湾岸デビュー!! | クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

TYPE Rの称号を与えられなかったもう一つの悲運の車

 前回のブログ。ガレージの片づけ編の最後の言葉・・・


 オヤジは憧れていた友人Iとで湾岸ミッドナイトのゲーセンの対戦は実現するのであろうか??


 そのチャンスは意外と早くやってきた。

 友人Iは今度のオヤジの休みを聞いてきて、その日は一緒に北見に行こう。と、連絡が来たのだ。


 これは絶対に、友人Iはオヤジと、湾岸対決をするつもりだと信じ切っていた、休みの当日。


  友人Iはなんとオヤジの見た事の無い軽自動車でやってきた。

「????」北見にはオヤジのS2000で行くとばかり思っていたのだが・・・

 彼はニャリと笑って缶コーヒーを差しだし、「悪いけど、この軽自動車を北見の車屋に車検を取るために、持っていきたいんだ。」と言った。


 コーヒーの賄賂を受け取ったオヤジはもちろん、「NO!!」と、言える訳もなく、当然のように彼の後を付いて行った。


 相手は軽自動車。こちらは生粋のスポーッカー。楽々と友人Iの後を付いていけると思っていたのだが・・・・・


 彼は抜群に車の先読みが上手い。


 片道2車線に入った途端、気がついたらあれよあれよと言う間に、数台車を追いこして、見えなくなってしまった。

 これは本格的にまずいと思ったオヤジは、彼にスピードを落とすように連絡しようとした途端、上手い事に国道を右折して、目的地の車屋に入って行った。


 こうして、オヤジ。S2000で軽自動車を見失う。事件は未遂に終わった。


  最初の目的を果たしたオヤジ達は、次に彼の目的である、オヤジ達世代のCDを探す事と、バランス・ボール探しを行うために、オヤジの知っている、古本屋と中古屋を巡った。

 今迄、彼が知らなかったところを案内したら、ビックリしていた。

そして、念願のバランスボールが見つかり、喜ぶ彼と共に、やや、遅い昼食を食べた後、「これからどうする??」と、友人Iに聞くと、彼の目的はもう終わったので、後はオヤジの行きたいところに行く事にした。


 行き先は・・・とーぜん、ゲーセンである。


 友人Iを湾岸デビューさせるのだ。



 ゲーセンの湾岸ミッドナイトは2台あり、対戦できるのであるが、なんとそこには中学生らしき少年が片っ方の場所で、ずーーっとゲームを行っていた。

(しかし、まだ夏休み前の平日の午後2時である。何で中学生が?????)と、細かい事は気にしないで、早速、オヤジは始めた。


 まずは最近、このゲーセンでオヤジより上位クラスの最強の3人を相手にする。

ここ数ケ月は、あまりやっていないため、まずは肩慣らしのオヤジの一番得意で、時速340km/hが出る湾岸線。


  隣の少年も、年甲斐もない年寄りが、このハードな湾岸をやるので、どんな腕か、興味深げに見ていた。


 まずは楽勝♪


 一昔前の強者が軒並みいなくなったので、いくらオヤジより上位

ランクでも、全然、相手にならない程、弱かった。


 横で見ていた友人Iが興味を示したので、早速、オヤジは席を譲った。

 彼が対戦できるように、オヤジのランクより下のランクや同等ランクを選んであげた。


「いよいよ、湾岸デビューだな。時速300km/hオーバーは真剣(まじ)に速いぞ!!」


「目が付いてこないから、下手したら酔うぞ!!」と、言いながら、ゲームを開始させた。

 彼は実写モードが好きらしく、本当の画面に近い画像にしてあげた。


 デビュー戦だとはいえ、仮にもS級クラスを迎撃する、オヤジの愛機GTR R35である。


 速さ負けはしていない。友人Iは悪戦苦闘しながらも、3位に入り込んだ。

 

 初戦はかなりハードだったのだろう。2回戦目を聞くと、とりあえず、1回休みと言う事であった。


 そこで、オヤジはまたまた、先ほどの最強の3台を選んで、今度は腕の差がはっきり出る、箱根の往路を選んだ。

  もちろん、パワーは最少にして、ハンドリングを最強にした。

 このセッティングは峠の曲がりくねった道を、ブレーキをかけないで走れるのだ。

 そして、開始後、横で見ていた友人Iは「悪い。」と、一言いって、車のキーを持ってゲーセンから外に出た。


 最初の試みは大失敗!!あまりにもスピードが遅すぎて、車が曲がって行かないのだ。

 結果は対戦した3台に大幅に遅れて4位となってしまった。


その瞬間、オヤジは切れた!!


そう、イニDの拓海が藤原ゾーンに入るように、オヤジもオヤジゾーンに入り込んだ。


 次のセッティングは、どう考えても無謀な最大の830馬力。足回りはスカスカで、ハンドル操作一つでドリフトになる仕様である。


 普通は峠では足回りを固めて、ハンドリングで曲がって行くのがセオリーである。

 しかし、オヤジは全てのコーナーをドリフトで曲げて行く事を試みた。


箱根往路の挑戦が始まった!!


 いきなりカウンターの大連続である。切り替えしのコーナーは、回転を落さないように、5速をホールドしつつ、アクセルはベタ踏み。

 後はハンドルをきっかけに、ドリフトで全てのコーナーをクリアしていく。


 横にいた少年は、ゲームをやることを忘れ、すっかりオヤジのハンドリングを見入っていた。


 だってそうであろう。どう考えてもどんくさい爺さんと見える男が、いきなり横にやってきて、上位ランク3人と闘っているのだ。しかも、一番ハードな箱根の往路のコースでだ。


 闘いは5分ぐらい続いたであろう。


 気がつくと、上位ランク3人を全て抜き去り、オヤジはまたしてもこのコースで優勝をもぎ取った。


 友人Iの事が心配になったオヤジは、この後、すぐに止めてゲーセンを後にする。


 外に出たら、彼は車の横で深々とタバコを吸っていた。


「大丈夫か??」オヤジは心配になり友人Iに訪ねた。


「いゃーー。横で見ていた時は問題なかったんだけども、自分でやったら、結構、酔っぱらうものなんだな。」


「急に気分が悪くなったよ。」


「いきなり340km/hの世界を見たからな。」

「オヤジも最初、300km/hを超えた時に、速すぎて目が追い付かなかったよ。」

「だけど人間って結構、順応力があるみたいだな。1週間もすれば遅く感じるようになった。」


残念ながら友人Iとの対戦はこれで不可能となった。


 オヤジにとってはこの湾岸ミッドナイトはスピードに魅せられたジャンキー(中毒者)達にとっては、絶好の戦場である。


 今迄、湾岸はやりつくし降りたと決めていたオヤジであったが、あと1km/。あと1km/と再びあのヒリツク感の世界に再び戻る日は近いと、妙に確信を持った。


 オヤジの湾岸復活は近いのであろうか??そして、再びS級殺しの異名を持つ伝説のGTR R35は蘇るのであろうか??