今年で18年目になる.
18年前といえば,セカンドオピニオンという言葉が
やっと世間に根付き始めた頃でもある.
よく耳にするフレーズも,昨今相変わらずである.
標準治療が,保険診療の中で最も『多くの人』の救いに
繋がるものであることは認めるも,残念ながら万能ではない.
とりわけ,標準治療の適用の枠から外れたがん患者さん達の
診療にあたっては,がん専門病院や大学病院で学んできた
医療行為や考え方だけでは対応困難なことが殆どだ.
エビデンスだけでは,がん診療の現場は語れない.
エビデンスだけでは,がん患者さんの多様性に対応できない.
エビデンスからこぼれた患者さんを切り捨てないためには
どうしたらいい?どう対応していくのだ?
標準治療の光が届かない,教科書的解答が存在しない巨大な
がん診療の隙間の中にいる患者さん達をどのようにすくい
上げるのか?ということは,少なくとも私が医師になり
30年以上が経過した今も,放置されたままだ.
エビデンスが重要.
んなこと百も承知.
そういう世界に長年居た.
だから,耳タコだ.
ただ,そこで思考を止めるな.
『型から入り,型から出でよ.』
さて,18年もがん診療の隙間診療をやっていると,
がん患者さん達に,こういう病院があればいいな,という
かなり具体的な形が見えてくる.
結論から言うと,「本院」と「分院」の2院体制になる.
・本院:内科・神経科・リハビリ病院(入院可能)
+緩和ケア+外来CART(腹水濾過濃縮静注法)』
・分院:少量抗がん剤治療や免疫療法など自費診療部分を担う
この2院体制がそろえば,がん患者さんの多様性に対応できる,
充実したがん診療が可能だ.
放射線治療など,足りないところは,他の医療機関や
在宅診療医師との診療連携を利用すれば十分事足りる.
まず,コア(核)となる病院という箱物は,患者さんの
有事入院対応という意味でも確保したい.
そして,その箱物の内容としては,九州の実家のような
神経内科/リハビリテーションを専門とする病院は
“うってつけ”だ.
神経内科の部分は,別に脳神経外科でもいい.
とにかく,脳病変・脊椎病変・神経学的所見について
気軽に相談やアドバイスが得られる診療環境は結構便利だ.
あと,伏兵と呼ぶと失礼かもしれないが,リハビリテーション.
リハビリテーションは,神経内科や整形外科だけでなく,
全ての領域の垣根を超えて広く患者さんの診療に
応用できるものであり,もっと日常診療で光があたっていい.
がん患者さんにおいては,
・高齢がん患者さんの足腰の強化・運動促進
・元気になって家に帰ろうというモチベーションに繋がる
など,リハビリテーションは予想以上の強力な武器として
機能するため,私的には外せない.
当院のご高齢のがん患者さんには,椅子が2つあれば
ご自宅でも手軽に行える「起立着席訓練」をお教えしている.
この内科・神経科・リハビリテーション病院をコア(核)
として、あとは,
・緩和ケア
・少量抗がん剤治療(緩和的抗がん剤治療)
・外来CART(入院CARTでもOK)
・免疫療法など自費診療(分院にて)
をペタペタと貼り付けるように加えていく.
CARTは本来,入院にて施術されるものだが,
患者さんの病態によっては外来でも十分可能である.
更に,少量抗がん剤治療や免疫療法など,保険外診療
(自由診療)の部分へも対応できるように「分院」を別に
コア病院の近くに併設しておくことで,がん患者さんの
ニーズの多様性に対応する・・
これでバッチシいけるはずや・・・