Hidden Enemy21 | The Lilies And Roses

The Lilies And Roses

当ブログはスキップビートの二次小説ブログです。
作者様・出版社様には一切関係はございません。
また文章の無断転載等はご遠慮下さい。

自由にのんびりと書きたいお話を載せていきたいと思います。
Laylaの完全自己満足&文章力UPの為の修行場です(´∀`)

※このお話は33巻からの続き未来のお話だと思って下さい。本誌とはズレが出て来ます。



俺がコーンとして
最上さんの手帳にメッセージを書いて送った日から、約2週間が経過した。

最上さんとは相変わらず会えない日々が続いている。

徹底的に避けられている上に、ハードスケジュールで仕事が終わるのが深夜になる事が多い。

…さすがに夜中にだるま屋の前まで車で押し掛ける訳にはいかない。

しかし今日は少しだけ会えるチャンスがあるかもしれない日だ。彼女は”きまぐれロック”の収録でTBMに来ている。

そして…俺の今日の撮影もTBMで、1日ドラマの撮影だ。運が良ければ”ニワトリ君”を捕獲…いや…彼女と話が出来るかもしれない…!


社さんが…全面的に協力してくれているおかげで、本当に少しだけど…時間が取れたし。

…スウェーデン行きの為のスケジュール調整の事とかも考えると…彼には本当に頭が下がる思いだ。


俺は”きまぐれロック”収録スタジオ近くの非常階段の前で彼女を待ち伏せしていた。

後は収録が終わった彼女を捕まえるだけなんだけど…なかなかスタジオから出て来ない。

まずいな…どんどん時間が無くなっていく…。社さんから電話が掛かって来た時点で、タイムアウトだ。


その後も出て来る気配は無く、更に時間は過ぎて行った。

そしてとうとう俺のポケットからケータイのバイブが鳴り出した。社さんからだ。

しかし諦めようかと思ったその時、収録を終えた”坊”が「ぷきゅっ」と歩いて来る音が聞こえて来た。

俺は社さんに後5分だけ時間を調節してもらえるようにお願いをし、”ニワトリ君”の腕(羽?)を掴んで急いで非常階段へと連れ込こみ、階段のドアを閉めた。


「…やあニワトリ君…久しぶりだね」

『つつつ…敦賀君……?!どどどうしたんだい…?突然こんな所に連れ込んで…!?』

本当はもっとゆっくりと…出来れば”最上さん”と話をしたかったけれど…時間が無い…。


それならせめて…俺の決意表明だけでも伝えておきたい。


ニワトリ君…今日はどうしても君に伝えておきたい事があってね…」


『…伝えたい事…?また何か悩みでも…?』

「あぁ…悩み事というか…決心したんだけど…ほら前に言っていた俺の好きな子の話。」

『・・・・・・・・・・・・あ・・・あぁ!例の高校生の女の子の事か…』


今…微妙に間があったし…動揺してる…?

やっぱり”ニワトリ君”への恋愛相談から、俺の好きな人の事を勘違いしたんだな…。


確か
”北欧人”への告白を聞いた時に…最上さんこう言っていたしな…。

”彼には他に好きな人がいるんです…本人から直接そう聞いたので…”

でも”16~17歳の高校生の女の子”

これを聞いて君は自分の事だとは1度も思わなかったのか…?

…本当に…ラブミー部のラスボスだね…君は…!

