銀ラメLD50。 -3ページ目

銀ラメLD50。

脳内 文章化 実験。


私は彼と共に生きてきた。

正確には起業した彼と共に生きてきた。

彼は会社を立ち上げ

私は経理関係全般からゴミ捨て、たまには営業も行い、現場も行ってきた。

起きている時間のほとんどを仕事に費やした。

だからこの会社は

彼と私のものだと思う。

部下の女性は

私の事を

サミシイ女だ

と陰口を言う。

それでもいい。

私には彼とこの会社があるもの。

彼が必要とするなら

どんな仕事でもするわ。

それが生き甲斐であり喜びなの。

必要とされる事

それが生きている上で

どんなに心強いことか。

*

彼は仕事の相談を

私に一番にする。

一通り説明をされた後、

「おまえ、どう思う?」

と言う。

私を

『おまえ』

なんて

呼んでいいのは彼だけ。

私は少し考えるの様に間を置き、

場合によっては即座に判断をし、

適切な言葉と柔らかい表情で

答える。

彼は

うん、うん、と頷き

「そうか、わかった。ありがとう。」

と必ず言う。

それはこれから始まる雑談のきっかけになる言葉なので

私は嬉しくなる。

様々な事を話をしていると

彼は

「おまえ、仕事はいいのか?」

と気遣ってくれる。

ええ、大丈夫ですわ。

あなたが外出されてる間に済ませましたわ。

「そうか。おまえは優秀だもんな。」

彼が微笑む。

増えた目尻のシワも素敵だ。

部下の女性が

チラッと私を見る

部下の女性は

仕事を振られたので

おもしろくないと思っているはずた。

部下の女性がどう思おうが

どうでもいい。

私には

彼がいる。












今日もおつかれさま。

家に帰り

ポストを開けると

中には

未開封であろう

緑のじゃがりこが

静かに入っていた。

何?

イタズラ?

ポスト入り口からは入らないサイズだし

何より

ポストはカギ付きなんだけど。

当然カギは私しか持ってないはずで

今カギを開けて

ポストを開けたはずで…

どういうこと??

私は短い時間

しばらくじゃがりこを手に持ち

出ない答えを探した。

その時

メールの着信音が

響いた。

『じゃがりこ好きだったでしょ?

食べてください。』

発信元は

W氏だった。

背後を振り返ったが

既に夜になった周りは暗く

人の姿は

確認できなかった。



















今日もお仕事おつかれさまです。

通勤電車は混んでて嫌になるよね。

運よく座れたらラッキー。

立ちっぱなしの脚だから

帰りはやはり座りたい。

今日は座れた。

電車は私と

私と同様の疲れた社会人達を乗せて

帰路へと運ぶ。

そんな中

視線を感じた。

電車内ではたまにあることだ。

誰かが見ている。

何の興味かは人それぞれだ。

興味か好意か悪意かはわからないけれど。

大体の場合は

その視線を合わせると

わずかにバツの悪い動きをし

目を逸らされる。

それが普通だと思う。

私は視線を感じる場所を探った。

キョロキョロと目を動かして

こっちを見てる人を探した。

車両に沿った座席

向かいの女性

スマートフォンをひっきりなしに操作。

その隣

爆睡中の疲れたサラリーマン。

その隣

音楽を聴いている大学生風の男の子。

やや混んでいる車内。

シャッフルしたら誰か判別不能のサラリーマン達が

群れを成して立っている。

一番端に目を移して

思わず小さく声が出そうになった。

サラリーマン達が立っている隙間から見えたのは

元上司W氏だ。

車両に沿う形で取り付けられた座席のため

私の座っている席からちょうど対角線上に当たる。

明らかにニヤニヤしながら

私の方を凝視している。

他人の空似?

私の自意識過剰?

私は慌てて

しかもなるべく自然に

目を逸らした。

あたかも

このつまらない通勤時間を有意義に使います

というふうに

鞄から手帳を取り出し

おもむろに開いた。

その間に盗み見をし

確認した。

間違いない。

私をみてニヤニヤと笑っている。

確か帰宅方向は逆のはず。

なのになんで?

手帳を顔の高さまで持って来て

顔を隠そうと試みた。

手帳は小さすぎる。

8月の予定は

父親の誕生日

美容室の予約

今度の金曜日は飲み会

待ち合わせ時間は

場所は

時間は

場所は

また手帳の隙間から様子を伺った。

まだニヤニヤとこちらを見ている。

時間は

場所は

久しぶりの友達に会うのが楽しみだ。

なんでこっち見続けているの?

何着て行こうかな?

なんで同じ電車に乗ってるの?

新しいヒールの靴も欲しいな。

気持ち悪いな。

明日は金曜日、

大安、友引、仏滅、仏滅、滅、滅、滅。

あぁ気が滅入る。

途中下車をしようかとも考えた。

あと2駅。

害があるわけではない。

話しかけたられたら対応すればいい。

でも元上司W氏の帰宅方向は

逆のはず…。

なのになんで同じ電車に乗っているの?

