50歳台,女性.子宮体がん術後.
肺転移,多発左鎖骨・傍大動脈・骨盤内リンパ節転移.
主治医から抗がん剤治療を勧められるも希望せず.
縁あり当院へ.少量抗がん剤治療導入となった.
イリノテカン 10mg/body 10日毎投与から開始.
(自費診療)
一般に子宮体がんでは,タキサンを含んだレジメンが
最初に選択されることが一般的だが,当方ではタキサンは
選択しなかった.
当院独自の薬剤選出法・・・
体内で増殖しているがん細胞の特徴に対応した防御システムに
関係する内因性物質の動きを見ているのだが,
α1アンチトリプシンが0-175 mg/dl かつ
血清アミロイドAが0-19.5 mg/L の場合,
イリノテカンがまず合っている.
この患者さんは,治療前に測定した
α1アンチトリプシンが150mg/dl,血清アミロイドAが0.1mg/L
なので,イリノテカンになる.
イリノテカンとタキサンは
コインの“裏表”のような関係の薬剤で,
イリノテカンが合っている人はタキサンが合わない,逆に
イリノテカンが合っていない人はタキサンが合っている.
だから,この患者さんの場合,少量使用とはいえタキサンを
継続使用すると,効果を認めないだけでなく,副作用含めた
不具合が出てくるであろう.
少量だったら薬剤は何でもいいというわけではない.
少量使用で副作用が出る薬物は,薬ではなくただの毒だ.
少量だから安全,少量だから心配ない,ではない.
正しい(合った)薬剤の少量使用でがん制御を試みるのだ.
(※本内容は,この患者さんの現時点での治療レジメンであり,
当院の子宮体がんのレジメンというわけではありません.)
イリノテカンは,下痢が有名な副作用の1つだが,
当院のように5−10mg/body/回で使用すると下痢はまず見ない.というより,やや便秘気味になる事が多い.
患者さんのがんを構成するがん細胞の多様性と
薬剤の対応・組み合わせが巧くフィットすると,
各々の薬剤は極めて少量使用で疾患制御が可能.
その組み合わせを,個々の患者さんで探っていくわけだが,
まずは,最初の薬剤としてイリノテカンはOKと判断した.
腫瘍は一時的に縮小したが,イリノテカンに感受性のない
がん細胞がいずれ増大してくるため,がん細胞の多様性の
経時的変化に対応するように,がんを抑えるための次薬を
探って追加していく.
Think different.
子宮がん・卵巣がんだからといって,何でもかんでも
白金製剤+タキサンがファースト チョイスではないのだよ.