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自社製作小説置き倉庫(詳細は説明欄をお読みください)

☆小説の原材料名:ツンデレ要素多(ファンタジー・現代物)・面倒臭い人多・不器用性質多・普通じゃない恋愛多・っていうか人間の人生に普通なんてもの自体無いよね・てか人生は生き地獄だし。
それでも人を求めてしまう。

それから、数ヶ月が過ぎた・・・

数日から数週間置きにエリアとガイルは夜中にあの演劇場で落ち合い、さまざまな事を語り合ったり、討論をしたり、喧嘩をしたり・・・誰にも知られずに同じ時を過ごす。

そんな生活が続いた。



またいつもの様に夜が明ける前に二人は神殿近くで別れる。



「じゃあね。また6日後に・・・」



「ああ・・・。」



ガイルの乗る馬が暗闇に消えていくのをただ眺めて、朝が来るのを待つこの時はとても苦しい・・・。

その去っていく手を掴んでしまえたらと・・何度も欲深い想いに駆られ、自分を恥じた。

一緒に居る充実した一時が積み重なる度に、あの背中への想いも募っていく・・・。

それは決して許される事ではないのに・・・。

この神殿から逃げる事は自身の使命が許さないのだから。

でも愛しいと思う気持ちは、神へ仕える巫女としての使命と共存し、そして衝突する。

またこの気持ちを打ち明けてしまうなんて事があろうものなら、彼はきっと拒絶するだろう・・・。

彼の悲願は、雨を齎し国を救う巫女の誕生。巫女候補生の自分でなければ彼は自分と友人になる事などなかった。

この気持ちは彼への裏切りとなるだろう。

だから言わない。彼の悲願を叶える事こそ今の自分の願いなのだ。

私は今日も神の元へ戻る・・・。一刻も早く願いを叶える為にも。




















それから6日後・・いつもの約束の日。

エリアは今日もいつもの様に、人が寝静まり静かな砂漠に出て演劇場へ向かった。

お気に入りの庭園に入ると、まだガイルの姿は無かった。

庭園を散策しながらしばらく待っていたが、なかなか現れない。

演劇場に入って見ても、人の気配は無い。

寒さを凌ぐため劇場の椅子に座り、隠しておいた毛布に包まり眠気を堪えながら待つがガイルは一向に来ない。

やがて夜明けが近づいて来てしまう。



(・・・・・ガイル・・・・?? 一体どうしたんだろう・・・、こんな事今までなかったのに・・・・)



外に出ても生き物の気配すら無かった。ガイルの馬の足跡なども見当たらない。



(ガイル・・何かあったの・・・・??)



不安に襲われるが、ガイルと連絡を取る術などある筈がない。

夜明けのギリギリまで待つが今日は結局ガイルは来なかった。



翌日、またエリアはガイルを演劇場で待つことにした。

昨日より外気の寒さは和らぎ、今日は外の景色がよく見える庭園の中で待った。

ガラス張りの為、周りだけでなく天井から空を仰ぐことも出来る。

普段はあまり空を見ることが出来ない為、ここに居れば一晩中でも飽きる事はないだろう。

しかし昨日程の寒さではないとはいえ、息を吐くと白く見える。



(・・・・・・・きっと何かあって今は来られないんだろう・・・。それが終わればきっと来てくれる・・・。)



彼が向こうで何をしているかなど全く分からない。

けど、必ずまた来てくれると信じている、いや信じていたかった。



(・・・会いたいよ、ガイル・・・。ほんの少しでもいいから・・・)