電車が私の降りるべき駅に到着した。

大勢の人がドアに集まる前にドア前へ移動し

ドアが開くと共にホームに降りた。

さりげなく振り返って後ろを確認。

元上司も席を立つところだ。

降りる駅も同じなんてどういうこと?

でも私の自意識過剰?

人ごみに紛れて階段を急ぎ足で駆け上った。

改札口を通り

振り返った。

あまりにも人が多すぎて

単に振り返っただけでは

確認できない。

それは相手も

私を見失ってる事だと思いたい。

私は駅ビル内のショップをぐるぐると徘徊し

誰も付いてこないことに

気を巡らせながら

早足で家へと向かった。



























今日もお仕事おつかれさまです。

今日の晩御飯は何を食べようかな?

なんて考えながらの帰宅途中、

また会ってしまった。

今度は職場付近の最寄り駅でだ。

なんとも偶然。

いや、活動範囲が被ってそうな気はしてたが

まさか2度目とは。


駅への階段へ向かう途中

遠目からこちらを凝視してる人が

向こうから歩いて来た。

知り合いかな?

と思ったけど

この駅付近に知り合いはいないよなぁ

と思った瞬間

記憶から

ヒット件数が1件あります

と表示された。

元上司W氏だ。

慌てて目を逸らした。

会いたくなかった。

なんでかって?

もう思い出したくもないからだ。体。

あの時の事を思い出すと

ひどく惨めな気持ちになる。

かつて恋愛関係にあった。

なのにも関わらず

前の彼女が家に白ワインを置いて帰ったこと。

それを追求しなかった私。

本当に好きなのは砂糖さんという女のこと。

それをツラツラと何十回何百回も聞いたこと。

職場で電話でプライベートで。

私の仕事を奪った事。

それを私を守る事と豪語し

孤立させ秘書のように近くに置いた事。

そんな中

性的関係を迫った事。

しかも職場で。

カップラーメンよりもお手軽な存在。

何より一瞬でも付き合う契約をした自分

断る勇気がなかった自分

自分の立場を守ると称して守れてたのか?

ただ今は気持ちが悪い。

だからもう思い出したくもない。

デリート機能があるなら

喜んで連打するだろう。


瞳を一切動かさず

正面だけを見てまっすぐ歩いた。

必死の『私はアナタに気付いてないですよ』アピール。

だからアナタも気付かないで。

人2、3人の間を空けてすれ違った。

ふぅっ

と思った瞬間

右肩を叩かれた。

振り向かざるを得ない状況。

「全然気が付かないね。」

と元上司W氏の微笑む顔が目に入った。

輪郭はまだ丸くなったままだ。

あ、お久しぶりです。

気が付きませんでした。

ともっともらしい事を言った。

本当は気が付いてたけどね。

「こんなところで何してるの?」

仕事帰りです。

Wさんは何をしてるんですか?

「**ちゃんを待ってた。」

と言ってニヤッと笑った。

これはお得意のくだらない冗談だと思った。

歩いてたよね?

どうせ最寄り駅なんでしょう。

と簡単に推測される。

「ちょうど家に帰るところ。」

とあっさりと本当の事を言った。

「こんな場所で会うなんて偶然だねぇ。

運命を感じるよ。」

と笑う。

私は不運しか感じない。

今どこに住んでいるんですか?

職場はもしかしてあのホームセンターの近くですか?

と根掘り葉掘り聞いた。

興味があるわけではない。

アナタの活動範囲を知って

アナタをできるだけ避けるため。

できることなら

もう三度と会いたくない。

私の職場と元上司W氏の家が近い事がわかった。

多分徒歩5分圏内だろう。

私の職場の場所を聞かれてものらりくらりとかわした。

教えない。

知られたくない。

そこに私がいるなんて想像もして欲しくない。


しばらくの立ち話の後

「これから飲みにいく?」

と誘われた。

私は

すみませんが、用事があるので

と丁寧に断わった。

すみませんが、帰りますね。

失礼します。

と挨拶をして別れようとした。

元上司W氏は

またニヤッと笑った。

「そういえば**ちゃん、

仕事中に白い車乗ってる?」

…乗ってますけど。

「それで仕事中白い服着てるでしょ?」

…着てますけど。

なんで知っているのだろう。

多分見られてた。

私が仕事中の姿をどこかで見ていたようだ。

もちろん私は気付いていなかった。

自分の知らないとこところで

自分を見られてるなんて

いい気はしなかった。

なんだか怖くなった。





























四月になるとオトナになって

君ならきっとうまく笑えるはず

ありがとうって

笑って言えばいいかな

それとも行くなって

泣けばいいかな


君はこの閃光に似た

瞬間を作るユキ

長いまつ毛伏せて

足元に舞う粉雪


良い風が吹きますように

良い風が吹きますように


ジンジャエール飲み行こう