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自社製作小説置き倉庫(詳細は説明欄をお読みください)

☆小説の原材料名:ツンデレ要素多(ファンタジー・現代物)・面倒臭い人多・不器用性質多・普通じゃない恋愛多・っていうか人間の人生に普通なんてもの自体無いよね・てか人生は生き地獄だし。
それでも人を求めてしまう。

シスターに引き入られ、父上に続き孤児院の地下へと続く扉をくぐる。

施設内部は地下に部屋を構えているようで、暗く湿った階段を下って行く。


「狭いのでお体にお気をつけ下さい。」


人一人しか通れない幅の階段にはシスターの持つ灯籠と従者が持つ蝋燭の灯りのみ。

足元が全く見えない為、気をつけていないと奈落の底まで堕ちて行きそうな程。

この孤児院について、私が語り聞いてきた話では、この巫女養成施設のさらに地下には雨神が降臨したという聖域とそれを祀る神殿があるという。

雨の神

それは信行されている他の神々とは違い姿形を民衆には見せず、自身の居城から外界へ出ない神とされている。

それ故に雨神の神殿は一般人には公開されず王家のみが知り得、代々守り継いで来た。

この施設に入るのは初めてだが、こんなにも暗く深い場所に神殿や巫女が居る事は想像が足りなかったようだ。

この施設と神殿へ今回来れた者は王族の人間を除けば、一握りの重役達だけである。

そして我々は今日ここへ呼ばれたのは、国に欠かせない存在である、雨神に仕える唯一の存在、雨乞いの巫女が関係している。

その巫女最終候補生がようやく決定したというのだ。

今日は候補生を正式に巫女へ任命する儀式と顔見せの政なのだ。

雨乞いの巫女は50~100年に一度だけ、この施設から選び抜かれる。

前代巫女は今より10年程前に死没している。

それからというもの、この国の雨季は年々短く、雨の量も少なくなっている。

父上も昔より雨の心配は毎年尽きなかった。

ようやく巫女が正式に決定し、今年の雨季を無事に迎える事が出来ればきっと父の荷も楽になる事だろう。

階段の終わりにはさらに鉄扉が阻み、その先には石造りの廊下が続いていた。

神殿はさらに奥のようだ。

廊下には同じ鉄扉がいくつもある。これはこの施設で暮らす者達の部屋なのだろうか。

廊下の突き当りの扉をくぐると、さらに螺旋階段が続く。

そしてその終わりには天上高く一際巨大な、随分と錆び付き蔦が絡まって一層仰々しい鉄扉が構えられていた。


(・・・なるほど、元々ここに存在した聖域に後からこの施設を増設したのか。)


「・・・この奥が雨乞いの神殿になります。どうぞお入り下さい。」


大きな錠前の封印を外し、扉を開く。

そこは薄暗い、石柱が並ぶ古い石造りの地下神殿だった。

洞窟のような空間に後から人間がここに神殿をつくったのだろう。あちこちに鍾乳石のような物が見える。

だが内部はかなり広い空間だ。薄暗い為、高い天井部分がよく見えない。

神殿の最深部には巨大な像が祀られている。あれがこの雨乞いの神の像か神体としている物なのだろう。

室内には蝋燭の灯りが均一に灯されているが、室内の温度はかなり低い。衣服を身に着けても寒さに震えるほどに。

冷たい雫が滴り落ちる地下神殿はぼんやりとした灯りのみが内部を照らし出していた。

その中心に数人の年半ばの巫女衣装に身を包んだ女性が立っていた。

女性といっても一人ひとりの面立ちは少女と表す方が合っている・・。

シスターと巫女達は我々の前に並び、跪き、王家に対する礼の姿勢で出迎えた。


「レンジェロ国王とご一行様、本日は遠き道のりをお出でくださいまして誠に有り難うございます。」

シスターは礼を終え、話し始める。


「・・・長き試練を終え、この度新たに雨神に仕えし巫女が誕生致しました。この国に雨神の恩恵を齎すであろう巫女達をご紹介致します・・・。」


巫女は全員で12人。

しかし本当の巫女として活躍できるのは1・2人であろう。

一体この中の何人が神に選ばれるのだろうか・・・?

