Hidden Enemy26 | The Lilies And Roses

The Lilies And Roses

当ブログはスキップビートの二次小説ブログです。
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自由にのんびりと書きたいお話を載せていきたいと思います。
Laylaの完全自己満足&文章力UPの為の修行場です(´∀`)

※このお話は33巻からの続き未来のお話だと思って下さい。本誌とはズレが出て来ます。


…ねえキョーコ……。

後からだから…言える事だけど…あの当時…リックを演じ出した君を見て…俺は…俺は思わず身震いをしたんだ…。

君は…リックに逢った事など無い筈なのに…何だか本物のリックが俺に語り掛けているような錯覚さえして来て――…。

…それくらい…しっかりと君はリックの気持ちを掴んでいて…逆に俺はその時まで彼の事を何も理解していなかった――…。

まるで…俺を心配したリックが…本当に来てくれたかのように感じたんだ――…。



* * *



『…あっ…貴方は…っ…!リックさんの事を何も理解していません…!!』

「………………………え…?」

『事故で亡くなった後の…リックさんの気持ちを…貴方は考えた事…あったんですか…?』

「…………………………?」

…死んだ後のリックの気持ち――…?一体君は何を言っているの…。

『…今から…私がリックさんになって…彼の気持ちを…貴方に伝えますから…!!しっかりと受け止めて下さい…!』

…当然ある筈だった人生を…俺に奪われた…苦しい…リックの気持ちを…俺に伝えるのか…?

そうだ…どうせなら…何も言われないよりかは…思いっきり責められた方が…まだマシかもしれない――…。

決して…許される事は…無いのだから――…。

ずっとそう思い込んでいた…許される事ではない…と…。だけど…彼女の演じるリックは…全くその逆だったんだ――…。




『…クオン…!!お前…一体いつまでそんな事で苦しんでるんだよ…!!』

え…?
”そんな事で苦しんでいる”…?苦しくて…やりきれない気持ちなのは…リック…お前の方だろう――…?

『全く…お前は…相変わらずだな…。』

”リック”が…飽きれたような笑みを浮かべながら…そっと俺の頬に触れて…涙を拭った――…。

その…その仕草は…幼い頃…泣いている俺を慰める時に…リックが…よくしていたのと…同じ――…。

…どうして…?君がリックを知っている筈が無いのに――…。

「………………………リック…?」

『…あれは…単なる事故だったんだ…お前のせいじゃない…。』


………………………。何を言っているんだ…リック…?

それに…どうしてそんなに優しい瞳で微笑みながら俺を見るんだ…?

…あの時…お前は俺を…俺を追い掛けようとしなければ…お前は死なずに済んだ筈だろう……?それでも…俺のせいではないと…お前はそう言うのか…?

…最上さんは…リックがそう思っていると――…?

『だから…お前も…もういい加減…止まって悩んでないで…立て…クオン…! 立って…前を向いて進むんだ…!』


………………………。 ”立て…クオン…!”

…その言葉は…俺に…言っていた…リック…お前の口癖――…。

「………………………。どうして君がその言葉を――…?」

まるで…本当にリックに言われているのではないかと…錯覚してしまいそうになるじゃないか…。

…リック――…。


『いつまでも…お前が…あの事故のせいで…”リックは俺が殺したようなもの”と思っている事が…俺は辛い…』

「……………………………………。」

「…何て辛そうな顔で俺を見るんだよ…リック…?」

そんな…お前がそういう風に感じているかもしれないなんて…俺は今まで一度も…考えてみた事すら…無かった――…。

『…笑顔で…ちゃんと前向きに生きているお前の姿をしっかりと見届けないと…俺は…俺はお前が心配で…天国へ逝くにも逝けないじゃないか…!』

「…………………………………!」

最上さん…リックは…俺の事を心配してくれているって……?
…こんなに罪深い俺の事を……?

心配で天国へ…逝くに逝けないくらいに――…?

『…なぁ…クオン…俺の気持ち…理解してくれるよな――…?』

「…………………………………っ」

「…リック…。
それが…今の…お前の思っている本当の気持ち……?」

それを…俺に理解してくれっていうのか――…?

『そうだ…クオン。そして…いつかまた…アメリカに戻って来て…役者”クオン・ヒズリ”として…お前が活躍する事を願ってる…』

「…お前は
俺の…俺の”役者”としての成功までも…望んでくれている…と…?」

…もう…自分は夢を追い掛ける事すら出来ないのに――…?