「はぁ~~……」

『……敦賀君…?』

「…あ…いや……」

「…俺…とうとう彼女に告白する事にしたんだ…!」

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そっそう?』

「…あぁ…君はいつも相談に乗ってくれていたしね…だから…先にまず君に伝えておきたかったんだ…」


「今の…俺の心の中の想いを…全部彼女に曝け出してみようと思う…!」

これが…俺の決意表明。

『…そっ…そうか…!きっ決めたんだなっっ!!』

『まっまぁ…敦賀君に告白されて…落ちない人なんかいないと思うから…!自信を持っていきなよ!』

『がっ頑張れよ!…じゃっ…じゃあボクは忙しいから…これで…』

「待ってニワトリ君!!」

俺はニワトリ君の肩を掴んだ。

『なっ何だい…まだ何か…?』

「それで…君の素顔を見てみたいんだけど。君は俺の顔を知っているけど…」

「俺は知らないから…君の顔を…。」

『…はっはっ…!もしボクが君みたいに超イケメンだったなら、喜んで見せるんだけどね…!ボクは…ブサイクだから恥ずかしいんだよ…!』

ふーんブサイクね…。

『って…!…なっ何でいきなり抱きつくんだよ…っ!』

本当に久しぶりの最上さんだったし…抱き締めたくなった…。

「いや…着ぐるみって抱きつきたくならない…?」

…でもこのニワトリの着ぐるみはデカくて…抱き締めてもイマイチよく最上さんとは分からないなぁ…。だけど…本当に彼女なんだ…。


そして俺のポケットのケータイがまた鳴り始めた。今度は本当にタイムオーバーだ。

「…ニワトリ君。
…覚えておいて…君の事はとても大切に想っているから…。

「たとえ君が”何者”であっても…俺にとって君が”とても大切な人”である事を…」

今は仕方が無い…けどスウェーデンに行ったら…本当に俺の全てを君にちゃんと伝えるから…。

それまでに俺自身も色々と心の準備をしておくよ…。

クオン・ヒズリとして――…。




* *  *




『あーー!もう…ビックリしたわ…!』

キョーコは楽屋に入るとドアの前で坊の頭を取りながら、へなへなになって座り込んだ。

さっき…敦賀さんに出会った――…。

あまりにも突然過ぎて本当に驚いたけど…。

『…変なの…あんなに…自分から避けていたクセに…』

貴方に会えた事がこんなにも嬉しいだなんて…。

敦賀さん…少し痩せた…?

『…ちゃんと…ご飯食べていますか…?』

…久し振りに感じた貴方の温もりが…こんなにも愛おしく感じるなんて…。

『坊の着ぐるみの上からでも敦賀セラピーは効果があるのね…!』

そしてキョーコは自分の世界に入り込んで独り言を
ぶつぶつと言い始めた。

『恐るべし敦賀セラピー!!…っていうかあの人は本っ当に抱きつき魔なのね…!でもまさか坊にまで突然抱きついて来るとは思わなかったわ…!』

『あんな事されたら勘違いをしてしまう人だっているだろうし…本当に…心臓に悪いんだから…!』

その後もぶつぶつと言い続けて…暫くして少し落ち着いたキョーコは坊の着ぐるみを脱いで、畳の上に仰向けになって寝転がった。

『ふぅ~~…』


『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。』

…とうとう貴方は…好きな人に告白する決心をしたんですね…。

いつかは…そんな日が来ると…覚悟はしていたけれど…。

『でも…まさか…こんなに早いとは思っていなかったわ……』

キョーコは自嘲の笑みを浮かべた。

雪花の時に感じていた彼との距離…逞しい胸の中…安心できる温もり…。

…これからは…それは本当に私の居場所では無くなるのね――…。

でも彼は…”坊”の事を たとえ君が何者であったとしても”大切な人”と言ってくれた…。

”坊”としてだけは貴方とまだ繋がりが持てるのね…。

それはそれで嬉しいけど……!

『…それでもやっぱり胸が締め付けられて苦しいよ…!…コーン…!』

思わず涙が溢れ出し、キョーコは自分の荷物の中からコーンの石を取り出した。

『…コーン…今も貴方の姿は見えないけれど…近くに居てくれてるの…?』




…ねえコーン…貴方は…

”彼と向き合って、ちゃんと自分の想いを伝えてごらん…?”

キョーコちゃんなら絶対に大丈夫だよ…!”

”必ず彼は喜んで受け入れてくれるから…!


そう手帳に書いて、私を励ましてくれたけど――…。

だけど私は…貴方の魔法に頼ってまで…

あの人を自分に振り向かせるような事はしたくないの――…。


今はまだ…私は敦賀さんには心から…

その女性と幸せになって欲しいと願う事は出来ないけれど…。


でも…いつか時間が経てば…敦賀さんの横に女性がいるのを見ても

2人の幸せを…心から祈れるようになる日が訪れるの…?


ねえコーン…どうせなら…

敦賀さんの幸せを心から願える”魔法”を私にかけて――…。


これ以上…醜い…感情を持ちたくはないの…。




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