俺はそんな事ばかりでシスターの自演じみた演説は筒抜けで、周りの者を見ても同じ様な顔であった。

一人一人を観察していると、皆同じ年代の少女で、自分と同じ178位であろう・・・。

どの娘も一様に美しい面立ちだが、巫女としては半人前のようにも見える。

父上の横顔も少々不安の色が見える。雨不足を解消できるような真の巫女は期待出来そうに無いのだろう。


(この様な巫女で今年の雨不足は解決出来るのだろうか・・・?)


思わずため息が漏れる。

最後の巫女の紹介でやっと話が終わるのだろう。

顔を上げ巫女の姿を見た。


(・・・・ん・・?)


最後の巫女も他の少女と同じ年代・服装であるが、俺はその巫女から少しの間目を離す事が出来なかった。

この国の人種系統的には珍しい黒色がかった髪色。肌は白く太陽の光を浴びていない様に透き通っている。

主立ちも美しいが、しかしそれ以上に他の娘と違う点はその目つきだった。

なぜあのように鋭い覚悟に満ちた目をしているのか。何かを見据えている彼女の目は少女には思えなかった。

目の前の我々はその視界に入っているのか?

俺はしばらく黒色の髪の巫女の少女に目を奪われていた。


7へ・・・

それから次の日。

朝、シスターの言った通り、孤児院の中には昨晩選ばれた28人以外に女の子は誰一人居なかった。

広い施設内がとても広くて寂しい様に感じられる。

最後の挨拶も出来なかった・・・・。

突然の別れに、覚悟はしていた筈なのに心に大きな穴が開いてしまった様に言い表せぬ虚無感に襲われた。

まだ話したいことが沢山あった・・・。

それでも状況は既に始動し始めてうるようだ・・・。

シスターが宿舎へ入って来た。まだ起き抜けの28人を見渡し、


「すぐ支度をして食堂へ集合です。説明をし、その後すぐに個別の修行に入ります。急ぎなさい。」


そしてまだ流れを把握できないまま、私達の巫女修行の鍛錬の日々が始まってしまった。

長く、厳しい修行が待ち構えている事などまだこの時の私は知らない・・・。














3年後・・・・(2年前)

灼熱の砂漠の中、仰々しく大行列を成し進んでいく。

本日は快晴。機から見れば暑苦しい正装に身を包み、装飾の施された鞍に跨り、ひたすら歩んでいた。

自分の前には父、いや国王の大きな背中が白馬に揺れている。

そのたくましい肩には王家の紋章が刺繍されたマントが時折砂混じりの風に煽られていた。

自分自身も王の正統後継者として今日まで成長をし続けてきたが、それでも今の自分では父上の姿は追い越せないと感じる程偉大に視界に映る。

馬の手綱を引き、父の横に並ぶ。

少し横目で横顔を窺うが、その眼差しは真っ直ぐ遠くを捉えているだけである。


「・・・・・父上。何故に、今回急遽私も同行するようになったのでしょうか?」


「・・・・・ガイル、お前はもう分かっている筈だ。」


「・・・・・・・・・・・・。」


砂漠しか無い地平線から目を逸らす事無く父は静かに続ける。


「お前はいずれこの国を担う男だ。私が思う様に動ける内に、少しでも多くのものを見ておく必要がある・・・。」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」


