読書感想になります。

 

「ルポ 教育困難校」

 

実はこの著者の本、以前にも読んでます。

 

 

以前読んだのは、今回取り上げる本より10年以上前の本です。今は古書以外は手に入りません。

 

内容としては、2000年前後と変わらない内容と、2019年の時点の新たな問題点が挙げられています。

また、教育困難校(公立)の歴史についても触れられています。

旧制中学などの古い学校は皆無で、1970年代に高校全入の影響で新設された学校が多いです。

一方で、職業高校は戦前からある古い学校も多く、生徒の偏差値的には変わらずとも、意欲や経済面などから著者の扱う教育困難校から外れています。無論、教育困難校の抱える問題が職業高校もゼロではないんですけど。底辺校に比べると職業高校は全然マシであることについての説明もあります。

 

また、本の内容的には、こちらにも被りますね。

 

 

シングルマザーの家庭が半数以上とか。

両親がいても、生まれた時からの親ではなく、再婚親とか。

そしてシングルでも、正社員でバリキャリな親ではなく、パートやアルバイトの掛け持ち。非正規のシングル母親。祖父母からの援助も無し。それこそ、母親が家出少女〜駆け落ち状態で、祖父母と連絡を取ってない。縁を切ってる状態の家庭も。

 

著者は、教育困難校の生徒を、タイプ別に分類。

タイプによって抱える問題点も変わってきます。

勉強する気がないヤンキータイプは、授業妨害など学級崩壊のもと。

一方で、真面目であるにも関わらず小中の義務教育に、ついて来れなかった子たちも。そんな子の中には磨けば光る子もいる一方で、学習障害など発達障害に当たる何かを抱えていたりする子も。それから知的障害などボーダーギリギリの子たちですね。底辺高の本にもありましたが、本来なら支援学校高等部へ行くべきな子も、公立の低偏差値学校へ入ってきたりします。低偏差値でも公立は私学と違って入試で0点でも定員割れしていたら入学希望者を落とすことは出来ません。私立は定員割れしていても全入ではない学校もあるため、この本では取り上げられていません。

 

一方で、ヤンキータイプも今と昔では違ってきてるとか。

歴史の部分でも触れられていましたが・・・

先生に対して申し訳ないという気持ちは、団塊Jr世代が高校生だった頃にはあったようなんです。スクールウォーズや金八先生の生徒たちみたいな感じですかね。

しかし、今の子は、見た目は荒れてないけど、明らかに先生をバカにしている。生徒だけでなく親もです。

 

ここで、それこそ最貧困女子問題に近いものが出てくるんですけど。

親が、先生のことを、勉強バカという見方しか出来ない。教師や学校は敵という感覚で身構えている節がある。その辺が1970〜1990年代までの親が学校に謝る時代と違う。逆にモンペ親で、尚且つ進学校などの過保護親ではなく、難癖をつけ学校を攻撃してくる。

 

マジで教員は大変です。教員の仕事についても進学校と、どう違うのか? 教育困難校の教員の実態が載っています。

親からも信頼ゼロで、生徒からもバカにされ、精神を病んでしまう教員も多いとか。

 

しかし、問題点がはっきりしてくれば、対策も取ろうと思えば取れる。

本の終盤は、教育困難校の取り組みで、学校の治安が改善した事例や、教育困難校の存在意義について。

 

 

 

 

生徒個人の努力不足や態度の悪さ等々、自業自得で臭い物に蓋で済ませられる問題ではないというのは本を読めば分かるかと思います。

そしてそんな学校を放置するのは、それこそ治安の悪化、地域の民度低下になりかねない。

このような学校の役割として、犯罪から、それこそ加害者の一味になることから子供達を守るという存在意義も。

 

著者は、外国人による人手不足解消は、このような教育困難校の卒業者や貧困層、支援によるテコ入れで働ける子たちの場所を無くしてしまうのではないか?と懸念。もっと支援が必要な家庭に支援が行き渡るようにした方が、ゆくゆくは、生活保護など社会保障の増大を抑えられるのではないか? その役割の一つとして教育困難校にも目を向けてほしいという話でした。

 

 

私の目を引いたのが、改革した学校の中でも、特別支援教育の手法を取り入れた学校。

結局は、親が子供の発達に無関心なので小中でも支援を受けさせてない。放置状態の成れの果ての子が多いんですよ。

高校から支援を受けることで、自暴自棄になってた子のやる気スイッチが入ったりとか。

 

それと、彼らの共感力の強さ。言い換えれば感情論に流されやすいとも言えるわけだけど・・・

戦争の映画とか、進学校の子は、分析するような鑑賞なんですよね。クールだとか。

一方で、教育困難校の子の方が、世界に呑まれる感じ?

まあ、「優しい」子が多いそうですよ。ただし、厳しさを含む優しさに徹することが出来ない。感情に負けるってそういうことかとは思うんだけど。癇癪を起こしやすくキレやすい一方で、優しい・・・要は甘い対応しか出来ない子。

色々と考えさせられる本でした。