これまでの話↓
小学校高学年のある日突然、地域で１番優秀な子が集まると評判の塾に連れて行かれた。
怖そうな角刈りの塾長がいてその場で入塾テストを受けさせられた。
テスト後、塾長が偉そうに
「まぁいいでしょう。」と言った。
私は合格したらしい。
子供心にこの人は何故こんなに偉そうなのだろうか？と疑問だった。
生徒といえばお客のはず。
このニコリともしないおじさんが好きになれなかった。
塾ではテストの順位を都度張り出していた。
はじめは真ん中らへんの順位だったが、何か月か経つと10位に入った。
まぁいいでしょうの生徒がもう10位に入りましたよ〜と塾長を見返したような気持ちになった。
そのうち５位とか３位ぐらいにはなれそうだと謎の自信があった。
相変わらず家では宿題以外何の勉強もしていない。
ちなみにここでもまだ勉強で褒められたことは一度もなし。
その後中学になり、急に塾が拡大路線に転じ、少数精鋭をやめ幅広い成績の子供を集めるようになったため、成績張り出しはなくなった。
中学２年でグレた時、担任の体育教師が母に言った。
「お母さん大丈夫ですよ、
この子は頭のいい子ですから。
心配いりません。」
「なあ？〇〇（私の名前）」
と私の方を見て続けた。
私は意味がわからなかった。
〝頭がいい〟ってなんだ？
あんた達は私がいくらテストで良い点とろうが、一度も褒めたことなんかないじゃないか。
いつだって大人しくて真面目な子は都合よく扱い、明るく積極的で声の大きな子ばかり優遇するじゃないか。
なのに、そんな私が自分達にとって都合の悪い行動を取り始めた途端、頭がいいとか抜かす。
本当に大人は自分勝手だ。
大嫌いだ。
だけど歳をとった今ならわかる。
先生が言った〝頭がいい〟とはやって良いことと悪いことの分別がついてる、自分の将来に悪い影響を与える行動を取らないという意味だということ。
そういう意味では確かに私は〝頭がいい〟だったのかもしれない。
悪いことはいろいろしたが、暴力で人を傷つけること、シンナーなど薬物をすること、性行為をすること、
これらには手を出さなかった。
あんな母だが、両親は私を一応まっとうな感覚を持つ人間に育てたとも言えるだろう。
だけどもうこの時点では大人に、社会に不信感しかなかった。
中３の担任は音楽の若い女性教師だった。
面談で母と話し、全く噛み合わない会話から母のおかしさを感じたのだろう。
私と母の確執も察したようだった。
ある日私に、
「もっと自分の気持ちをしっかりお母さんに伝えた方がいい。」と言ってきた。
私は
「別にもういいし。」
と返した。
担任は
「もういいじゃないよ！
あなた自身のことだよ！
自分のことを自分で投げ出したら、これからもずっとそういう人生になるよ！」
と熱くなった。
私は何も答えず無視した。
今まで何度だって母には伝えようとした。
でも何も届かなかった。
だったら。
だったらあんたがお母さんに言ってくれよ。
子供の言葉に耳を傾けろ、子供と向き合い、きちんと愛情を注げって言ってくれよ。
私を助けてよ。
心はそう叫んでいた。
だけどそれを先生に伝えることはできなかった。
自分の悲痛な叫びをどうやって言語化したらいいのか知らなかった。
そして担任は何もしてくれなかった。
私の状況に気付きながら結局は見て見ぬふりを選択した。
私を見捨てたのだ。
誰も助けてはくれないんだ。
そう悟った。
大人なんて大嫌いだ。
社会なんて嘘ばかりだ。
誰も助けてくれない。
TVを見たって私には理解できない絵空事ばかり。
・ドラえもん
勉強ができなくて怠け者ののび太。
のび太がドラえもんという便利な存在をゲットし、面白おかしく過ごす。
私は真面目に嘘もつかず正直に一生懸命生きているのに誰も助けてくれない。
怠け者でずるくて何の努力もしないのび太だけ報われる。
１番腹が立つのはこの手の物語で主人公が嘘をついたり約束を破ったりズルをしたりすること。
「絶対に中を見たらいけないよ」
「わかったよ」
見るでしょ？
私なら約束したなら絶対に見ない。
見るなら約束はしない。
人として最低限の事もやろうとしないのに、そんな奴らがのうのうと幸せに生きてる。
ちゃんちゃらおかしい。
・金八先生
熱血教師が生徒の様々な問題を解決。
先生なんて誰も助けてくれない。
私が苦しんでいることに気付いても見て見ぬふりをきめこむだけ。
・北の国からなどのホームドラマ
頼むから『家族が１番』という特大キャンペーンをはるのはやめてくれ。
反吐が出る。
家族ごっこは結構だが、『家族こそ最も大切で暖かく尊いものだ』みたいな価値観を押し付けないでほしい。
そんなのは『たまたま』まともな親のもとに生まれた子供だけじゃないか。
家族のせいで苦しんでいる人間なんてまるで存在しないかのよう。
おかしな社会。
大嫌いだ。
早く大人になって自由になりたかった。