質な女性の声でガイダンスが流れ

繋がらない。

それはそうだな。

電話料金払ってないもんな。

それにあの家には

誰もいないからね。

私の生まれ育った家には

もう誰もいない。

*

父が亡くなり

私は地方へ転勤した。

地方で暮らす私は

何かと家にいる母へ電話をかけた。

母の力は偉大だ。

方言で会話をするだけで

元気になれた。

電話番号は

ちゃんと覚えていて

今でも空で言える。

新しい生活は慣れない事が多かったが

時間の経過と共に徐々に慣れていき

母に電話をかける事も少なくなってきた。

*

ある日

久しぶりに

母に

電話をかけた。

何度コールしても出ない。

この時間に外出とはめずらしいな。

と思った。

イヤな胸騒ぎがしたが

無理矢理押し込めた。

思い過ごしだろうと。

しかし

胸騒ぎは的中していた。

母は広い家で

脳梗塞で倒れていた。

私が電話をした翌日に

たまたま訪ねてきた隣人によって

発見されたらしい。

母は私のコール音を聞いたのだろうか?

私は飛行機で母の元へと急いだ。

急いだところで

もう誰も待っていないのだけど。

*

急いで持ってきた喪服はカビ臭く

それだけが

これは現実だ

と私を繋ぎ留めているようだった。

淡々と葬儀は進み

親戚も散り散りに帰り

ポツンと一人になった。

まだ実家に帰ると母がいる気がした。

しかし…。

現実感が薄れていた。

まだ電話をかけると

いつものように

元気に暮らしとう?

と聞いてくれるような気がした。

しかしこの箱はー。

現実感が薄れた。

白い霧の中フラフラと歩くように

耳の中に水が入った時のように

血糖値が下がる時のように。

まだ話したい事があった。

聞きたい事もあった。

親孝行出来てないよ。

ちゃんと教えてくれないとわからないよ。

私は久しぶりに

声をあげて泣いた。

*

それから

地方の自分の家へと戻った私の生活は

元に戻った。

さみしい時や悲しい時があった時は

母に電話をかけた。

正確には母の電話番号に電話をかけた。

コール音がなる。

しかし誰も出ない。

それはそうだ。

もうあの家には誰もいないからね。

それでも

もしかすると

出てくれる気がして

たまに電話をかけた。

誰も出ない電話。

お願い。

たまには幽霊でいいから出てよ。

と願っても

もちろん誰も出ない。

呼び出しのコール音は

いつの間にか

無機質な女性のガイダンスに変わり

幾年かが過ぎた。

春夏秋冬 春春 夏夏 秋秋 冬冬

私も歳をとった。





あと何度偶然は起きるのか?

*

もう数年も経過した。

私は前職を辞めてから

引っ越し

誰も知らない街で生活をしてきた。

私を知らない街

私が知らない街

少し安心する。

それなのに

かつての上司w氏に

現在の勤務先の前でばったり会った。

ありえない。

反射的に

wさん!?

と声をかけてしまった。

ありえない。

「なんでこんなところにいるの?」

と質問された。

むしろ私の質問であった。

私が前職を辞めてから

1年後位にw氏も辞めていたのは噂で知っていた。

しかし、

お互い連絡も取ることなく生活をしてきた。

(いや、一方的にメールは着てきたが、

近況報告はなかったし、しなかった。)

それが

まさか

こんな場所で会うなんて偶然にもほどがある。

そしてこんなにも近くにいるなんて

キモチワルイ。

ざっと近況を話された。

私の近況はざっと濁した。

かつての上司。

かつてあんなにも憎んだ人間。

かつての恋人。

「転職してよかった。

だってこんな場所で

また、**ちゃんに会えるんだもん。」

と以前より輪郭が丸くなった優しい顔で笑った。

私はマスクで顔を隠していてよかったと思った。

*

あと何回偶然は起きるのか?

それに意味はあるのか?

気持ち

悪い。

















それでも

ハジメには

言っておこうと思う。

わざわざと呼び出した。

妊娠したの。ハジメの子だと思う。

「マジで…!?