ふっと父の大きな手が頭の上に乗った。

大きな手に包まれている安堵感に、妙にくすぐったい様な気持ちになり返答に迷う。

父とこの様に会話するのもとても久し振りのように思う。

しかし忙しさに捉われていても自分の事も気に掛けていたという事に嬉しさを隠しきれなかった。

しばらくして父の横に衛兵の一人が走り寄って来た。


「国王、王子!まもなく到着になるようです。」


正面を確認すると、目的地の建物らしき物が視界にうっすら捉える事が出来た。

一団の隊列の歩みを速めるため国王は列の先頭へ走って行った。

ぼんやりとその後姿を見つめ、馬の足を進める。

周囲には何も存在しない、砂漠の真ん中にひっそりと建つこの黒く小さな古い建物。

巫女の素質を持つ孤児のみを預かり養成する特殊な孤児院だと聞いて来た。

しかし、一目見たガイルは違和感を感じずにはいれなかった。


(・・・・少女が暮らす孤児院にしては、やけに物々しい雰囲気だな・・・)


子供が暮らす住居というよりは、収容施設という様な良い印象を持たせない外観である。

従者が孤児院の正面入り口と思われる小さな鉄扉の呼鈴を鳴らすと、すぐに誰かが出て来た。

出てきたのは修道服を纏った年配の女性。

貫禄のある佇まいと我らの出迎えという事は、この施設の責任者なのだろう。

彼女は優雅な振る舞いで一礼し、


「お待ちしておりました。ガルフォルド国王様、そして御一行皆様。どうぞ中へ。巫女達も神殿でお待ち致しております・・。」


シスターに引き入られ、父上に続き孤児院の地下へと続く扉をくぐる。



6へ・・・

それからしばらく経ったある日の事・・・・。

消灯時間を過ぎた真夜中に、私を含む、2,30人程度の人数が内密に呼び出された。

私達は神像が祀られた礼拝堂に集合していた。

この国では昼間は灼熱の太陽が照りつけるのに対し、夜は手足が凍える程に冷え込みが激しくなる。

暖房設備の無い礼拝堂は寒さが厳しい。

私や友人達は悴む手を擦りながら、今までに無い夜中の集合命令に戸惑いを隠せずに居た。


「どうしてこんな夜中に・・・この人数だけなんだろうね・・?」


「・・・うん。」


友の問いには私も、ここにいる人間にも分からない。

しばらく待たされ、シスターが礼拝堂に姿を現した。

目視で私達が全員居る事を確認したシスターは口を開いた。


「・・・ここにいる28人はこれから本格的に国家の雨乞いの巫女となるべく修行に移行して頂きます。」


「・・・・・・・・・え?」


シスター以外の全員の空気がどよめき始める。

私達は言葉の意味が上手く理解出来ず、唖然とするしか出来なかった。

ようやく一人の女の子がシスターに問い詰める。


「どういう事ですか?私達は巫女になる事など初耳なのですが・・・?」


「当たり前です。今初めて貴方達にお話しているのですから。」


有り得ない・・・。

この砂漠の王国では雨はめったに降らない、貴重な天からの授かり物だ。

天候により雨季ですら降らずに、最悪酷い干ばつに悩まされ、国の死活問題であった。

その為、国では雨乞いの巫女をたった一人選抜する。

王家は国の存続のため、巫女を代々絶やさずに保護・育成し、監督し続けてきた。

しかし巫女は聞くところに因ると、特別な育成機関で選抜され輩出されているという。この小さな孤児院がそんな施設だというのか・・・??


「これは極秘情報でしたが、選ばれた貴方方にはお話ししましょう。

ここ表向きはただの孤児院としていますが、ここはレンジェロ王家が管轄する雨乞いの巫女を選抜する為の施設です。」


「!!!!!」


「レスリアでは太古の昔より巫女に必要な才能を持っていると思われる孤児のみを国中からここへ集め、育成してきました。しかし神に仕える神聖な巫女を守り、そして才能を見極める為にも一般にはこの施設の事を知られる訳にはいかずに隠されし施設として存在し続けたのです・・。」


私達は言葉を失っていた。

まさか自分達が生活していた施設が、本当は100年に一度たった一人、国家に雨を齎す巫女を選抜する為の施設だったとは・・。

もしかして、この孤児院のこれまでの厳しい規律や外出の少なさ、授業として行われていた事も実は養成所であった為なのか・・・?

