※今回は18話と19話を同時に載せていますので確認してからお読み下さい。(お話の都合上、一気に読んで欲しかったからです^^)
朝…目が覚めた時、気付けばもう最上さんは居なかった…。
それが判った瞬間、俺の世界は一気に凍りついていった――…。
昨日で…俺達の関係は崩れてしまった。
先に…壊したのは…俺の方――…。
俺はベッドに座ったまま、暫く放心状態で…動く事が出来なかった。
取り返しのつかない事をしてしまった…と。
もう最上さんは今までのように俺に接してくれる事はないだろう…。
俺は絶望感に苛まれながら俯いて下を見ていた…。
そのまま暫く時が流れ…そしてふと我に返ると、ソファーの下の方に小さな手帳のような物が落ちているのを見つけた。
彼女の忘れ物…?
昨日最上さんはバッグに躓いて中身は飛び出してしまったから…。
ごめん…一応中身を君の物かどうか確認させてもらうよ…。
蓮は手帳を手に取り、中身をパラパラと捲り始めた。
すると…中にはスケジュールが彼女の字でびっしりと書き込まれて、やはりこの手帳は彼女の物である事が確認出来た。
そして…手帳のページの後ろの方に…気になる”文字”を発見した。
「・・・・・・・・コーン・・・・・助けて・・・・・聞いてくれる・・・?」
蓮はキョーコからコーンへのメッセージを読み始めた。
【6月3日】
コーン助けて…聞いてくれる…?今とても辛くて切なくて…。
だって、花魁の”夕霧”役の切ない悲恋が、今の私とあまりにもシンクロし過ぎるんだもの…。
この想いに気づかれてしまった時点で”先輩と後輩の関係”まで崩れて傍にいる事すら出来なくなってしまうから…私の想いは絶対に彼に知られる訳にはいかないの…。それに彼には他に好きな人がいるし…。
一体どうしたらこの想いを止められるの?…敦賀さんの事が好き過ぎて…。でも私の想いは一方的で決して報われる事なんか無くて…。
安倍さん(相手役)の事を…つい敦賀さんだと思って演じてしまうの…。
あの人に会いたいわ…。会いたいの…。
* * *
「・・・・・・・・え・・っ・・・?」
蓮は信じられないような表情で先へと読み進めていく。
【7月26日】
今日はたまたまテレビ局で敦賀さんを見かけたの。綺麗な…女優さんに腕を組まれて…彼は楽しそうに笑ってた…。そんな姿…見たくなかったのに…!
…私がセツカだったなら、『アタシの兄さんに近付かないで!』って…彼を”私のモノ”として独占出来たのに…。もしヒール兄妹を演じていたあの頃に戻れたなら…。カイン兄さんにぎゅっとして欲しいの…。
* * *
「・・・・・・・・・嘘・・だろう・・・?!」
【9月9日】
コーン…!ごめんね許して…!!敦賀さんに「好きな人教えて」って言われて問い詰められて…思わずコーン(北欧人)だって嘘をついちゃった…。
でも…コーンなら…心優しい貴方ならきっと理解して許してくれるわよね…?ねえコーン…貴方に逢いたいわ…。
だけどね…?私の心は少しだけすっきりしたの。…好きな人は”北欧人”って嘘をついたまま…
ずっと私が心の奥に秘めていた切なくて…どうしようもない苦しい恋心を私は敦賀さんに伝える事が出来たから…。敦賀さんには気付かれないようにね…。
* * *
「…君は…あの日の夜…そんなに…俺の事を想って…切なくて泣いてくれていたの…?」
「”北欧人”はコーンの事で実は嘘で…本当は俺への想いを…あの時口にしてくれていたの…?」
蓮の瞳から感激の涙が溢れ出し…零れ落ちた。
「最上さん……君って子は……!!」
【9月10日】
今日はとても落ち込んでいる敦賀さんに偶然出会ったの。って言っても”坊”の姿でだけど。敦賀さんに好きな女の人の相談をされたの…。
あの人も…辛い片想いをしているらしくて…信じられなかったわ…。でも…彼の外見だけではなくて…中身も知って…好きにならずにいられる女性はいないと思うから…そのうちきっと彼女は振り向いてくれるわよね…。
でも…私の心は張り裂けそうに辛いの…!!コーン…!
* * *
「…どういう事だ…まさか…あのニワトリ君の中身は最上さんだったのか…?!」
「俺は…彼女本人に恋愛の…相談をしていたのか…?////」
【9月10日】
ねえコーン聞いて!!敦賀さんが今度カインとセツカになって、一緒に街中を歩き回ろうって誘ってくれたの!!どーしようもう~~////嬉しくて…!テンション上がっちゃって…今夜は眠れそうにないの…コーン!!
たとえ たった1日でも…大好きな敦賀さんと…カイン兄さんとセツカの距離でいられるんだもの…!まるで恋人のように…。
彼には好きな人がいるから…現実では恋人になんてなれないけれど…カイン兄さんになら我儘言ってみたり…思いっきり甘えたりしてみてもいいわよね…?
* * *
【9月18】
ねぇ…大好き…好きなの…敦賀さんの事が…。
切なくて…胸が締め付けられそうに苦しくて…涙が出てくるの…。
この想いは一体どうすれば収まっていくの…?
コーンならどうしたらいいのか答えを教えてくれる…?
* * *
蓮はコーンへの交換日記手帳を読み終えると、カイン用のズボンのポケットに大切にそっと入れた。
気持ちが高ぶり…頬を流れる涙はなかなか止まらなかった。
ねぇ最上さん…俺達は…
とんでもない誤解の…誤解の誤解をしていたんだね…。
でも…俺の中でその”誤解”はもう解けたから
これから躊躇う事はもう何も無い
全力で君を…本当に”俺のモノ”にする――…。
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