幻の橋「タウシュベツ川橋梁」を追え!!前篇。 | クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

TYPE Rの称号を与えられなかったもう一つの悲運の車

本日、6月23日。日曜日。


 二人の漢(おとこ)達は、ある目的の為に、オヤジ家に集まった。


「で、今日はどこに行く??」という、いつものオヤジ。


「まずは走ろう。話はそれからだ。」と、答えるのは、前回、ニューマシーンで華々しくオヤジの前に現われたGTR乗りの友人I。


「わかった。」と、短く答えたオヤジは、愛機S2000に乗りこみ、赤いスタートボタンを押した。


 S2000はすぐに眠りから覚めて、図太い排気音を辺りにとどろかせた。


 時間は午前8時30分。オヤジは時計を見ながら「いまから走るなら、釧路か帯広ぐらいか・・・」と、つぶやいた。


「実は行先はもう決めてある。」友人Iは差し入れの缶コーヒーをオヤジに差し出した。


「タウシュベツ川橋梁って知っているか??」


「ああ。一応名前だけは聞いたことがある。」


「確か、湖底の浸食が激しくて、完全な橋の状態は今年中には見られなくなる。と言われる、北海道遺産だよな。」と、オヤジは乏しい記憶を手繰りよせて、友人Iの答えた。


「その場所が帯広に手前の上士幌町の糠平湖にあるというらしいんだ。」


「だから完全な姿が見えるうちに見に行ってみたい。」


「わかった。それでは、道中の途中の陸別までは北見のバイパス経由が良いか??それとも津別経由が良いか??」と、オヤジが聞くや否や、「もちろん、津別経由だ。」と、答える友人I


「了解!!」と、短く答えたオヤジはハンドルを陸別に向けて、どんどんとS2000を加速させた。



 北海道上士幌町字糠平 タウシュベツ川橋梁 一年の大半をダムの湖底に沈み、春先にしか橋の全貌が見えないという、世界的にも稀有な存在の、北海道遺産のアーチ型橋梁。


 年々の水没と浸食に侵され、完全な橋の状態は、多分今年中にその存在を消すと言われている。


 そこが今回、オヤジ達のドライブ先の目的地である。

オヤジもその存在は知っていたが、なかなか一人で見に行く機会が無かったのだ。


 走行時間、約1時間ぐらいで中間距離の陸別に到着。


ここ陸別は古くはバキーレース開催場、また日本一しばれる(寒い)町で有名であるが、今年からは某国営放送局の人気TVドラマ:「なつぞら」で、広瀬すず演じる主人公奥原なつが幼い頃に過ごしていた、柴田家の牧場がある町である。


 もちろん、柴田家の牧場は非公開であるので、どこにあるのかは判らない。


 オヤジ達はここの陸別の道の駅で、トイレタイムを行う。




 前までは銀河鉄道999の星野鉄郎とメーテルのイラストが描かれていた、列車であったが、今回はやはりリアルタイムに人気のあるなつぞら列車であろう。


 友人Iはじっくりと見て、この列車に乗るのに200円。運転するのには2,000円と言う案内に、かなり興味を持って見ていた。


「乗ってみたいのか??」オヤジは何を今更、列車かよ??という感じで、友人Iに聞いた。


「うん。今度、孫を連れて来て、乗せてあげたい。」と、答えた友人Iの顔はいつものGTR乗りではなく、単なるおじいさんの顔になっていた。


(うわっ!!マジかよ。友人I。俺達はまだまだ若いんだぞ!!)と思いながらも、未だ高校のいるオヤジはもう孫がいる友人Iの姿を少しうらやましそうに眺めていた。


 毎回、毎回、新しいイラストの表紙を描かれていると、有名になった台本。









おおっ!!広瀬すずさんや、松島菜々子さんのサインまである!!






 「なあ、オヤジ。どうでも良いけど、車、少し前に出すぎでない??」と、早速、オヤジの駐車の停め方の下手さにつつこみを入れる友人I。


「いゃーー。この車。前が長くて全然見えないから・・・汗っ♪」


「いや、この場合はバックだから、前は全然関係ないし・・・」


友人Iは運転のプロである。だから、いつも友人Iを乗せて車を運転すると、何だか運転免許の教習場の教官を乗せている感じになる。


 ここでトイレタイムを終らせ、足寄⇒士幌⇒上士幌:糠平と向かっていくのだ。


 道中。オヤジ達は昔車や今の車の事をいろいろ話す。

いくら話しても話足りない。


「いゃーー。車の白い色は、洗車が便利でしょ。黒色なんかしたら洗車がめんどくさいでしょ。」と話す友人Iに


「いゃ。ここは白い色の車は、走り屋にとっては、安全性を高めるためだと、GTR乗りには答えて欲しい。」


「ロールゲージはたまたま付いてきただけ。こんなものは別に無くても良いでしょ。」


「いやいや、チューンドGTR乗りには、絶対に必要な装備だ。と答えて欲しい。」


「GTRはちょい乗りには面倒だ。やはり普段の足は軽トラで充分!!」


「いやいや、ここは一つ、GTR乗りは硬派に、いついかなる時も、普段の足はGTRだ。と答えて欲しい!!」と、オヤジと友人Iは、目的地のタウシュベツ川橋梁に着くまで、オバカな車問答を果てしなく続けて行くのであった。


幻の橋「タウシュベツ川橋梁」を追え!!前篇。終了。