ダァーッ寒い。朝は凄く寒い。こちらは秋も終わりに近づき、もうすぐ厳しい冬の到来です。
冬になると、いつも以上に牛の体調管理が重要になります。
雨が降っても、寒さや霜の影響で草が全然生えないのが冬。なのに牛は自分の体が寒さに負けないように一杯草を求めるのが冬。
矛盾してますよね・・・。草が生えないのに、牛の主食の草が生えない。でも食べないと死んでしまう。それを僕が補っていくわけです。
夏の間に刈り取って保管してある210トンもの乾燥牧草もその為、夏の終わりに始まった冬の牧草の種蒔きも、牛を守るために自分が出来る重要な仕事です。
基本的に、我が牧場の牛は春先から夏の間に子供を産みます。
これも、コントロールしています。オス牛(Bull)をメス牛と交尾させる期間を決めます。
この期間とは、出産までにかかる日数を逆算して、秋や冬に子供が産まれないようにします。
オス牛がメス牛と交尾出来る期間は1年の内の数か月。可哀想に思えますが、これを無視して一年中交尾できる環境を作ってしまうと、
厳しい冬に子牛が産まれてしまう事になります。
何故秋や冬に子供が産まれてはダメかと申しますと、草が生えない事はもちろんですが、
一番重要なのが、母牛の体調。寒く草が生えない冬は自分が食べるだけでも精一杯なのに、
子供がオッパイを吸う事により、母牛の体内の栄養がどんどん奪われてしまいます。
そうすると母牛はどんどんと痩せていき、最悪な場合は死にます。母親が死ねば子牛もミルクを飲めなくなり死にます。
母牛は牧場では凄く重要。ちゃんと妊娠する母牛なら毎年毎年ちゃんと子供を産んでくれます。
シビアな表現をしてみれば、毎年毎年ちゃんと牧場や我が家にお金を与えてくれるという事です。
鋭い人ならこの辺でおかしな事に気が付くかもしれません。
春先や夏に産まれた子牛はどうするのか?
そうですよね、冬に子供が産まれなくても、夏に産まれた子供は冬もオッパイを吸いますよね?
意味ないじゃん\(゜□゜)/! と思う方、ちょっと今回の記事のタイトルを辞書で調べてみて下さい。
答えを言いますと、春先から夏に産まれた子牛は冬の前に強制的に人間の手によって親から引き離されます。
可哀想ですが、母牛の体調を優先するために親子離れ離れにならなければいけません。要するに離乳です。
そして、離乳された子牛は、選ばれたメス牛以外は僕の手によって売られます。
離乳してすぐ売る場合もありますが、ウチの牧場では離乳後に栄養のある牧草をジャンジャン与えて太らせてから売るのが基本です。
だいたい生後5か月~8か月までには親と離されますが、その頃には子牛は草だけで生きていけるようになるので大丈夫です。
先ほど説明した人間の手による離乳ですが、別に痛い目に合せたりする訳じゃありません。
子供と親をただ別の区画に移すだけです。
牛は群れて生活するので、基本的に、水を飲むのも寝るのも、オッパイを飲ませるタイミングも全て同じです。
見ていると面白いですよ。草をみんなで食べてたと思ったら、次はゾロゾロと全員で水飲み場へ向かう。
体を寝かせて反芻(はんすう)している時も皆で反芻している。
また、朝5時にはこの山。夕方5時にはこの川と言った具合に、移動するパターンもほぼ毎日変わりません。
こうやって、皆で生活のリズムを同じにしている事が親と子を引き離すのに役に立ちます。
例えば子供を親から引き離しAの区画に入れておくと、Aにある水飲み場にしか行けなくなる。
そして親をBの区画に入れておくとBの水飲み場にしか行けなくなる。
こうすると、生活のパターンが親と変わっていくため、自然と子供を忘れるようななります。
だいたい、一週間も離れ離れにしておけば、母も子も「モーモー」鳴いて互いに呼び合う事も無くなります。
ただ、やはりそこは母と子の愛情がありますので、しっかりと作ってあるフェンスも飛び越えて、
遥か遠くの子供がいる区画に迎えに来てしまう事も多々ありますし、子供を忘れるまでの約一週間はとにかく鳴く。
鳴いて鳴いて互いに呼び合い、朝から晩まで飲み食いも忘れるほど鳴いて自分の母子を探します。
フェンスの弱い部分を探しては、隙あらば逃げ出して子供を迎えに行こうと一日中フェンスラインを行ったり来たりします。
徐々に子供から離れた場所にエサを置いたりする事によって気を紛らわしてあげたりする事で、徐々に普通の生活に戻ります。
まさに今は離乳の時期です。6月から本格的な冬になるため、現在ミルクを吸っている130頭の子牛を親から引き離す作業に必死です。
可哀想ですが、こうやって母牛は健康を取り戻し、次の赤ちゃんを産むために冬を越えます。
子牛はこれから美味しい草を食べて、自分の体を大きくし、皆さんの食卓へ並んだり、僅かなメス牛はそのうち来る妊娠の為に体を大きくします。
親と子を人間の都合で引き離した以上、これから迎える厳しい冬を全員が越せるように体調管理をしっかりしてあげなければいけませんね。
今回は写真はありませんが、次回までに何か撮ってきますね。
では、また!