『…当たり前だろ…!幸せを掴めよ…クオン…。 俺の分まで―――…。』

そう言うと、”リック”は俺の肩に手を置いて…優しく…優しく微笑んだ――…。







…涙が止まらない――…。

「…君は…それが…リックが俺に…伝えたい事だって…?」

『そうです…!…長年ずっと一緒にいた掛替えのない親友なら…絶対にそう思っている筈です…!』

『もし…私がモー子さんを追い掛けて…リックさんの様に死んでしまったとして…そのせいでモー子さんが貴方と同じ様に苦しんでいたら…』

『…私には…辛いだけですから…!”幸せになる資格が無い”だなんて…』

……………辛いだけ…? …リックも…同じ……?

『しっかりと立ち上がって…前を向いて…生きていって欲しいと思うんです…私の分まで…!』

『…ですから…前向きになって…いつか一緒に…リックさんのお墓へ行きましょう…?…久遠さん…?』

「………………。俺は…俺は許されてもいいのか…?」

『許すも何も…最初からリックさんは…貴方を恨んだりなんかしていない筈です…!!』

『…ね…?ですので…”幸せになる資格”はちゃんとあるんですよ……。貴方にも――…。』

そう言うと…君は…優しい笑顔で…そっと俺の事を包み込むように抱き締めてくれた――…。







頭の中で…何かが弾けて割れたような音が聞こえた気がした…。

…どうしてそんなにも…
君は…俺の事を救ってくれるのか――…?

感情が高ぶり…俺は強く…強く君の事を抱き締め返した。

「…君の…君の事がずっと好きだったんだ…キョーコちゃん――…!」

「コーンを演じていた頃から…そして…再会した後も…俺は…やはり君に惹かれていった――…!」

『…………………つ…つるが…さん…?』

君への…切ない想いが…次から次へと…溢れ出して来る――…。


「昔は…京都の小川で…純粋に演技を楽しむ事の喜びを…俺に教えてくれた…。」

あの頃は気付かなかったけれど…今考えてみると…あれが俺の初恋だったんだ――…。

「…再会してからは…ダークムーンで…”本気の恋”とはどういう物かという事に…気付かせてくれた…。」

『………………………。う…そ…?』

そして…大人になってからでも…いつでも…俺を虜にするのは…君だけなんだ――…。

「嘘じゃないよ…。BJを演っていた時は…自分の闇に飲まれそうになった俺を光の方へと導いてくれた…」

『………私は…特に何も――…。』

あの時…もし君が…俺の傍に居てくれなかったとしたら…俺は闇に飲まれていたと…そう思う…。

「…君自身が…気付いていないだけだよ…。ずっと…君の存在に…支えられて…何とか乗り越える事が出来たんだ…。」

『………………本当…ですか…?』

「うん…本当にそうだったよ…。君には…感謝してもしきれないほどに…支えられて来た――…。」

「そしてさっきは…リックの…リックの辛い気持ちを…俺に伝えてくれた――…。」

俺の中の…心の苦しみを…君は解放してくれた――…。

「…もう…俺は…俺は…君無しでは…生きて行けないんだ――…。」

俺にとっての…生涯で…たった1人の…大切な女性は…君だけなんだよ――…。

「それくらい…俺はキョーコちゃん…君の事を…愛してる――…。」

『………………………………っ』

愛しい君の瞳から…涙が静かに流れていき…雫が…そっと零れ落ちていった。

「…愛してる…心の底から…君を…。こんな言葉だけでは表現しきれないくらいに――…。」

「…愛してる――…。 愛しているんだ――…。」

切なくて…胸が締め付けられて…涙が出て来る…。それくらい俺が心を揺さぶられるのは君にだけ――…。


『……………っ 私は…夢を見て…いるんですか…?』

「…夢じゃないよ…。…君の…”敦賀蓮”へ対する想いは…君の手帳のメッセージで良く分かったけれど…」

『…………………………………//////』

「…コーン…そして…”クオン・ヒズリ”である…俺の事も…君は受け入れてくれる――…?」

心臓の鼓動が高鳴る…。お願い…本当の…”俺自身”を…どうか受け入れて――…。

『………………っ はい…久遠…さ…っ……////ふぇ…っ』


真っ赤な顔で大粒の涙を流しながら返事をしてくれた君は…その後 愛おしそうな表情で俺に最高の笑顔を見せてくれた――…。

「……………ありがとう…キョーコちゃん…」

そして…俺達は…そっと静かに…唇を重ね合わせた――…。

お互いの想いが通じ合ったキスが…こんなに眩暈でクラクラするように感じるとは…知らなかった――…。







そう…それでいいんだ…幸せになるんだぞ…クオン――…。

これで…やっと俺も…安心出来る…。

…頭の中で…リックの声が聞こえた気がした――…。




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