貴方の頬を伝っていった
エメラルド色の”幸せ”の宝石――…。
零れ落ちては 消えていってしまう
その美しい雫の粒を見た瞬間
拾い集めて…
宝物として残しておければいいのに…と
私はそう願った――…。
他のどんな宝石よりも
魅力的で綺麗な輝きを放つ
永遠の”幸せの証”になるから―――…。
* * *
暫くして蓮が落ち着いた後、2人は”美味しいオムライス”作りを始め出した。
『…じゃあ…私は鶏肉を切って炒めていくので…久遠さんは玉葱を切ってくれますか?』
「玉葱ね…分かった」
そう言うと蓮はにっこりと微笑み、玉葱の皮を剥いた後 包丁を持ち力任せにドンッ!!と切り始めた。
ぎゃあぁぁ……!!見ている方が怖いわ…!手切りそう……!
キョーコの心拍数が一気に上がっていく。そして…蓮は1~2センチくらいの細長いサイズに玉葱を切っていった。
「久遠さん…みじん切りですので、ここから細かくしていきましょうか。包丁の刃の上の部分に左手を添えて…こうですよ」
キョーコがみじん切りの仕方を見せると、蓮は見た通りの包丁の動きを始めた。
「…こんな感じかな…?」
『そうです…!ゆっくりでいいので手を切らないように気を付けて下さいね…!』
…ふぅ……。この切り方なら左手を切る事もなさそうだし…ほっといても大丈夫そうね…。
キョーコは慣れた手つきで素早く鶏肉と人参を切り、鶏肉をフライパンで炒め出した。そして…ちらっと蓮の方を見てみると…彼はまた泣いていた。
「…キョーコ…俺…今日もうダメ…また涙出て来た…////玉葱は何とか切り終わったけど…」
今度は玉葱にやられて涙が出てしまったらしい。そして…そんな彼の様子を見て、キョーコは思わず笑ってしまった。
『…ふふふっ…!久遠さん…可愛い過ぎますよ…!』
「何でだろう…?前は玉葱切っても全然平気だったのに…今日はコンタクトをしていないから…?!」
『あーなるほど…!ふふ…そうかもしれませんね…!玉葱の汁が付いた手で目を擦ってはいけませんよ…』
キョーコはそう言うと、蓮の頬を伝う涙をそっと指で拭った。
「…ありがとキョーコ……////」
蓮は水で手を洗った後、キョーコを後ろから抱き締めて額に優しくキスをした。そして耳元で甘い声でキョーコに囁く。
「ねえキョーコ…次は何をすればいい…?」
その蓮の1つ1つの行動にキョーコの胸はドキドキが止まらない。
もう…!カイン兄さんとセツカの時は演技だったから…セツ魂で何とか乗り越えていたけど…素の私では慣れていなくて本当にもうどうにかなってしまいそう…!
『えええ…っと…じゃあ…時間短縮の為に…玉葱と人参を電子レンジで取り合えず5分くらいチンしてもらえますか…?』
「…了解」
蓮は上機嫌でにっこりと微笑むと、キョーコに言われた通りに材料を電子レンジに入れた。そして…その後2人は仲良く チキンライスを作っていった。
『…後は卵ですね…!ふわっふわのとろとろにしましょうか…!』
チキンライスを作っている間も蓮はキョーコの腰にさり気なく手を回したり…とずっとベタベタしていた。
「キョーコ…ひとつ覚えておくといいけど…海外でちゃんと火を通していない卵は食べてはいけないよ。危険だから…」
『ええぇー?そうなんですか…?』
「うん。サルモネラ菌がいるかもしれないから…。まぁ…スウェーデンの卵は安全基準がしっかりとしているから大丈夫だけどね」
『へえ…初めて知りました…今後注意しますね!でもこの国の卵は大丈夫なんですね…!』
「…そうだね。じゃあ…時間ももう遅いし…早く作ってしまおうか…」
そう言った後…蓮はキョーコの唇にキスをして抱き締めたまま動こうとしなかった。
『ちょっと……。久遠さん…?言っている事と…やっている事が違うような気がするんですけど…?////』
「うん…ごめん…ちょっと思ったんだ…。キョーコと結婚したら…毎日こんな風に過ごせるんだろうなって…」
「それって…本当に夢みたいで――…。」
久遠さんは…少し照れながらそう言った後…私に神々スマイルを見せてくれた――…。
貴方は気付いていないの…。
本当に…本当に今日の出来事が夢ではないか…と
そう思っているのは 私の方…。
貴方と愛し合って 肌を確かめ合って 結ばれて―――…。
ずっと…ずっと決して叶う事のない
切なくて苦しい…恋心だと思っていたから
私が演じた花魁”夕霧”のように―――…。
『…ねえ…久遠さん…?』
「ん…?何…キョーコ…?」
『…何だか…私も…幸せ過ぎて…泣きたくなって来ちゃいました…。』
「…………。いいよ…キョーコ…泣いても――…。」
貴方は少し驚いた顔をした後に優しく微笑んで…私を ぎゅっと抱き締めたまま…頭をそっと撫でてくれた。
『……っ…ふぇ…え…』
今まで…今までこんなに幸せを感じて
安心感に包まれた事は一度もなかった…。
そして…漸く今気付いたの…。
私…ずっと…ずっと…
今まで”独り”で無理をして
生きてきたんだ…っていう事に――…。
もうこれからは
無理をする必要はないんだ…って
改めて今…実感したら…
急に安心して涙が止まらなくなったの――…。
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