野口武彦・著
題名に勝海舟の名前があるが、ほとんど登場しない・・・(;´Д`)
だまされた!・・・と思ったけど面白かった。
鳥羽伏見の戦いから戊辰戦争終結までを総括する内容。
研究書ではなく読物なので、一気に読めました。
普段読んでる専門書がどれだけ読みにくいものかを再確認(笑)
まぁ、やっぱり僕は新政府側が好きになれない。
幕府側も特別いいわけじゃないけど、この時期の新政府側のやり口は酷いと思ってしまう。
特に酷いのが、会津藩の悲劇で知られる戊辰戦争。
元はと言えば奥羽鎮撫総督府の下参謀、世良修蔵という極悪非道の長州人のせいで起こったと言っても過言ではない。
錦の御旗を傘に世良は仙台藩に乗り込み、伊達家藩主やその家来に非常に不遜な態度を取り、さらには仙台の街で世良配下の官軍は商家からの略奪、婦女暴行を日常的に繰り返し、会津藩の和平の道を探る仙台藩を罵倒し無理やり戦争へ導こうとしました。
あげく世良は娼妓に膝枕をさせた恰好のまま、会津藩に与する庄内藩討伐の命令書を米沢藩の使者に足で蹴って渡すという愚行を犯します。
ついに堪忍袋の緒が切れた仙台藩は奥羽越列藩同盟を結成するに至り、地獄の戊辰戦争が勃発する。
ちなみに世良は遊郭にいるところを襲われ、恨み骨髄に達した仙台藩士に惨殺されたが、全く同情の余地はありません。
実はこの世良が就いた下参謀の役目、当初は同じ長州人の品川弥二郎が就く予定でした。
もし世良ではなく品川であったら、ここまで酷いことになっていなかったでしょう。
実際品川も世良が仙台に行くことになった際、「世良とは非道いのが行くな」と呟いたそうです・・・。
著者は「世の中には偉くしてはいけないタイプの人間がいる」といい、世良と同役の大山格之助を挙げています。
しかし、戦争でいつも悲惨な目に合うのは女性です。
言葉は悪いが男は戦死するからまだマシ。
古今問わず戦時に女性は必ず強姦されますから、ある意味死ぬより地獄です。
会津でももちろん、その他の地域でも女性への強姦被害が多発しています。
しかも官軍・幕軍問わずそれをやるから女性の逃げ道が無い。
そのため、本来死ななくてもいい女性が、その屈辱から逃れるためにたくさん自死する結果を生んでいます。
これを悲劇と言わず何というのか・・・。
悲劇といえば、戊辰戦争中、官軍にも幕軍にも属さない「局外中立」を保とうとした長岡藩。
戦火から自藩の領民たちを守るためでした。
しかし、小藩だと侮った官軍には聞き入れられず、攻撃を受けて壊滅してしまいますが、河井継之助の大活躍があり官軍も大きな損害を被りました。
この長岡藩の事例について著者はこう言います。
「世界的に戦国乱世の様相を呈してきた国際社会に直面する現代日本でこそ、改めて貴重な歴史のケーススタディとして見直されてよい」
「対立する大国の一方の言いなりになって出兵するか。それとも国家を焦土と化そうとも独立独行を守り通すか。苦しみ抜いて下された選択の先例がここにある」
こういうことを考えるこそ、歴史を学ぶ最大の意義です。
金言です。
あともう一つ。
土方歳三と新撰組が最も光を放つのは、京都での活動期ではなく、この戊辰戦争で東北各地を転戦し、五稜郭で敗北するまでだと思っています。
特に土方の洋式軍の指揮官への見事な転身は、単なる剣客ではとどまらない彼の器の大きさを物語っています。
それでも最後五稜郭での戦死した姿は侍そのものであり、ありきたりな言い方ですが、彼の死をもって侍の時代は終わったのでした。
僕は京都時代の新撰組には魅力を感じませんが、戊辰戦争での土方をはじめ、永倉新八、斎藤一らの活躍は、身震いする思いです。
この辺の話は、司馬遼太郎の「燃えよ剣」という傑作小説がありますので、ぜひ読んでみてください。
残念ながら、多くの悲劇の上に成り立ってるのが現代の世界。
歴史を知ることで、過去を知り現代に活かすという歴史を学ぶ意義を、改めてたくさんの人に知ってほしいです。