空を仰ぐと無数の星が瞬いている。

初めてガイルにここへ連れて来て貰った日のような星空だった。

何がなんだか分からないまま神殿から連れて来られた時は、とてつもなく広い世界へ来てしまったかのように戸惑って、悲しくて、嬉しかった。

巫女になる覚悟を決めて神殿に入ったのに、神殿での生活に疲弊していた私に生きる希望と見出してくれた。

巫女になれると言ってくれた。友人になってくれると言ってくれた・・。

ガイルの事ばかり頭に浮かんできて、また愛しさが込み上げて来る。

いつの間にか空を見上げながら涙が溢れていた。

誰かを好きになる事は綺麗な事ばかりではない。想えば思うほどこんなにも苦しく悲しい。

距離が近くなればなるほど想いが募り、想いが強くなるほど卑しく、悲しい。

ガイルに会いたいと思うのは友人だからなどではない。

もう後戻りなど出来ないほどにガイルへの気持ちは強くなっていた。







































真夜中の演劇場は静寂に包まれ、暗く静かで生き物の鼓動・風の音すら遠くに聞こえる。

気温も震える程に寒く冷え切っていた。

持って来た毛布に包まって一人、天井から零れる月明かりの中星空を仰いでいた。

こうして待っていると時々不安になる・・・。

誰も来ないのではないかと。

全て幼き私の夢で、目が覚めるとまたあの孤児院の石の壁が目の前にあるような・・・

こうしている事自体まどろみの中に居るような夢心地の感覚に溺れる。

重くなる瞼が意思とは裏腹に視界を閉じようとする。





「・・・・・エリア・・!」


はっと、目を覚ます。

驚いて身体を起すと、私を覗き込むガイルが居た。


「こんな所で眠ると死ぬぞ・・。」


「あれ、私・・寝ていた・・?」


ガイルは頷く。待っている間にいつの間にか寝落ちしてしまっていたようだ。


「すまない。職務がなかなか終わらずに遅くなった・・。」


「遅いです・・・。と言っても、仕事ならならしょうがないね。今回は許します。」


エリアは冗談混じりに笑って誤魔化したが、ガイルはエリアを見て申し訳無さそうなまま横に腰掛ける。


「最近・・また修行、厳しくなっているんだろう。顔、前よりやつれている・・。」


「・・・・・・・・・・。」




前に会ったのが5日前になるが、確かにここ数日で修行の厳しさの度合いは増していた。


「身体が辛ければ約束の日とはいえ無理はしなくても・・・」


「私は大丈夫・・。それに明日はシスターが外出するらしいから、起床時間が遅いの。朝休めるから心配しなくて大丈夫。」


ガイルは厳しい表情のまま、何か少し考え込んで、


「エリア、大丈夫という事で自分に暗示を掛け様としているんじゃないか?それが悪いとは言えないが、心配するなという言葉は言わない方がいい。」


「・・・私は自分で自分の事くらい分かっています。その上でそう言っているのです。それに心配しなくていいというのは貴方が申し訳無さそうにしているからです。」


「・・・・・・・・・。」


「・・・・・・・・・。」



互いが意見を曲げない性質である為か顔を合わせればこうして意見が対立する事がしばしばであった。

平行線が続き、埒が開かなくなるが、しかし最初の頃の喧嘩の後、これを解消する為にお互いが制約を結んでいた。


「・・・・・でも心配してくれてありがとう。顔を見ただけでそれを判断出来る所は素晴らしいと思います。」


「・・・・・先の発言は私が言いすぎた。悪かった。だけど無理だけはして欲しくない・・・」


自分達の言い分を通す分、相手に対する素直な気持ちもしっかい言い合おうと決めた。

それが友人にたいする礼儀だと。

互いが平等であろうとする、二人のやり方だった。

まだぎこちないが、必ず約束は守る。それも制約である。


「・・・しかし、」


「??」


「顔色が優れていないのだから、心配くらいするだろう・・・。友人になれと言ったのはそっちだ。・・・・・友の心配をして何が悪い。」


「ふふ・・・。そうだね。私も逆だったらきっとするなと言われても心配してしまうね。ごめん。」


友の誓いをした二人はお互いの時間が取れる時にこうして抜け出し演劇場で語り合うのが習慣となっていた。

話の内容など、傍から見れば雑談である。

今日の出来事、過去の話、見たもの、聞いたものの話、くだらない話題や学習の話題など。

だがそんな時間が貴重なものだった。

それぞれ生きている環境が違えど、限られた人との触れ合いしか出来ぬ場に居た。