巫女になるための国家施設というは俄かに信じがたいが、外に出れなかった事など符合してしまう点が多い・・。こんな嘘偽りを話すという事も考えにくい。

だけど、本当だとしたら・・・

この真実を聞かされたという事は、私達にはもうほんの少し前の平凡な日常は戻っては来ない事を指し示しているという事だ。

信頼していたシスターからの突然の告白に状況が飲み込めない私を他所に、他の女の子達はすでに巫女になる事が出来るという期待に胸躍らせてしまっている。

頭は状況を把握できないのに対し、私はいつの間にかシスターに向かい言葉を発していた。


「他の・・・・・ここに居る私達以外の人たちは、どうなるんですか・・・?」


シスターは震えるエリアを無感情なまま見つめ返した。


「・・・国内の他の孤児院へ移送します。早ければ明日の朝にもすぐに。」


「・・・・・・・・。」


今この場に居ない友達とは有無を言わさずに今生の別れをさせられるという事なのだろう。

私達、孤児には拒否する事も叶わない。

しかも皆が期待に満ち溢れた雰囲気の中ではシスターに否定の意見を発言する事も躊躇われ、それ以上言葉は出てこなかった。

だけど、噂に聞く雨乞いの巫女は、生涯神殿から出ることはなく神に仕え、一生独身のまま過ごさなければいけない・・・。

そうするとある矛盾が生じる。

この前の予知夢、私は将来結婚をする。王子となのかは定かではないが、少なくとも誰かと添い遂げるはずなのだ・・。

・・・やはり予知無は予知夢では無かったという事なのか・・・・。

ここではない場所での生活・見たことも無い景色や人々と出会うかもしれなかったのに。

でも・・・

それでも私はもうこの状況からは逃れられない。

覚悟を決める時は差し迫っている。

目を閉じ、最後にあの市場で出会った男の子、王子の姿を瞼の裏に思い描いた。


(・・・・きっと、もう二度とあの人とは会えない・・・。

私はもう巫女になるこの運命から逃れられない。それなら、決めないと・・・。)


最後に一緒に生活を共にした友人や彼の姿を脳裏に焼き付けた。

引き下がる道が無いのならば、立ち向かおう・・・。この運命に。


5へ・・・

ようやく帰りついたのはもう夕暮れ間近。

入り口の重い鉄扉を開け、地下へと続く螺旋階段を下る。

自分の足音だけが響く。

目の前の部屋に入ると、椅子に腰掛け佇んでいるシスターと目が合う。

真っ直ぐ見つめられる厳しい彼女の視線は外す事も適わぬほどの緊張が走る。



「遅くなりまして申し訳ありません。シスター」

「随分今日は時間が掛かったようですね。エリア。」



すみません。と頭を下げ、砂漠の砂嵐避けの大布を外す。

「実はちょうど今日王家の視察があったようで・・・目的の店に行く途中、人ごみに足を取られてしまいました。」


「そうですか・・。でも頼んでおいた物は全てしっかりあるようですし・・・・・。
・・・・・今回は大目に見ましょう。」


ありがとうございます。とまた一礼し、その部屋を出た。




(・・・・ふぅ・・・。)


