トランスポーター オヤジー2- | クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

TYPE Rの称号を与えられなかったもう一つの悲運の車

13日、オヤジの上長が厳しい顔つきで、オヤジの元にやってきた。

「オヤジ君。直通が入った。」

 

「キャノンボール・スペシャル(特送)ですか??」

 

「そうだ。スペシャルだ。」その瞬間、オヤジの顔は、いつものヘラヘラした顔からジェイソン・ステイサム演じるトランスポーターの、フランク・マーティンのような厳しい顔つきに変った。


 オヤジは普段は冴えないサラリーマンを演じているが、陰の本当の仕事は、ヤバイ商品を運ぶ、プロの運び屋なのだ。

「今回の場所は旭川から商品を受け取ってきて欲しい。時は明日の14日。」

 

「しかし、14日の明日は昼から峠が大荒れになると予想されるから、最低でも、昼前までは旭川から出発してほしい。」

「了解しました。」と、オヤジは短く答えて、その場を離れた。


翌、14日早朝7時前。網走から旭川までは距離にして約200km弱。

時間にして、車で飛ばして3時間30分である。


 オヤジは今回の特送の主役である、トラックのエンジンをかけた。ラジオからは、昼からは雪が降り、大荒れになる事を、何度も繰り返していた。


 天気は快晴。まさか、これから悪天候になるとはだれも思わないだろう。









 いくら飛ばしても、結局は同じ時間帯に到着する見本。トレーラーの前のワゴン車は、さっきオヤジを猛スピードで追いこしていった車です。

 

 こんな工事現場、一発で離されていた距離が一気に縮まる。

 



 トラックは快調に、目的地に向かって進んで行った。

時折、すれ違う車が、早朝の為、ライトを照らしている。オヤジもそれに見習って、トラックのライトを点けた。


 事故は夕方の暗くなる時間帯が多いと聞く。それと同様に、朝早い時間帯も薄暗く、また事故に合う可能性が非常に高いのだ。


 オヤジはハイスピード・長距離ランナーの経験から、なるべくもらい事故を無くすようにしたのだ。


 トラックの運転席は窓が大きい。その為スピード感が無いので、時折、メーター見ながら、実速度の確認を行う。


 高速道路並みの速度に達した時に、不意にトラックが跳ねた。それにつられて、オヤジも運転席から投げ出される。が、シートベルトのお蔭で、無事に事なきを得た。


 フロントの接地感がやけにない。ポルシェはRRタイプエンジンの悪癖の為、時速200km/hからフロントの接地感が無くなるという。

 まさにこのトラックも、プァー(貧弱な)足回りの為、そんな感じである。


 オヤジは力任せにハンドルを抑え込み、暴れ出すトラックを押さえつけた。


目的地までの距離にして2/3、時間にして2時間ばかし走っただろうか??バイパスの唯一の休憩場の奥白滝まで着いた。オヤジはここでトイレタイム。
















 すると、あれだけ快晴だった天候はみるみるうちに崩れだし、さらにみぞれまで降り出してきた。観光バスから降りる人たちが、次々にジャンバーを着込み。「北海道は凄く寒いね。」と言いながら、小走りにトイレに向かった。


 ここがみぞれなら、下手したら数時間後には雪が降り出す。旭川の出発をかなり早めないと行けないな。と、オヤジは意を決して再び目的地に向かった。








 30分後、前も見えない大雨の中、やっとのおもいで峠を抜けたオヤジだが、たちまち天候が回復していった。14日の旭川は快晴であった。

つい、30分前まで、暴風雨圏内にいた事は、だれも想像はつかないであろう。

 


 時刻は10時過ぎ、無事にオヤジは旭川の目的地に到着。ここで、今回の目的の商品の搬入を行う。

 約30分後、商品の搬入を終了。


 これから再びトンボ返りで帰宅するのだ。

オヤジは依頼人にお礼御言って、ハンドルを網走に向けた。これからまた3時間以上、孤独なランナーと化するのだ。


 山道の為、ラジオも何も使えない。しかもトラックにはAMラジオしかついていないため、往復6時間余りの間、トラックのエンジン音だけを聞きながら走るのだ。


 1時間ほど走り、トイレタイムで停車した、先ほどの奥白滝の休憩場に到着。

トンネルを過ぎると、路面は真っ白であった。






後続車がいない事を確認!!

 瞬間、フルブレーキング。巨大なトラックは、大きくきしめく音を発しながら、どんどんスピードを落としていった。

 雪道に入ったトラックだが、大きく減速したので異常はなかった。この場は時間との勝負である。




 ゆっくりしていたら、どんどん路面は凍り、下手したら通行止めになる可能性も高い。

 オヤジはゆっくり、しかも確実にデス・ゾーンを切り抜けて行った。




 高速道路のわきに停まっていた車。

このドライバーは実に危険な行為だとはわからないのであろうか??

時速100km/hで走る車が、後ろから次から次にやってくるのだ。

 一歩間違えたら、確実に後ろから衝突される。

そんな事を考えたら、オヤジには絶対に出来ない事である。




そうして走る事約30分。

 奥白滝を抜けて、路面の乾いた丸瀬布に入ったオヤジはようやく、最大の難所を切り抜けた事を知ったのだ。




 ピップから遠軽のバイパスを抜けたオヤジは、いつも左腕に身に付けている愛用の15200を覗いた。




 時刻は12時を差していた。

予定は旭川を抜けるのが12時前なので、丁度1時間以上先行しているのだ。




 そこで、遠軽でお昼を取る事とする。が、大きなトラックなので、なるべく駐車場の大きい場所。


 見た目はあまり小綺麗ではないが、遠軽では知る人ぞ知る、有名なドライブインの「どか弁」に入る。




 またトラックの商品を盗まれないように、なるべく、人が離れて見晴らしが良いとこに停めて置いた。




ここで頼んだのはトンカツ定食。


 以前ここに家族で入って、結構、満足した記憶があったからだ。10数分後、トンカツ定食がやってくる。




 やはり期待を裏切らないメニューである。そそくさとトンカツ定食を食べたオヤジは再び、愛機のトラックに乗りこんだ。


 後は会社まで無事に事故らず、捕まらずに帰れば良いだけだ。そこで安全運転モードに頭を切り替えながら、ふとメーターを見た時にギョットした。燃料がもう残り1レベルになっていた。


 オヤジは今までS2000に乗っていて、連続航続距離が500km以上で走っていたので、まさか400kmにも満たない距離で燃料が無くなることは予想しなかったのだ。残り1メモリを切ったところで、急遽、北見に回り、燃料を補給。


 これでようやく真っ直ぐに帰れる。と、気を取り直し、再び網走に向かう。

 するとはるか彼方で、いつものネズミ取りを行っている所で、車が数台停まっていたので、時速50km/hに速度を落とす。案の定、警察官がそこで待機していた。




こうして、時間にして7時間30分余り、時刻は午後2時30分。




無事にオヤジは今回のミッションをやりとげた。