二人の価値観の対立は確実に世界を見る目を広げていた。


「ところで今日は何の仕事に追われていたの?」


「・・・レスリアの治水政策の補助だ。父や側近の者達では追いつかなくなって・・・俺の所まで職務の手伝いが回ってきた。」


「治水・・・・・」


この国の水問題は巫女の責任問題そのものだ。

自分達が早く一人前に認められ、雨乞いを成功させなければ、王家の治水事業が進められても時間の問題である。


「本格的にレスリアの水源は底を付く勢いだ・・。国外のオアシスの水でも足りるかどうか分からない。」


ガイルはうな垂れながら話していたが、ハッとエリアに気付くように


「あ・・すまない。こんな深刻な話を聞いても気分が悪いだろう・・。」


「・・そんな事はない。大切な事でしょ。出来ればもっと聞きたい。教えて。」


それから二人は夜が明ける直前まで水資源の調達方法について話し合っていた。

夜が明けるとシスターや王宮の朝一番の侍女らが活動し始めてしまう。

それまでには二人は何事も無かったように自分の部屋に戻っていなければならなかった。

ガイルは早馬でエリアを神殿入り口の見つからないギリギリの所まで送り届けて行く。


「それじゃあ、今度は6日後・・だね。」


「ああ。頑張れよ。」


「うん。そっちこそ。」


ガイルは最後に目を細め微笑んでエリアを別れ、馬を走らせ王宮へと戻っていく。

まだ暗い砂漠の闇の彼方へその姿が見えなくなるまでエリアは見送った。

ガイルにこの先幸多からん事を祈りながら・・・

雨乞いの巫女の存在や情報を知る者は王宮内でも王族を除けば、少数の官僚・神官しか居ない。

しかし上級官の間ではもう密やかではあるが、大変な噂になり裏で大問題に発展している。

その情報は既に国王の耳にも届いており、自分ですら最近その噂を聞きつけた。

数人の官僚が職務室で話している所を盗み聞きしてだが・・・。

最近の国王の疲労困憊の原因は恐らくこれだろう・・・。

ただでさえ、以前より国の干ばつは深刻な問題である。

巫女が成長し雨乞いを成功させる前に全滅しては、次の巫女誕生までには国が滅ぶだろう・・・。

しかしこれに自分が表立って動く事は、まだ政に参政出来ていない自分では周囲の反感を買うのが関の山。

それでも国王にとってのこの大問題を自分の手で解決してみせたい。

父の役に立ちたい。認められたい。そして父の心労も減るだろう・・。

・・・そうすれば自分の力を認めてくれる。

ただそれだけが今の自分を奮い立たせる。

参政出来ずとはいえ、自分の立場を利用し影ながら動くと事は出来る。

顔さえ隠せばまだ外出も好きな様に出来る。

とにかくまずは原因である巫女に接触する必要がある・・。

大人数に会うとなると、流石にシスターに見つかる可能性がある。そうなると王宮の人間に知らてしまう。

一人に限定し、なんとか巫女を脱落させないよう働きかけなければ。

時間は無い。もう少し上級官周辺で情報を集め、その後に早急に動かねば・・






今雨乞いの神殿に残る、活動可能な巫女候補生は既に5人となっていた。

彼女らが孤児院から神殿に召し出されて3ヶ月が過ぎようとしている。

しかし年々、巫女候補生の犠牲は多くなる一方であった。

そもそも雨乞いの巫女というものは代々、大勢の中の1・2人だけしか民衆のまえに姿を現さない。

厳しい修行、環境下でそれこそ生き残った者のみ、本当の巫女として社会的に認められる。

しかし1・2人の巫女の下に大勢の犠牲がある事を知る者はほんの僅かであった。

そのたった一人の巫女は大昔からこう呼ばれている。


゛神に選ばれし子″


と。

一体どこに居るというのだろう。神に愛されし子供は。

そのたった一滴があれば、この乾ききった広大な砂漠を潤す事ができるというのに。

早く・・・早くなんとかしないと・・・。











それから数日が過ぎた。

ある日、修行を終えて自室に戻って休んでいると、格子のついた窓から何かの叩くような音を聞き外を覗くとガイル王子が居た。

あの時私に協力すると言ったのは本当の事のようだ。

夜も更け、真っ暗な神殿を抜け出すとガイルが待っていてくれた。

私達は前と同じ演劇場の庭園に行き、話し合う事にした。

でも大体、協力してくれると言っても巫女修行には力添え出来ないし、どうするのだろう・・。

と、思っていたらガイルは私に、修行に明け暮れるが自分は何をすれば良いかと尋ねられた。

私は毎日の辛い修行にはガイルの出来ることなんて何も無いって言ってやったわ・・。

