そういうわけで皮疹、痒みに苦しみながらも服用中止の憂き目を見ることなく、結核治療は予定どおりに進捗し、検査結果の上からも2月の下旬くらいの退院を期待させるものでした。
ところが、好事魔多しとはよく言ったもので。
2月に入った頃から症状が悪化したのです。
咳、痰、易疲労感、消化管の不調、体重減少、微熱といった、結核による症状です。
しかし客観的には結核の治療は順調に推移しており、検査データも改善の方向を示しています。
その頃に行った血液検査でCRP(炎症反応)がなんと10を越えてしまいました。
10を超えるというのは直ちに入院というレベルの数値です。
担当医の見立てでは3つの可能性を指摘されました。
1 細菌性の肺炎を併発した
2 真菌による炎症
3 結核治療の初期悪化
このうち、細菌性肺炎については高熱などの激しい症状が出ていないということで除外されました。
真菌の可能性はあるので検査をすることになりました。
初期悪化というのは結核治療が奏功したため急激に免疫力が優位になり、そのために症状を発するという、よくわからないものだそうなのですが、決して珍しいことではなく、この可能性が最も高いとのことでした。
初期悪化であれば時間が経てば収まっていくので特別なことはしなくていいということで、少し安心したのでした。
ところが。
数日後に上がってきた血液検査の結果、真菌による炎症を示す数値が高く現れたのです。
それはもはや疑いといったものではなく、確定レベルの値だったのです。
真菌の種類はほぼ間違いなくアスペルギルスであろうとのこと。
即日、肺アスペルギルス症の治療を併行して行うこととなりました。
ここで困ったことが出てきました。
通常、肺アスペルギルス症の治療は服薬により行うのですが、現在、継続して服用している抗結核薬のうちリファンピシンという薬と抗アスペルギルスの内服薬が併用できないというのです。
しかし不幸中の幸いと申しますか、点滴による注射であれば抗アスペルギルスの投薬が可能なのでした。
治療のためにはこれを毎日、点滴する必要がある、イコール入院治療ということになります。
結果として、結核治療が奏功して退院の条件を満たしたとしても、アスペルギルス治療のために入院を継続しなければならない。
どのくらいの期間の入院かというと、担当医はとりあえず1か月と言うのみでした。
これが2月の中頃のことでしたから、早くても3月中旬までの入院継続が確定してしまったということです。