前回は力関係について触れましたが、今回は力関係に重要な間合いです。
間合いというと感覚的な物と感じるかもしれませんが、
きっちりとした理論に基づいています。
間合いを辞書で調べると、「隔たり」と出てきます。
では隔たりは? 「間に距離があって、離れること」とあります。
つまり物と物との距離空間のことですね。
このあたりは、本来、平面上で見ると感覚的にもわかりやすい部分なのですが、
意外と無頓着になってしまう傾向があります。
これは「空間の大切さを知らないから」とも言えるでしょう。
前回は力と力を相殺して均衡を保つことを目的としてレイアウトすると述べました。
見えない力を相殺するには、「相殺する空間」が必要です。
力というのは、力を発する物の周囲に「力場」という物を発生させます。
アニメや漫画風に言えば、「気を纏う」といった感じでしょうか。
この力場も力の方向を持っていて、周囲360度方向に向いています。
つまり、物の周囲に一定の力の流れがあり、その中で突出した力が向いている方向があるということになります。
前回はその突出した力を互いに相殺する部分を解説しました。
もうお分かりだと思いますが、この力場の力を相殺、または逃がすのが間合いであり、余白としての空間です。
力場というのは基本的に突出した部分意外は均等です。
故に上下左右と余白をそろえる事が大切になってきます。
あくまでも突出した部分がない場合です。これは力の偏りがない事を意味しています。
少しでも角度がつけば、少なからず力場のバランスが変動して力が偏ります。
これはもう力場ではなく力の方向です。
良い例では、文字のイタリック。
通常の文字では力場は均等ですが、斜めになっていることで、たった1文字でも偏った力が発生しています。
では、実際にはどれ位の余白を持てばいいのか?
これはある程度感覚的な要素も含みますが、原則として長辺を10分割、もしくは11分割をした長さと思ってください。ただし、その距離が最低ラインと認識してください。この距離から内側に入ると「相殺」が「衝突」に変わり、窮屈に感じてきます。
これまでは面と面だけの間合いでした。
では、偏った力同士がぶつかった場合はどうでしょうか。
全く同じ形状であれば、当然力は簡単に相殺されます。
お互いに力場のスペースだけ取ってあげれば十分です。
では異なった力の強さが向き合った時はどうでしょうか。
明らかに左の方が力が鋭く、点で攻めてきています。
反対に右側は点ではあるものの、面が強くなっています。
紙のスペースは無限にあるわけではなく、限られたスペースで相殺するためには、
空間の図形が役に立ちます。
図の赤い部分を見てください。歪んだ台形になっています。
同じ形状同士の場合、この台形が歪みのない台形になりますが、
この台形を比率を保ったままずらしたところが、相殺できる頂点の位置です。
ちなみに、力場と力場の間に空間があるのは、感覚的な部分です。
最低限の余白では心もとなく、ゆったりした空間にはならないため、やや多めに取ってあります。
前回の相殺と今回の間合いを駆使すれば、レイアウトでバランスが崩れるといったことは極端に少なくなります。
ただ、文字列も1文字毎に力場を持っているという事には注意が必要です。
通常の文字では力の偏りはありませんが、紙と同じように全てが面の力をもっています。
つまり、■ということですね。
このエッジ同士が隣接して面と面が合わさると、「衝突はせずに融合」される特徴を持っています。
元々向かう力がない物ですから、当然ではあるのですが・・・
これが、文字が並ぶと「ブロック」になり、読み難くなる所以です。
融合してしまって、視覚的に境界が分かり難くなるんですね。
その点、英文などは良く考えられていると思います。単語と単語にスペースを設けることで、融合させずに単語を一つのブロックとして自然と認識出来る様になっています。
日本語の場合はそういった文化はないため、文字の大きさを部分的に変更したり、文字間隔を多目にとったりと試行錯誤が必要になってきますね。
ともあれ、力と間合いは、基礎でもあり奥義でもあります。
極めれば極めるほどレイアウトの精度は飛躍的に上がっていきますので、
日々意識することをお勧めします。