ガイルは少々驚いていたけど、そんなキッパリと言う私に。

でも一つだけどうしても頼みたい事があった。

それは私のあの昔に見た予知夢なんか関係ない。今の私が目の前に居るガイルに思う事・・・・。


「私の良き友人になって欲しい。」


ただそれだけ。望むのはそれだけ。

私には孤児院・神殿で共に同じ境遇の同い年の女の子の友人しか居なかった。

皆と仲は良かった。でも今となって思えば、それは皆お互いに同情し合い、慰め合うように共感し合っていただけなのかもしれない。

今私は価値観も育った環境も性別も何もかも違う、ガイルと友になりたい。

もっと色んな世界を知りたい。もっと外の事、社会の事、たくさん貴方から学びたい。

そして貴方の事が知りたい。

その想いを話したら、少しだけガイルは照れくさそうに


「そんな事で良いなら・・・。」


と、はっきり返事はしてくれなかったけど。

でも貴方が居てくれるなら頑張れそうな気がする。

たくさん色んな事を話して、色んな事を教え合って、時には意見が食い違ったっていい。

たとえ僅かな時間でも一緒に頑張っていきたい。側に居たい・・・

今、貴方と今この時をこれからを生きてゆきたいの。

そうすればいつかきっと貴方の願いも叶えてあげられるかな・・・・。



10へ・・・

私たちは夜の暗闇に紛れて神殿を抜け出した。

地下神殿を這い出でて、砂漠の真ん中。満点の星空の下で見つからないようにただ走った。

神殿から少し行くと演劇場がある。

この演劇場はドーム型の透き通るガラスで天井が作られている。

正面入り口には室内庭園があり、その奥に入ると大きな舞台劇場がある。

公共の建築物になる為、劇場入り口以外は閉まってはいない。

私たちは身を隠すように庭園へ逃げ込んだ。


「ここなら大丈夫だろう・・・」


「ええ・・。ところで、ここは・・・?」


エリアの目の前には一面色取り取りに咲き乱れる花壇。噴水と水路が巡らされた花と水で形作られた庭園は言葉を失う程に美しかった。


「ここは俺の父ガルフォルド王が造った演劇場の庭園だよ。最近ようやく完成して・・・・」


「・・・・・とても綺麗・・・。こんな庭園が神殿のすぐ近くにあったなんて・・」


ガラスで張られた天井からは月明かりが零れ、満天に輝く星が瞬いていた。


「・・・・・こんな場所が作られていた事なんて気付かなかった・・・。」


知らず知らずに涙が零れていた。

自分達が閉ざされた世界に居た。思い知らされてしまう。

窮屈なあの神殿内では外界の些細な情報させ入ってこないのだ。

こんなにも美しい景色させ見る事が出来ないこの生活は一体何なのだろうか・・・。


「やはり噂は本当だったんだな・・」


「え・・・・・?」


「王宮で神官達が話しているのを・・その、小耳に挟んで・・。雨乞いの神殿から今年の巫女達の中から脱走者が相次いでいると・・・。」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」


やはり問題が表面化してきている。


「その噂を聞いて、心配になっていたんだ。君達が無事なのかどうか・・・」


絶望の淵に立たされていたような状況に居たエリアにとっては、こんな風に心配りをされる事にすらもう心折れてしまいそうな程であった。

強張る身体を押さえ、震えそうな声で問いかける。


「その為にわざわざ宮殿を抜け出して・・・・?こんな人目を盗んでまで・・・」


分からなかった。何故自分のために・・。そして何故自分であるのかも。


「・・・・・・・・・・。」


ガイルは目を伏せ、少し考えて、


「雨乞いの巫女を救う事は、この国の将来を救う事になる。このまま日照りが続くようであれば、民衆も国を捨てて逃亡するだろう・・・。見す見すこの危機を放っておく事はできない。」


「・・・・・。では、何故私だったの・・?」


「・・・・それは・・・・自分でも良く分からない・・・。多分、君に本物の巫女の素質があるように思えた・・からだと思う・・。」


伏せていた視線が自分に向かって向けられた。

ただ真っ直ぐな目にその視線を外す事は出来なかった。


「君を初めて見た顔合わせの儀の時、他の巫女とは違う気を感じたんだ・・・。君ならこの国を救う本物の巫女になれるだろうと、確信した。」


「・・・・・・・・・私が・・・・」


その言葉が自分の事を言っているようにはどうしても思えない。

この環境で死の恐怖に怯え、一筋の希望さえ今はもう見出せないのに・・・?

