前回の続きです。
合格点を楽々超えたはずのB中学。
数週間後にやった2回目の過去問の結果は合格点に100点近く届かない大惨敗。
私の頭は「???」で一杯になりました。
一体何故?
奏に感想を求めると何も言わず気まずそうな顔をしています。
まさか!!
私は思い出したのです。
1回目の過去問は、解答用紙だけをコピーし、問題は過去問集(オレンジ色の表紙のアレです)を渡して解かせていたんです。
当然ながら、ページをめくれば解答が載っています。
私は奏に「まさか答えを見て解答したのか?」と尋ねました。
奏は目に涙を浮かべ「ごめんなさい」と蚊の鳴くような声で答えました。
その瞬間、私は烈火のごとく怒りました。
「なんでそんな事をしたんだ!!
過去問をやる意味が分かっているのか!
なんの意味もない!
試験にかけた時間も無駄になったし、その後の戦略も無意味なものになったじゃないか!!」
後にも先にもここまで怒ったことは記憶にないくらい激しく奏を追い込みました。
奏は「本当にごめんなさい」と泣きじゃくり、妻の聖子は血相を変えた私に気圧され何も言えず立ち尽くしていました。
そんな中。。。
花子が私の怒りを上回る迫力で割り込んできました。
「全部、聞いてたよ。
なんで、パパは過去問をめんどくさがってコピーもせずに本ごと渡して解かせたの?
こんな時期に何ヶ月も先に受ける入試問題解けるわけないじゃん。
そんな難しい問題をやらされて悲しい気持ちになっているときに、ちょっとめくれば答えが書いてあったら、誰だってみたくなるじゃん。
そんな事を奏にさせてしまったパパが悪い。
奏をとても悲しい気持ちにさせたパパが悪い。
奏に謝って!!」
花子は目に涙を浮かべながら一気にまくし立てました。
あまりの迫力に圧倒されると同時に、確かに花子の言うとおりと思い直しました。
いきなり難問を解かされ、親の期待をプレッシャーに感じているなか、ページをめくれば答えが書いてある誘惑。
まだ、小学生。
確かに答えを覗くなというほうが無理がある設定です。
こんな結果になって、一番辛い思いをしたのは奏なのは間違いありません。
私の不注意で奏は一生消えない心の傷を負ったかもしれないところ、花子が救ってくれました。
「パパが悪かった。。。」
と呟き、無言で奏を抱きしめた、そんな強烈なカンニング事件の思い出でした。