間一髪!! | クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

TYPE Rの称号を与えられなかったもう一つの悲運の車

 一昨日の初雪、昨日の積雪となり、今朝もその流れで自然と雪景色の朝であった。

 

冬道の事故は今時期が多い。

慣れない雪道が原因なのだが・・・・

 

 オヤジはいつものように、同じ道を同じ時間帯で走っていた。

 

 気持ち、路面がアイスバーン化して、時折、タイヤの空転を感じていた。

 

そしてある場所に到達した。

 

 そこは本州から来た大学生がいつも通う道で、大学からは下り坂で、毎年、数台がスリップを起こして、何台もの車がお釈迦になっている難所でもあった。

 

 オヤジは毎年その場所を通るので、当然、タントカスタムのスピードを落としながら下って行った。

速度は50km/hも出ていなかったであろう。

 

 その瞬間!!

 

 急にタントカスタムの尻が左に流れ、対抗車線に飛び出した。

 

 対向車はいなかったので、とっさにカウンターステアを切り、アクセルはオフ。

 イニDの藤原拓海並みの人間ABSでマシンガン・ポンピングブレーキを繰り返した。

 

 目の前には対向車線のガードレールのロープがみるみる迫ってくる。

が、最後の最後まで右足でブレーキを連打するオヤジ。

 

 すると、その行為が功をなしたのか、タントの頭は急に元来た車線に向いて、今度はオヤジ側に車線に滑り出していった。

 その時オヤジは先日、ネットで読んだ記事を思い出した。

 

 サーキットを走っていて、初心者がスピンを起こしたら大半の人間はあきらめてしまい、そのまま突っ込んでいくという。

 

 衝撃力は速度に比例するので、サーキットでの事故は、車がバリアーにぶつかる直前まで、ブレーキをフルに踏んでないといけないのだ。

 

 オヤジは何故かその話を思い出し、ハンドルは再びカウンターステア切り、自分の走行車線に戻ったタントカスタムのブレーキを、全集中で踏み続けていた。

 

 そして歩道に乗り上げる衝撃に身構えた。

 

 このタントは数年前に、たった50km/hで路面でスリップ。

 道路のセンターにあるガートレールに沿って滑って、自分の車線の歩道に乗り上げて、全損を起こしたことがある。

 

 通常なら買い替えなのだが、亡くなったかみさんが大切にした車だったので、オヤジは当然修理。

 廃車から蘇った、オヤジにとっては、とっても大切な大切な車なのだ。

 

 普段、アイスバーンの時に、わざとブレーキをフルロックをかけて、スピン直前に、ブレーキをリリースして、元に戻して、急制動をかけたりしている行為や、昨日読んだぶつかる直前までブレーキを踏み続ける事。そして、路面の状態。

 

 多分、いろいろな条件が重なり合ったのだろう。

 

 タントカスタムは奇跡的に、歩道にぶつかる直前で意思を取り戻し、きちんと元の車線に戻った!!

 

 その瞬間!!

 

「うぉーーーーーっ!!」

 

 オヤジの頭の中で、キリンがあのポルシェを抜き去った時のように、ファンファーレがなり響いた!!

 

 バツクミラーにはついさっきまで起きていた行為が、しっかりと路面に残っていた。

 

 そしてタントカスタムは、何事も無かったように、また走り続けた。