その真っ直ぐな言葉へ返す言葉が思い付かず、俯く事しか出来なくなる・・・

ガイルはその様子を見て一歩歩み寄り、エリアの握り拳をぎこちなさそうにそっと取った。


「今の修行が辛く苦しいものでも、誰かと分かち合えれば乗り越えられるだろう・・。君に巫女になる覚悟があるなら、俺は協力する。この国を救う為に俺も手伝おう・・。」


ふと俯くエリアを見やると、両目からは大粒の涙が零れ落ち、頬を濡らしていた。

繋いでいた両手は震え、その鼓動が伝わってくる。


「・・・・・私、死んでしまうかと・・・・・巫女になる覚悟を決めていても、他の皆のように暗い所で何時かきっとあの場所で死ぬんだって・・思った・・・。・・・・・ありがとう・・・。ありがとう・・・・・」


ガイルはしばらくその手を離さず、ただ隣に寄り添った。

今この少しの間でも泣くことが出来れば、それで良い・・・。


9へ・・・・

あの人だ・・・・・!!

一目見てすぐに分かった。

三年前、私が市場で予知無を確かめる為出掛け、偶然出会った王子だった。外見はすっかり大人の男性に近づきつつある青年に成長している。

あれから伸びたであろう後ろ髪を束ねて、王族衣装に身を包んだ姿は王子としての風格を身に付けているようにも見える。

また再会出来るとは・・・!

巫女に選ばれたあの日、私はもう二度と会えない事を覚悟していた。

目頭が熱くなり、涙が零れそうになるが、袖の中で隠した握り拳で堪えた。

しかし向こうは自分の事には気付いていないようで、興味無さそうに話を聞いているだけである。

一番最後に私の名を呼ばれ、やっと彼も顔を上げた。

一度ほんの少し会っただけの私の事はもう忘れているのか、初めて私を見た時と同じような目をしている。

・・・やはり、彼は私の事は露ほどにも覚えていないのだろう。

再会は嬉しいはずなのに、何故か胸がほんの少し痛む・・・。

この三年間・・・彼の存在を忘れようと思った。巫女になる自分にとって枷になるだけ・・・と。

でもずっと心のどこかで私は彼との再会を夢見ずにはいられなかった。

どうしても忘れられなかった。

しかし今、この場で再会出来て、気付いた。

再び姿を見る事が出来た事で、喜び・悲しみの複雑な想いを募らせている自分自身が居る。

3年もの間、忘れる事が出来なかった。

いつの間にか私はこんなにも、彼の事を好きになってしまっていたんだ・・・

胸が痛くて苦しい。

初めて恋をしていた・・・。








それから私は正式に雨乞いの巫女の一人に選ばれ、レンジェロ家宮殿の神殿に入る事となった。

しかし新たな生活は想像以上に過酷であった。

孤児院以上に厳しい戒律に支配されたこの神殿は、地獄であった。

外界への外出は絶対に出来ない。巫女はこの神殿敷地内で一生を過ごす事になる。

それは巫女が神へその身の全てを捧げる為、純潔でなければならない。

この狭い神殿で永遠に続くかのような時を過ごさなければいけない。

それだけでもう心を病んでしまった巫女も居る。

外界から隔離された地下神殿、厳しい修行、戒律の支配、貧しい食事、生活、

全てが今となっては私を苦しめる鎖のよう・・・。

共に巫女となった友人は既に神殿からの逃亡を図り彼女の安否は、今はもう分からない。

恐らくは巫女や神殿内部機密の保全の為に、口封じをされた可能性が高い。

他の者は精神状態を病み、とても目を当てられたものではない・・・。

ここは中途半端な者が来るべきではなかったんだ・・・。

ここは牢獄だ。

気付いた時にはもう遅かった・・・。

私はどうなってしまうのだろう。

心無き者になるか、朽ち果てていくのか。

ああ・・・選ばれなかった者達が羨ましい。この生き地獄を知らずに済んだのだから・・。

冷たく暗い部屋も、暖かさの無いベットも全て苦痛でしかない。

目を閉じて、出来れば二度と目を覚まさなければ・・・


(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?)


暗闇の中で戸を叩く小さな音が聞こえた。

ベットから力無く立ち上がり、戸を少し開けて外を見る。

廊下には友人の姿があった。彼女は確か今晩の神殿正門の見張り役になっていたはず・・

同じ様に血色が無い彼女は、微笑みながら小声で耳打ちした。


「ご指名だよ・・」


「・・・・・・・・???」


音がしないよう戸を開けて外を見ると、


「・・・・・・!!?? えっ・・・!嘘っ・・!!」


廊下に立っていたガイルは案内した友人とエリアに一礼した。


「夜分遅くに申し訳ない。今少し話せるか。」



8へ・・・