先日、オヤジは大切な友人を失ってしまった。
彼とは幼少期からの付き合いなので、実のもう50年以上にもなる。
更にオヤジは交友関係が非常に少ないため、下手したら、彼を失うという事は、通常はもう誰とも、交友が無くなる事を意味している。
きっかけは実に他愛ない事で、くだらない事であった。
彼は実に車に関して熱心な人間で、オヤジが知る限り、この1ヶ月間でなんと5台もの車に興味を持ち、車屋さんに行き色々と調べまくり、車屋の進める車を欲しい車の候補にしていた。
そのうちの1台を試乗していたく気に行った様子であった。
きっかけは、その試乗した車が、スポーッカータイプのオートマ車で、次に手に入れる車は、このスポーツカータイプのオートマ車が候補に挙げると言い出してきた事からだった。
しいていえば、冬場の北海道の関係で、4WDが搭載されて、出来れば旅が好きなので車中泊が出来る、ワゴンタイプの車があれば良いかな。と思っていたほうである。
だから今の車を買いかえるときに、4WDタイプの軽自動車のワゴン車が良いな。と思っていた。
数年前、彼がライトウェイトタイプの2シーターのオープン・スポーツカーを手に入れた時は、なんでこの北海道で2シーターのオープンー??といっも思っていた。
更にもし、自分がスポーッカーを手に入れるなら、北海道では当然、4WDの4人乗り。
具体的に言えばスバルのWRXかミツビシのランエボが良いのではないか?とも思っていた。(GTRはもう価格が高すぎて、実際の購入金額の範囲から、かけ離れていた。)
そんなオヤジが彼の2シータースポーツカーの横に乗り、感化されて気が付いたら自分も2シーターのオープンタイプのスポーッカーのS2000を乗るようになったのは、実におかしな話であった。
はっきり言えば、彼がオヤジのカーライフの先輩みたいなような存在であった。
以前、S2000を札幌で見た時は、200万円近いプライスで、しかも2人乗りのオープンカー。
こんな北海道でオープンカーなんか冬場は乗れないし、2人乗りだから家族全員も乗れないから、だれがこんな高い車買うの??と、当時は疑問視し、所持する人間をバカにしていた。
更に手に入れてからは、6速マニュアル、タコメーターのレッドは9千回転。一体、こんな回転まで回すバカがどこにいるの??とも思っていた。
S2000との出会いは実にオヤジにとっては衝撃的な出会いであった。
当時は先に彼がこの車を見つけ話題にしていたが、オヤジは当然、眼中も無く、彼の話を聞き流していた。
そして縁があって、このS2000を手に入れてからはオヤジの中の生活が大きく変わってしまった。いい意味で、生活に張りが出来たのだ。
休日になると目的が無くてもまずはS2000に乗る。どこに行くあてもなく、ただひたすら遠くに走り出す。
それだけで、オヤジの休日は満たされていた。
天気のいい日は、屋根を開けてオープンにする。基本、ドライブはノンビリ派であるが、S2000と知って仕掛けてくる、うるさい挑戦者には、信号GPで9千回転を回しきり、あっという間に後ろに置き去る。
S2000に乗るという事、すべてがオヤジにとっては非日常に世界にトリップ出来るツールとなった。
そして、バイクを降りたオヤジには、S2000の出会いが、新しい希望と化した。
別にマニュアル信者ではないが、スポーッカーに乗るという事はマニュアルに乗るという事。というイメージがオヤジに確率されていった。
厳密に言えば今は速さで言えば、パドルシフトの方が、タイム的にも速い為、もはやHタイプマニュアル車は時代遅れの化石と化した車である。
が、その行為さえも運転が楽しいと思えるオヤジである。
話をもとに戻そう。
彼を失ったきっかけは、彼がスポーツタイプのオートマ車を次の購入車の候補にする。と、非常に張り切って、オヤジにラインを送ってくれた。
オヤジはオートマ車??と疑問視を投げかけた。
普通の友人や彼がこの車がメインに使う車なら、別にオートマ車でも関係は無かったが、彼の選ぶ車はオヤジと同じ、休日に楽しむセカンドカー的な車であったのが問題であった。
彼にマニュアルが出てくるまで待った方が良いぞ。とオヤジは返答した。
どんな車も購入金額は高い。おそらく、人生で家を買う次に高い買い物だと思う。
彼がオヤジに取って非常に大切な友人という事と、彼の車の使い方が、オヤジと一緒な休日のみのセカンドカー的な使い方を知っていたからだ。
更に、この1ヶ月で5台もの車の購入を次から次に考え直したのは、やはりオートマ車のスポーッカーが関係していると思ったからだ。
彼には本物のスポーツカーの楽しみを味わって欲しく、購入を失敗してもらいたくなかったのだ。
それが、今回は悪い方向に働いてしまった。
彼の欲しかった車は、走行距離も相場よりも非常に安かったが、オヤジはカッコが気に入って購入したはいいが、オートマだから面白く無くなったのと、またFR(後輪駆動)だから北海道で走るところが限られていたから、すぐに売った車でないのか??と返答した。
かなり購入意欲満々の彼は、オヤジの否定的な返事が気に入らなかったのだろう。
S2000はS2000の楽しみ方があって、この車にはこの車の楽しみ方があるのはみんなそう思う。
別にオートマ車を買って、今まで俺は後悔なんかしていない。と、返答してきた。
ラインの最後に、ラインはお互い顔が見えないから、言葉がきつくなるから、今度からお互いに気を付けよう。
そして、最近、お互い自分の主張しかしていないから、しばらく車に関してのラインは止めよう。と返ってきた。
それが、彼との最後の連絡となった。
たぶん、彼との関わりは車関係がほとんどなので、今後、修復する見込みはかなり薄いであろう。
べつに車に興味の無い人は、オートマ車だろうが、マニュアル車だろうが、なんでケンカまでして論争するか判らないであろう。
オヤジは通常は他人と争う事は嫌いである。
だから、他人が明らかに間違って言っていると気がついても、反論しないで、相手の言う意見を認めることがほとんどであった。
しかし、S2000と出会ってからは、隠れていた自分の本能が現われるようになってしまった。
多分、S2000を手に入れてから、お互いのカーライフの考え方が違ってきたのであろう。
「お前はお前。だけど、俺は俺。」
S2000は常に相手に慣れ合うなと問いかけてくる。
いつか彼がオートマ車でも良いから、本当に自分が気に行った車を手に入れ、オヤジと同じように休日に張り合いがあるカーライフを送った時に、ふと、オヤジの今の気持ち、言葉を思い出してくれたら良いかなと、オヤジは思っている。