「ねえ、最近、家にいても会社の話しかしてないよ」

ある日の夕食の席で、家族にそう言われました。はっとして自分の行動を振り返ると、確かにその通りでした。夕食のときも、休日も、頭の中は会社のことでいっぱい。家族が話しかけてくれても、上の空で返事をしていたのです。

小さな会社を経営していると、会社と家族の距離が、とても近くなりがちです。家族が経理を手伝ってくれていたり、会社の借入に家族の生活がかかっていたり。家に帰っても、会社から完全に離れることは難しいものです。

先に結論を言います。小さな会社の社長にとって、家族は会社を支えてくれる大切な存在であると同時に、会社とは別に守るべき場所でもあります。今日は、家族と会社の距離感について、私が考えてきたことを書いてみます。

家族と会社の距離が近すぎて起きたこと

コロナ禍で会社が苦しかった時期、私は家族にも会社の不安をぶつけていました。

  • 夕食のときに、売上の話や取引先の愚痴をこぼす
  • 休日も、スマホで仕事のメールを確認し続ける
  • 家族旅行の予定を、仕事の都合で何度もキャンセルする
  • 会社のお金の不安から、家計にも必要以上に厳しくなる

家族は、何も言わずに付き合ってくれていました。でも、あの日の「会社の話しかしてないよ」という言葉には、「私たちのことも見てほしい」という気持ちが込められていたのだと思います。

家は、本来、心と体を休める場所です。その家が、会社の延長になってしまっていた。家族にとっても、私自身にとっても、それは決して良い状態ではありませんでした。

家族が会社を手伝ってくれることのありがたさと難しさ

小さな会社では、家族が経理や事務を手伝ってくれることも多いと思います。私の会社でも、家族が経理を支えてくれています。

家族が手伝ってくれることは、本当にありがたいことです。信頼できるし、会社の事情をよくわかってくれている。でも、その一方で、仕事上の意見のぶつかり合いが、そのまま家庭に持ち込まれることもあります。仕事で言い合いになったあと、家に帰っても気まずい。そんな経験もありました。

家族と会社のちょうどいい距離をつくる工夫

家族の一言をきっかけに、私は少しずつ、家族と会社の距離を見直すようになりました。今、心がけていることを書いておきます。

1. 家では「仕事の話は○分まで」と決める

仕事の話を完全にしないのは難しいので、夕食のときは最初の10分だけと決めました。それ以外の時間は、家族の話を聞くことを大切にしています。

2. 休日は「仕事をしない時間」をつくる

休日のうち、半日だけでもスマホを置いて、家族と過ごす時間をつくるようにしました。すぐに返事が必要な連絡は、実はそれほど多くありません。

3. 仕事上の話は「会社で」する

家族が会社を手伝ってくれている場合、仕事の相談や意見交換は、できるだけ会社の時間の中でするようにしています。家に帰ったら、社長と社員ではなく、家族に戻る。そう決めるだけで、気持ちの切り替えがしやすくなりました。

4. 会社の状況は、正直に、でも必要な分だけ伝える

会社のお金の状況は、家族の生活にも関わります。隠すのではなく、正直に、でも必要な分だけ伝えるようにしています。不安だけを一方的にぶつけるのではなく、「こういう状況だけど、こう対策している」と、見通しと一緒に伝えることを心がけています。

5. 家族の予定を「仕事の予定」と同じように大切にする

子どもの行事や家族の記念日は、仕事の予定と同じようにカレンダーに入れて、できるだけ守るようにしています。

家族が教えてくれたこと

家族との時間を意識的につくるようになってから、ひとつ気づいたことがあります。それは、家族との時間が、実は会社のためにもなっているということです。

仕事のことばかり考えていると、視野が狭くなり、判断も偏ります。家族と笑い合ったり、子どもの話を聞いたりしていると、頭がリセットされ、翌日には新しいアイデアが浮かぶこともあります。会社から少し離れる時間があるからこそ、会社のことを冷静に考えられるのだと実感しています。

そして何より、家族が元気でいてくれることが、社長としての一番の支えです。会社がどんなに苦しいときも、家に帰れば待っていてくれる人がいる。その安心感があったからこそ、コロナ禍を乗り越えられたのだと思います。

▶ あわせて読みたい:社長が倒れたら会社が止まる|零細社長が体調を崩して気づいた「健康管理も経営」という話家族に会社のことをどこまで話すか

家族に会社の状況をどこまで話すかは、多くの社長が悩むところだと思います。私は、次のような線引きをしています。

  • 話すこと:会社のお金の大まかな見通し、家計に影響しそうなこと、大きな決断をするとき
  • 話しすぎないこと:取引先や社員の細かい愚痴、解決の見通しがない不安だけを並べる話
  • 話し方:「困っている」だけでなく、「こうしようと思っている」まで一緒に伝える

不安だけを共有すると、家族も一緒に不安になってしまいます。見通しとセットで伝えることで、家族も安心して見守ってくれるようになりました。

家族の「働き方」も大切にする

家族が会社を手伝ってくれている場合、その家族にも休みや自分の時間が必要です。家族だからと甘えて、気づけば長時間働いてもらっていた、ということがないように気をつけています。

給料や勤務時間などの条件も、家族だからこそ曖昧にせず、きちんと決めておくことが大切だと感じています。「家族だから」ではなく、「大切な仲間だから」という気持ちで向き合うようにしています。

子どもに会社のことをどう伝えるか

子どもには、会社の細かい事情は話していません。でも、「お父さん(お母さん)はこんな仕事をしているよ」ということは、ときどき話すようにしています。会社に連れて行ったり、仕事の話をやさしく伝えたりすると、子どもなりに興味を持ってくれます。家族みんなが会社のことを少しでも知っていると、社長として帰る家が、もっと温かく感じられるようになりました。

会社のために、家族を犠牲にしない

小さな会社の社長は、「会社を守るためなら」と、家族との時間を後回しにしがちです。私もそうでした。

でも、会社を守る理由のひとつは、家族の暮らしを守るためだったはずです。その家族を犠牲にしてまで会社を守っても、本末転倒になってしまいます。

会社も家族も、どちらも大切。だからこそ、それぞれにきちんと向き合う時間と場所を分けることが、長く会社を続けていくためにも必要なのだと思います。

会社は社長ひとりで守るものではなく、家族にも支えられているもの。そして家族もまた、社長が守るべき大切な存在です。どちらか一方ではなく、両方を大切にできる社長でありたいと思っています。

仕事と暮らしのバランスについては、働き方や時間の使い方をテーマにした本からも学べます。読む時間がなかなか取れないときは、ビジネス書の要点を1冊10分ほどで読める本の要約サービス「flier(フライヤー)」を使うのもひとつの方法です。

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まとめ

  • 小さな会社では、家族と会社の距離が近くなりがち
  • 家が会社の延長になると、家族も社長も休まらない
  • 家での仕事の話は時間を決め、休日は仕事をしない時間をつくる
  • 仕事上の話は会社で。会社の状況は正直に、でも必要な分だけ
  • 家族との時間は、会社のためにもなっている

今夜の夕食では、会社の話を少しだけ控えて、家族の話をじっくり聞いてみてください。きっと、知らなかった家族の一面に出会えるはずです。

家族の一言がなければ、私は今も家で会社の話ばかりしていたかもしれません。気づかせてくれた家族に、今は心から感謝しています。

同じように家族と会社の間で悩んでいる社長さんは、どんな工夫をしていますか。よかったらコメントで教えてください。

 

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