また奥には長い廊下が続いており、自分の部屋はこの奥になる。


部屋に戻る途中、友人に出会う。



「エリア、遅かったね。シスターに咎められた・・?」

「ううん。ちゃんと話したから大丈夫よ。」



友人は安心してくれたようで、私もようやく私室に戻る事が出来た。

部屋に入るなり、狭い使い慣れたベッドにそのまま身体を思いっきり預けた。

すっかり疲労困憊だ・・・。長距離を歩き足はもうボロボロ。


誰にも怪しまれてはいないようだ・・。

ほっと安堵し、少しだけ目を閉じる。


この施設、ここは王都レスリアの孤児が住まう孤児院。王都の砦から離れた場所に建ち、人里・城下の社会からは離れている。

表向きの建物は3階建てだが、地下に広く施設を設け、多くの孤児の少女がここで生活をしている。

そしてここではシスターの命と院の規律は絶対だ。

私達はシスターからの指示が無ければ院からの外出が一切禁じられている。

そして外界の人間がこの施設内に入る事もまず無い。

その詳しい理由を私達が知る事は無いだろう。

しかしシスター・規律に逆らうという事は、自分の居場所が無くなり、路頭に迷うという事に等しい。

厳しい環境だと思うが、物づく頃から過ごしていればすっかり慣れてしまうものだ。

私は自分の親・家族を知らない。

私はここで拾われ、ここでずっと過ごしてきたから。

シスターが仰る所に因ると、私はこの孤児院の近くに在る王家の神殿に捨てられていたそうだ。シスターは私を今まで育ててくれた恩人であり、親でもある。

゛エリア″と名を与え、シスターの姓である゛ゲェイル″をも頂いた。

この私、゛エリア・ゲェイル″を育ててくれた。

この孤児院で私は15年間暮らしてきた。

ここの世界以外を私は何も知らない・・・・・。

エリアはそのままゆっくりと目を閉じ、まどろみのような深い眠りに落ちていく。

今度は予知夢ではなくて、楽しい夢が見たい・・・。

今日見た賑やかな市場や別世界の王家の人達が出てくるような夢をもう一度見たいな・・・。

4へ・・・














「わっ・・!!!!???」


「・・・きゃっ!!!」


額が何かに思いっきりぶつかるような衝撃を受ける。

その反動で地面に尻餅をつく様に激しく転んだ.



「い、いったぁ・・・!」


「・・・あ!!!ご、ごめんなさい・・!!大丈夫ですか・・?」



ようやく自分が角の向かいから走ってきた人とぶつかったのだと理解する。

ぶつかった相手はこちらを窺うように覗き込んでいるようだが、こちらは額が受けた衝撃の痛みに悶絶するしか出来ない。



「いたた・・・。・・・・こんな狭い所を走るなんて、おかしいでしょう・・・。」


「ご、ごめんなさい・・!!初めて来た場所で・・・あ、あの・・・」



一言文句を言ってやったら、さっさとここを離れ広場へ向かおう。

睨みつけながら、相手の顔を見上げると、



その人物は違和感だらけだった。

まずその男の子は見たことの無い気品溢れる服を身に纏い、腰には短刀が刺している。

顔立ちは自分と同年代のようだが、こんな人が街を歩いていたら浮いているだろう。

こんな本の中の登場人物のような格好は生まれて初めて見た。

けど、実際の彼は自分の様子をやや萎縮しながら窺うばかりであった。



「あ、あの・・・??」


「・・・あ、あなた、王族関係の人なの?」



考えられる可能性はしれしかない。

彼がその瞬間一瞬肩を強張らせたようにしたのを見逃さなかった。



「えっと・・・まあ、そんな所だよ・・・・。あー・・・・ん・・?ぅわっ!!!!」


「え?」



目を泳がしていた彼はその背後に何かを発見したようで、かなり驚いていた。

何か遠くの方から大人数の声が近づいて来るように聞こえてくる。



「と、とりあえず、先ほどは大変失礼をしました!ご無礼をどうかお許し下さい。では!!!」


「え?え・・・?はぁ・・」



物凄い速さで彼女がやって来た方向に走り、また別の角を曲がり姿を消した。

しばらく呆然とその場で座り込んだまま動けずにいると、先ほどの男を追って来たのか数人の警備兵士が走って来る。



「お、おい!そこの君っ!!ここに少年が走って来なかったかい?!」


「え・・えっと、・・・・む、向こうに走って行った。」



後ろの奥の路地を指差すと、兵士はその方向へ真っ直ぐ走り去った。

彼らが居なくなるのを確認して、落ちてしまった荷物を拾い上げスカートについた土を払って立ち上がる。

そしてまた歩き出した。



(・・・・嘘ついちゃった。まぁ・・・いっか。 私にはきっと関係無い人達とその出来事なんだろうなぁ・・・・)



