Hidden Enemy20 | The Lilies And Roses

The Lilies And Roses

当ブログはスキップビートの二次小説ブログです。
作者様・出版社様には一切関係はございません。
また文章の無断転載等はご遠慮下さい。

自由にのんびりと書きたいお話を載せていきたいと思います。
Laylaの完全自己満足&文章力UPの為の修行場です(´∀`)

※このお話は33巻からの続き未来のお話だと思って下さい。本誌とはズレが出て来ます。


あの記録的豪雨の日から約2日――。

俺の予想通り最上さんとは連絡が一切取れなくなった…。

彼女の手帳が俺の元にあるから、あの子の大体のスケジュールは把握しているのにも関わらずに…会えそうでなかなか会えない。

『蓮…さっきタレント部門の方から少し聞こえて来たんだけど…キョーコちゃん、今度番組の企画でスウェーデンへ行く事に決まったらしいよ~』

「…スウェーデンですか?!」

『うん。何でも…銀食器の職人の家に弟子入りして一週間くらいホームステイするんだってさー!』

「…そうですか…手先が器用ですからね…最上さんは」

――北欧に行くのか――…。

…丁度…いいかもしれない…。俺は…あるプランを考え付いた。



『そうそう…そういえばキョーコちゃんから昨日連絡があって、…何だか…蓮がキョーコちゃんの手帳持ってるか知らないかって聞かれたんだけど…?それと蓮の今後の予定も…。』

『…何か様子が変だったんだけど…お前達、デートの日に何かあったのか…?』

社さんが心配そうな表情で俺の顔色を窺った。

「…すみません社さん…それについては色々と後で詳しく説明しますから…とりあえず今は…俺は”持ってない、知らない”ってだけ伝えてもらえませんか…?」

俺のその言葉を聞いて、社さんは複雑そうな顔をした。…当然の反応だと思う。

「…そして…社長と相談をした後に、社さんにも大切なお話があるんです――…。」

俺は社さんに最上さんの事で協力してもらう為に、まず自分の素性を話す事にした。

これから…コーン…そしてクオン・ヒズリとして彼女にも向き合いたいから…。



そして今日の仕事がすべて終わった後、俺は社長室へと向かった。

「すみません社長、失礼します…。」

『…あぁ…で、何だ蓮?こんな遅くにわざわざやって来た理由は…?』

俺は少し緊張して…唾を一度ゴクリと飲み込んだ。

「…最上さんの件で社長に協力して頂きたい事があるんです――…」

『…協力…?』

フランスの皇帝ナポレオンのコスプレをした社長がニヤリと微笑む。

「…5日ほど…お休みが欲しいんです」

「今度…彼女ロケでスウェーデンに行きますよね…?そのロケが終わった後に、彼女を連れて行きたい場所があるんです…」

『…ほう……?』

「…実は…俺と最上さんは11年前に1度出会っているんです…京都の小川で。」

「その時…彼女は…俺を見て”妖精”と勘違いしたので、俺は当時…そのまま”妖精コーン”を演じて彼女と遊んでいたのですが…」

そして俺は最近の最上さんとの出来事…お互い想い合っているのに、すれ違っている事をすべて話した。

「…ですからコーン…クオン・ヒズリとして北欧に行って…”妖精の国の雰囲気”で…彼女と再会して、告白したいんです…。それに…カインの時に、”いつか本物の満天の星空を見せてやる”と約束しましたし」

