Hidden Enemy39 | The Lilies And Roses

The Lilies And Roses

当ブログはスキップビートの二次小説ブログです。
作者様・出版社様には一切関係はございません。
また文章の無断転載等はご遠慮下さい。

自由にのんびりと書きたいお話を載せていきたいと思います。
Laylaの完全自己満足&文章力UPの為の修行場です(´∀`)

※これからハッピーエンドに向けて”久遠とティナが心の闇、傷を乗り越えていく”というのがテーマになります。

中には”リックの死”に対して重たくて辛い部分も出て来ます。
最愛の恋人を突然失ってしまったティナの悲痛な想いも、客観的に優しい目で見守っていて頂ければ…と思います。






ティナが…こっちに向かって

歩いて来るのが分かった瞬間――…。

ドクン… ドクン…
ドクン… ドクン…

自分の心臓の音が耳に響き始め…

そして 今まで穏やかだった風は…少しずつ強く吹き始めた――…。



* * *



ティナはリックの墓の近くまでやって来た所で…足を止めた。どうやら遠くから久遠の姿が確認出来ていたようだった。

驚く様子も無く…暫く無言のままでティナは静かに3メートルくらい先から久遠を見つめていた。

「………………………………………………。」

久遠の頭の中に…リックが車に轢かれて泣き叫んでいた時のティナの記憶が鮮明に蘇って来る――…。


「...Unforgivable...」 (…許さない)

「...I won't forgive you until the day you die.」
(…アンタなんて一生 死んでも許さない)

「If only he had nothing to do with you.... 」
(アンタになんか関わらなきゃ…)

「Then, Rick wouldn't have to die ! !」
(リックは死なずに済んだのよ!!)

「You murderer...! ! You should have died in place of him ! !」
(人殺し…っ! リックの代わりにアンタが死になさいよ!!)

「―Murderer!!!! 」 (――人殺し!!ムゥドゥルゥァ~)
(※仲.村.佳.樹先生作 ス.キ.ッ.プ ビ.ー.ト28巻P61~63引用 白.泉.社)




少し遠くの方から久遠の事を見つめている女性と…彼の緊張した雰囲気に…キョーコは直感的に”彼女はティナである”と悟った。

そして…暫く続いていた沈黙を打ち破り…ティナが静かに口を開いた…。

「…………………………………。久遠………。」

「…………………………………。ティナ……まさか…今日…ここで君と再会するとは…思っていなかった……。何ていう偶然……!」

「…偶然じゃないわ――…。」

ティナは下を向いたまま…小さな声で話を続けた。長い鍔の帽子を被っている為…下を向いてしまうと彼女の顔の表情は確認出来ない。

「…………………え…?」

「…私は…久遠に会いに来たの……。クーから連絡をもらって――…。」

「………………………。父さんから…?」

「………そうよ…。」

…どうして父さんから――…? ティナに…?



リックの腕時計の針は2時13分を過ぎ…尚も未来へ向かって静かに時を刻み続けていた――…。





「………………………。アナタの両親は…リックが死んでから…ずっと私の事を気に掛けてくれていたの…。」

「父さんと母さんが…ティナの事を…?」

本当に…?

そんな話…今まで一度も聞いた事がない――…。


* *


最初の頃は…彼らの顔すら見たくも無くて…家に訪れて来る彼らを泣き叫びながら玄関先で追い返していた――…。

『…ティナ……。』

「一体何しに来たんですか……!!今は誰にも会いたくないのッ…!特に久遠の両親である貴方達には……!!」

「帰って…!帰ってよ……っ!!そしてもう二度と来ないで…!」

『………………………。』

自分がどれだけ相手に失礼で…酷い事をしているのかは分かってはいたけれど…

それでも…リックを失った悲しみの余り…感情的になって自分を抑える事はどうしても出来なかった――…。

…玄関の扉の向こう側で…ジュリが泣いていて…クーがそれを慰めている声が僅かに聞こえていた…。

『…………うっ……っ……………っ』

『…泣かないで…ジュリ…。今…1番辛いのはティナ自身なんだ…。だから…俺達は…長い目で彼女を見守っていこう…?』

『…………そうね…。ティナと…久遠の為にも…私はもっとしっかりしなくちゃ…ダメね…。』

その後…あの人達は…何回も何回も…。追い返されるの分かっていても…忙しい仕事の合間に…私の様子を見に来てくれた…。

そして…嘆き悲しむ私を…ただ抱き締めて…一緒に泣いてくれた――…。

「うっ…うっ……寂しいの……リックに逢いたい……っ…ねぇ…どうして…?私を置いて逝ってしまったの――…?」

『…ティナ――…。』

…私が…泣き疲れて…眠ってしまうまで…そっと優しく背中を摩り続けてくれた――…。



* *



「……………………………。そう…だったんだ…?」

父さん…母さん――…。

ずっとティナの傍で…彼女を支えてくれていたの……?

俺の全く知らない所で――…?

