導入から3年目を迎えた東京科学大学(旧東工大)の「女子枠」。
ネット上では今なお喧々諤々の議論が続いていますが、その実態はどうなっているのでしょうか。
女子枠合格者の出身高校別の詳細な内訳は公表されていませんが、各高校が発表している合格実績から、推薦・総合型選抜での合格者が多い学校を抽出してみると、興味深い傾向が見えてきました。
■ 総合型・推薦入試 合格者数上位校(サンデー毎日より)
※集計には女子枠以外の総合型合格者も含まれる可能性があります。
(女子校:3名以上)
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1位:豊島岡女子学園(8名)
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1位:吉祥女子(8名)
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3位:洗足学園(5名)
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4位:鴎友学園女子(4名)
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5位:頌栄女子学院(3名)
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5位:県立浦和第一女子(3名)
サンデー毎日には未回答校もあるので、女子学院11名などの科学大合格者の多い難関女子校にも、女子枠合格者が含まれている可能性が高いと考えられます。
(共学校:4名以上)
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1位:広尾学園(10名)
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2位:県立横浜翠嵐(7名)
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3位:県立大宮(6名)
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3位:都立武蔵(6名)
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3位:筑波大附属(6名)
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6位:渋谷教育学園渋谷(4名)
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6位:県立船橋(4名)
■ 「学力担保」への懸念をどう見るか
女子枠に対しては、大きく2つの批判があります。一つは「性別による優遇」そのものへの是非。そしてもう一つが「一般入試なら不合格であろう層が合格しているのではないか」という学力への疑念です。
しかし、上記の顔ぶれを見てどう感じるでしょうか。
首都圏屈指の進学校が並んでおり、合格者を出している母体を見る限り、基礎学力については一定以上の水準が担保されているようにみえます。
そもそも、女子枠は100%「推薦・総合型選抜」です。
この選抜方式の本旨は、ペーパーテストの一点刻みの競争では測りきれない「特定の分野への突出した能力」や「多様なバックグラウンド」を評価することにあります。
もし「一般入試なら受からない学力」を問題視するのであれば、それは女子枠固有の問題ではなく、推薦や総合型選抜という制度そのものに対する批判に帰結します。
■ 科学大が抱える真の課題
ただ、科学大において特異なのは、その比率です。 現在の募集定員を見ると、推薦・総合型選抜の枠の60%が「女子枠」に割り振られており、かつ、残り40%の一般枠(女子枠と併願可)からも女子が多く合格するため、事実上、男子の推薦・総合型選抜枠がかなり狭くなっています。
昨年の実績で見ると総合型・推薦入試の合格者(女子枠含む)の女子率は74%、東大の推薦入試の女子率は49%と一般入試に比べると女子がかなり多く合格はしていますが、科学大の推薦・総合型選抜定員は250名と東大の2.5倍ですから、その影響はだいぶ違います。
多様性を確保するための「総合型」が、性別によって事実上の制限を受けているという現状。
これをどうみるか、ということなんだろうと思います。
一般入試では測りきれない「特定の分野への突出した能力」や「多様なバックグラウンド」を持つ人材を見出し、一般入試合格者との間でポジティブな「化学反応」を起こさせる。それが総合型選抜の本来の狙いです。
しかし、「特定の分野への突出した能力」や「多様なバックグラウンド」を持つ人材を見出すというのは難しく、その選別には高度な目利きとコスト、そして何より「運用側の主観」というリスクが伴います。
そうした「見極めの不確実性」を考慮するならば、「女子」という明確な属性にフォーカスし、物理的に多様性を確保するという戦略は、改革の手法としては極めて合理的であり「アリ」な選択だと思っています。
ただ、女子枠で入学した女子学生が大学~大学院修士を卒業する2~4年後あたりをメドに、実際の効果や弊害をしっかりと評価し、見直していくことが重要なのだろうと思います。