うわ…参った。」

とかなり驚愕していた。

そりゃそうなるよね。

私、産むから。

慰謝料も教育費も何もいらない。

私の子供として育てるから大丈夫。

ハジメの事は産まれくる子には言わないつもり。

万が一自分から知った時にのみ

ハジメの事を教えるから理解して。

「旦那には何て言うの?」

言わないつもり。

「ごめん。ありがとう。ごめんなさい。でもありがとう。」

と泣きそうな顔して言うから

おかしくなって笑った。

つられてハジメも

泣きそうな顔のまま笑った。

「やっぱり

責任取る。

俺と結婚して。」

と言い始めた。

何言ってるの?

私は今の生活を崩したくないし

旦那も子供もいる。

ハジメとはこうなったけども

友達としかみれない。

責任なんて取らなくていいから。

ハジメはまた今にも泣きそうだった。

「せめて指輪を買わせて。」

指輪??

また唐突な事を言う。

ハジメはいつもそうだ。

人とは違う事を思いがけないところで言うから

いつもおもしろいなと思っていた。

十六年以上経ってもちっとも変わってない。

そういうところは好きだ。

もちろん友達としてだけど。

嬉しいけど

これから指輪をするってどういう意味?

いらないよ。

と笑った。

「じゃあネックレスを買わせてください。」

なぜアクセサリーにこだわるのか。

彼なりに何か思うところがあるんだろうな。

わかった。

じゃあお願いね。

と言って

雑誌でしか見た事のない

ゼロが沢山付くブランドのネックレスをリクエストした。

ハジメは

「そんなブランド知らないなぁ。」

と言いつつケータイにメモを取った。

後で調べるって言ってたけど

値段見て驚く様子が目に浮かんで楽しくなった。

ハジメから何か欲しいわけではない。

困らせようとか困らせないとか

そんな事ではない。

責任取ると思ってくれただけでいいや。

取ってもらおうとは

微塵も思ってないけど。

パパはこんな人だったのよ~

なんて1マイクロも思わない。

倫理的に間違ってる?

では正解は何か知ってるの?

私は

私の子供を

既に愛している。

きっと

私のお腹の中で

ケラケラ笑っている。
































それから

1ヶ月か2ヶ月か

覚えてないけど

微熱が続いた。

風邪かな?

と思ったけど

どうも違う気がする。

そういえば

今月は生理がない。

ということは…?

私は市販の妊娠検査薬を買いに行った。

結果は

陽性。

見事ご懐妊~!である。

さてお相手は

旦那かハジメか。

作成日の時期の違いは

旦那とハジメとでは1週間違い。

どちらが濃厚かな?

多分ハジメだ。

旦那とは何年何回やっても

できなかった。

特に治療してたわけではないから

確定ではないけど

旦那の液体は水みたいに透明だから

その中に種はないのでは

と思っていた。

数えたらあの結婚式の日は

俗にいう

アブナイ日

だった。

んーどうする?

とりあえず旦那に報告した。

もちろんハジメの事は伏せておいた。

赤ちゃんができたみたい。

「え?!本当に?!病院行った?」

まだ行ってないけど

市販の妊娠検査薬で陽性だったよ。

「俺、ずっとできないから

諦めていたところはあったんだけど、

すごく嬉しいよ!」

あなたの子じゃないかもしれない

とは

口が裂けても言えないし

言うつもりもない。

旦那もハジメも血液型は同じAO型だ。

血液型でわかることはない。

流石にDNA鑑定したらわかるけど

通常やらないしね。

顔は確かに違いが出てくると思う。

顔なんてどうにでも整形できるし。

あぁ、私はハジメの子供を産もうとしてる。

昔だったら考えられない事だ。

結婚していて旦那以外の他人の子を産むなんて

倫理的にも大半がおかしいような。

でも私に宿った命。

誰の子供でもいい。

大切だと思う。

これが母性かしら。

やけにテンション高くない?

だって子供が増えるの嬉しいからね。

娘にも兄弟がいた方がいい。

結局産まれて育つまで

どちらの子供だなんてわからない。

でもどちらでもいい。

根拠はないけど

きっと男の子だと直感で思う。

私は誰が何と言おうと

産もうと決意した。

そうすれば

この子は

永遠に生きていられる。