その言葉を聞いた社長は優しく見守るような表情で俺に微笑み、静かに口を開いた。

『…とうとうその気になったのか…蓮』

「はい」

『…それで…どうだ…?お前にとって本気の恋愛は…?』

いつになく真剣な顔つきで社長が俺に問い掛けて来た。

「えぇ…前に社長が言っていた意味が…痛いほどよく判りました…。本気の恋愛は…必死で
いて…格好悪くて…
とても冷静なんかでいられなくて…

『そうか…!それが判ったなら…役者としても本当の意味で一人前だな…!なら…協力は惜しまない!しっかりと最上君の心を捕まえて来い…!!』

社長は嬉しそうにそう応えてくれた。彼が協力してくれれば…それ以上に心強い事はない。

「ありがとうございます…!」

…ただ少しだけ…予想つかない演出を勝手にし出すかもしれないから…注意が必要だけどね…。



そして次の日、俺は社さんに自分の素性と、最上さんとのすれ違いの話をした。とても…驚きはされたけど納得もしたような感じだった。

『…そうだったのか…クー・ヒズリとジュリエナ・ヒズリの……。』

『…色々と…苦労して来たんだな、お前も。素性を隠してまで1から日本人の”敦賀蓮”としてやり直して…』

『でもお前…キョーコちゃんと出会ってから変わったよな…!』

「……え…っ?!」

社さんはとても優しそうな表情で、今まで感じていた事を俺に話し始めた。

『出会った頃のお前は…笑っていてもどこか冷めていて…そっけ無く何でもこなしながらも…いつも本心…本音は隠して誰にも見せなくて…イマイチよく掴めない難しい奴だったけど…』

『…キョーコちゃんに恋をして…年相応になったっていうか…人間らしい感情がちゃんと表に出るようになったというか…』

そして…彼は少し涙ぐみながら…俺に話を続けた…。

『…俺はな…実はずっと待っていたんだ…!何か深い事情がありそうだったから…お前の素性については一切何も聞かなかったけど…いつか…
お前から俺に話してくれるのを……!』

『…嬉しいよ…蓮…!話してくれてありがとう。お前の中でも色々と葛藤があったんだろ…?』

その言葉を社さんから聞いて…思わず感動して俺の方まで泣きそうになってしまった…。

「…すみません社さん…俺……!」

『もう…何も謝る事はないだろ……蓮…!いや…久遠か…。頑張れよー久遠!スウェーデン行ったら…しっかりとキョーコちゃんを捕まえて来いよ……!』 

社さんはにっこりと微笑んで、俺の肩に手を置いた。

「…ありがとうございます…社さん…!」

社さんが…今までとても心配してくれていた事を改めて実感して…思わず胸が熱くなった。…本当に…彼は俺にとって兄のような存在だ。





妖精の発祥は西洋が起源――…。

そして…金髪で全体的に色素の薄い俺(コーン)の事を…君は
”北欧人”に例えたの…?

それだったらコーン(俺)は北欧で君を待つよ…。

君はどうせ”敦賀蓮”からはもうずっと逃げ回るつもりなんだろう…?


この交換日記のような君の手帳に、コーンからの返事と…

そして…”妖精の国”への案内を書いて…君の元へ返しておくね。


――運命の日まで…あと約1ヶ月――…。




* * * 




あの記録的な豪雨の日から3日後の夜――…。

私は自分の部屋の布団に寝転がって、考え事をしていた。

どうしよう…コーンとの交換日記手帳が無いわ…敦賀さんには社さんから何となく聞いてもらったけど…彼は知らないって言っていたそうだし…。それはそれでひとまず安心だけど…。

…ついでに社さんから敦賀さんのスケジュールを聞けたから…今のところ何とか敦賀さんには会わずにすんでるし…。

『はぁ~~……』

キョーコは深いため息をついた。

ホテルにも問い合わせてみたけれど…結局無かったし…。後は…ミューズさんの車の中でセツカのバッグに物を移し替えた時…?

っていうか…私、セツカになる日に…わざわざコーンとの交換日記手帳を持ち歩いていたりしたかしら…?その時点ですでにうろ覚えだわ……。

『……どうしよう…失くしちゃった…』

とりあえず…明日ミューズさんに連絡してみようとは思うけど…。

『もう……何やってるのよ…私…!』

敦賀さんと…あんな事になっちゃって…もう後輩ですら近くに居られなくなって…ただでさえ落ち込んでいるのに…!