しばらく歩くと、大勢の人だかりを見つけた。ようやく大広場へ来れたようだ。

噴水のある広場の中心へ続く通りに出たようだった。右の奥の方に人々の頭の上に噴水が少し確認出来る。

王家の一団はこの通りから噴水前まで行進し、広場で国王による演説等があるそうだ。

彼女には演説や王家に仕える官僚等は興味は無かった。

ただ一目王家の人間の姿を確認する。それが今日の目的なのだ。





私には、人とは違う力が一つだけある・・。

それは・・予知の力。近い将来の映像を眠っている時に予知夢として見る。

それが私の予知能力。





それを身をもって体感したのは5歳位の時だった。

昔から変な夢を見て、それが現実になるという不思議な事は度々あったが、周りの大人は幼い私の言う事をまともに受け止める事などなかった。

変な夢を見て少し怖い思いをするだけ。そう思い込んでいた。

だけど、5歳になった私はある日、大地震で城下街が崩れ去る映像の夢を見た。

その夢はそれから1週間後に起こったレスリア史上とされる大震災の予知だった。

しかし私はその当時、夢に見ていた大地震の事など忘れて街外れの友達の家で遊んでいた。

その大地震は昼間に突如起こった。

私と友達は家の外に居た為、幸い倒壊に巻き込まれる事は無かったが、彼女の家と両親は無残にも瓦礫と化した。

そして私たちは地震が収まり、街へ助けを求めに行った。

だけどほとんどの家屋・建物は同じように崩れ、辺りは土煙と火事、そして生臭いに臭いが街を支配していたのを今でも鮮明に覚えている。

私はそれからも時々ではあるが、予知夢を見続けている。

そして気付いた事がある。

私が夢にみる予知は国に起きる事柄ばかりであると。(私個人の未来を予知した事は無い)

私のこの力の事は誰にも打ち明けてはいない。

多くの人間にもし広まってしまうと、なんだか良くない事が起きるような・・・そんな気がするから。

そして私は、少し前にまた夢を見た。

それは私がレンジェロ家の王子と結ばれる、という夢・・・。

つまり自分が王妃になるという事だった。

正直信じがたい。今までに見てきた予知夢は事件のようなものが殆どで、私自身の将来は予知した事が無い。

しかも私はこの国でも貧しい身分に属する人間だ。有り得ないのではないか・・・。

でももし予知夢ではないとしても、私はそれを証明するために確かめなければいけない。

真相を突き止められるのは、自分自身しか居ないのだから。



しばらくすると遠くの方から歓声のようなどよめきが聞こえてくる。

ようやく視察団の行進が始まったようだ。

沢山の大人たちより身長が足りないため、懸命に足を伸ばした。


せめて・・・ほんの一目でいいから・・・!王子だけでも確かめないと・・・!)

だけど、本当に顔も何も知らない王子を見て予知夢が正夢かどうか分かるのだろうか・・・?

でも、それでも・・・何か言い表せない激しい感情だけが既に彼女を動かしている。

靴など履いていない裸足の足を大人達にいくら踏まれようが、気にも留めず。



まだここからでは中心のレンジェロ家の人間は警備兵に囲まれ姿を捉える事が出来ない。


(・・・もう少し・・・!!)



一団が目の前を通過するという所でようやく、白馬に跨った国王達の姿を見る事が出来た。

先頭はガルフォルド国王。その後ろに続く、一団の中で一人だけ若い、王子と見られる人物

を視界に捉えた。


(・・・・・・え?)


一瞬ではあるが、確かにそれは先程路地裏でぶつかった男の子だった。

あの時は間近で見たのに、今は同じ人物がとても遠くに、そして大きな存在に感じられる。


(さっきの・・・あの人???・・・・あの人が王子だったの・・・???)


呆然と立ち尽す。

自分の確かめたい事はひとまず確認出来た訳だが・・・・。

先程ぶつけられた時の態度は正直、王子様とは言い難い。

もし自分の予知無が現実のものになるとすれば、彼が・・・・・・・・・・・・


野次馬が移動し始めても彼女はしばらくその場から動けなかった。