感謝しても…しきれない――…。

久遠の感情は高ぶり…瞳からはうっすらと涙が滲んでいた…。







一方…ユリアは知らない人がやって来て…最初はキョーコの脚に隠れて大人しくしていたが、再びコーンの石で遊び出した。

「ふふふ…!こぉ~んの まほうでぇ~♪」

そして ユリアはキョーコから離れて広い芝生が広がっている緩やかな坂の方へと突然走り出した。

「あ…!ダメよ…ゆりちゃん…!1人で遠くの方へ行っちゃ…!戻っておいでー!」

しかし彼女はキョーコの注意を聞かずに石を見つめながら…芝生の上を走り回った。

「きゃははーーーー!!」

「…もう…そんなに坂を走り回ったら転んじゃうわよー?」

キョーコは仕方なく連れ戻そうとユリアの方へと向かおうとした。

その瞬間――…。

「きゃぁっ!」

ユリアは芝生の上で転んでしまい、手に持っていた”アイオライトの石”が緩やかな下り坂をコロコロと転がっていった。

幸いな事に芝生がクッションの役割を果たし、少しびっくりはしたものの…痛くはなかったユリアは直ぐに起き上がり、転がっていく大切な石を追い掛け出した。

「まってぇーー!こーんの石ーー!!」

そして久遠はその様子をティナの前で少しハラハラしながら見守っていたが…次の瞬間…有り得ない光景を…彼は見る事となった。


…え……?

…うそ……だろ…?


どうして…彼が…ここに…?
いや…有り得ない…!俺は…幻を見ているのか…?

ドクン… ドクン…
ドクン… ドクン…

久遠の心臓の音が…再び彼の耳に響き始める――…。





緩やかな芝生の坂の下で…花束を持った少年が…リックと久遠の”親友の証”である石を拾い、ユリアの方へと近付いて来た――…。

「…はい…コレ…君の石だね…?転んじゃったみたいだけど…大丈夫だった…?」

少年はユリアに石を返すと…転んで少し汚れてしまった彼女の服をそっと はたいて優しい笑顔を見せた。

「…………………………。ありがと…」

ユリアは少し照れながら受け取った石を無事かどうか確認するように、太陽の光にかざした。

「…その石…光で色が紫に変わるんだね」

「…うん…!この石…たいせつな”たからもの”なの。」

ユリアは屈託のない笑顔を少年に見せながら…コーンの魔法ごっこである紫色の光を楽しんでいた。

「へえ…そうなんだ…!偶然だね…。俺も…君と全く”同じ石”を大切な”宝物”にしているんだ――…。」

少年はそう言うと…ポケットから”アイオライトの石”を取り出し、ユリアに見せた。

「あ!ほんと!こーんの石と おなじだぁーー!!」

「うん…お揃いだね!実はこの石も…光に当てると紫色になるんだよ…。見てて――…。」

少年は…ユリアが見やすいように、しゃがんだまま自分の”アイオライトの石”を太陽にかざして見せた。すると碧い石は…神秘的な紫
色へと姿を変えていった――…。

「うわあぁぁーーー!!その石も”まほう”つかえるのーーー!!」

ユリアは興奮しながら自分の石も一緒に太陽にかざした。2つの石は揃って…神秘的な美しい紫色の輝きを放ち…2人の顔まで紫色へと染めていく――…。

そして…その光景を少し遠くから見ていた久遠の頭の中に…昔の記憶が鮮明に浮かんできた。

アイオライトの石を2つ…太陽にかざしながら…リックとある”誓い”をした…あの日の記憶が――…。




”うわぁ…リック…!太陽にかざすと…本当に綺麗な紫色に光るね…この石…!”

”うん…。2つ並ぶと更に綺麗で神秘的だな――…。”

”なぁ久遠…この石…俺達の”親友の証”にしようぜ…?他の…誰と遊んでいても…俺にとって「1番の親友」はお前だからな――…。”




「ゆりちゃん…!大丈夫だったー?」

キョーコは心配そうに2人に近付いて来て…ユリアに怪我が無いか確認し始めた。

「あ…あの…ありがとうございました…。」

「…いいえ」

キョーコが少年にお礼を言うと…彼はにっこりと微笑み、お墓の方へと歩き出した。

そして…少年はティナと久遠の前で足を止めた――…。

「…母さん…お花忘れていったから…届けに来たよ」




ドクン… ドクン… 


”…母さん…お花忘れていったから…届けに来たよ”


久遠の頭に…少年の言った言葉が何回も木霊していく――…。


ドクン… ドクン…


”…母さん…”

”…母さん…”


ドクン… ドクン…
ドクン… ドクン…


「………………………。ティナ…彼は――…?」

「ん…?母さん、知り合い…?初めまして…。リチャードと言います。リッキーって呼んで下さいね」

「…久遠…。私達の家は直ぐソコだから…家で…色々と話をしましょう――…。」





本当は…彼を見た瞬間から

何者なのかは分かっていた…。

それくらい…彼と…リックはとても良く似ていた――…。





40話へ

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※本編では久遠が家を出て行った後、クーはジュリに半年間口を聞いてもらえなかった事になっていますが、このお話の2人はティナと…そして久遠の為に自分達の出来る事をした…という設定にしていますm(_ _)m