そう考えると涙が出て来て、私は思わず”ドクロのぬいぐるみ”を抱っこした。

『…つるがさ…っ』

自分の胸元を見てみれば、あの夜の…”独占欲”の紅い花びらは日に日に薄くなっていくのが分かり…更に寂しさで溢れて、セツカの”誓いのペアリング”を指にはめてみる。

…その上…コーンとの交換日記手帳まで失くしてしまうなんて…。

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。』

キョーコは暫くぼーっと寝転がったまま天井を見つめていた。

…でもまぁ…昨日スウェーデンのロケが決まった事は嬉しかったし…
ずっと落ち込んでいても仕方がないわよね…。

『…そうよキョーコ…元気出さなきゃ……!』

そして…そのまま色々考え込んでいた時、女将さんがノックをして部屋に入って来た。

「…ごめんねキョーコちゃん、遅くに…」

『いえいえ!まだ起きていましたから…!それで…どうかしましたか…?』

女将さんは持って来た小包を私に手渡した。その小包には”キョーコちゃんへ”とだけ書かれている。

「…さっきポストにそれが入っていたのを見つけたのよ。…相手の名前や住所どころか…ここの住所すら書かれてないし…ちょっと怪しいかなとは思ったんだけど…一応渡しておくわね」

一体誰が…何を…?

そう思いながらも私は女将さんにお礼を言ってお休みの挨拶をした後、例の小包を恐る恐る開けてみた。

すると…中には失くしたと思っていた手帳が入っていた。

『あ…!コーンとの交換日記手帳…!!どうして…?一体誰が…?!』

思わずキョーコの顔から笑みが零れた。

『…まぁいいわ…良かったわ…無事に戻って来て…!届けてくれた人に感謝だわ…!』

どなたかは分かりませんが…どうもありがとうございました…!とキョーコは心の中でお礼をして、手帳を開いた。

そして…じゃあ早速 手帳が戻って来た記念に、コーンへのメッセージをまた書こうかしら…と彼女は日記の1番最後のページを見て…驚いて一瞬動けなくなった。

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!』

『・・・・・・・・うそ・・・・・コーンから・・・・・返事が来てる・・・?』

キョーコは緊張で少し手が震えながらも…コーンのメッセージを読み始めた。



【キョーコちゃんへ】

たくさん…俺にメッセージ書いてくれていたんだね…?どうもありがとう…とても嬉しいよ!

そして…俺は今、妖精の国にいるけど…実は魔法を使って、いつもキョーコちゃんの事を傍でずっと見守っているんだよ。姿は…見えないんだけどね…。



『…え……?!…コーン、実は近くにいるの…?…どこ…?』

* *

いつでも…何に対しても頑張り屋で…でも泣き虫のキョーコちゃん…。
コーンは…君が頑張り過ぎて…いつか壊れてしまわないかとても心配だよ…。


『…ありがとうコーン…心配してくれて…。でも私には貴方がくれた石があるから…大丈夫よ…』

コーンの優しい言葉に思わず瞳から涙が出そうになった。

* *

そして…キョーコちゃんは”敦賀蓮”の事が…本当に好きなんだね…?それなら…逃げ回らないで…1度彼と向き合って、
ちゃんと自分の想いを伝えてごらん…?

キョーコちゃんなら絶対に大丈夫だよ…!必ず彼は喜んで受け入れてくれるから…!

『…ふふふ…”必ず”って…何よそれ…魔法でもかけて私に惚れさせてくれる気…?コーンったら…そんなの反則よ…!』

『でも応援してくれる気持ちは本当に嬉しいわ…ありがとうコーン』

* *

それから…キョーコちゃん、今度 北欧に来るんだね!実は…妖精の国は北欧にあるんだ…!だから…その時キョーコちゃんに会いに行くから…楽しみに待っていてね!! コーンより


『……うそ…!…コーンに会えるの……??』

感激のあまり、キョーコの瞳からたくさんの涙が零れ落ちた。




…コーン…姿は見えないけれど…

実はずっと私の近くにいてくれたの…?

そして…北欧に行けば本当に貴方に逢えるの…?


私はずっともう1度貴方に逢いたかった。

ねえコーン…貴方はもう飛べるようになったの…?

逢って…話したい事がたくさんあるの…。




――運命の日まで…あと約1ヶ月――…。





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