気の向くままに。 | クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

TYPE Rの称号を与えられなかったもう一つの悲運の車

 久しぶりに、たった一人の時間が出来た。

今迄は休日は娘1号や2号の用事足しを行って1日が終わるのであるが、その日の休日は朝から夕方まで、オヤジだけの自由な時間がたっぷりと用意されていたのである。


 ここ、北海道はまだまだ春は先であるので、昨年までは、カタナとの走りも6月になるまでおあずけであったが、今年からはS2000である。

 路面に雪さえなければ、(雪があっても全然問題ないが・・・・)いつでも出撃OKなのである。


 心持ちいつもよりも早く家を出る。ガレージのシャツターを開けて、Sの低いボディのシートの尻を落としこむ。

 一息入れた後にSのイグニッションキーをひねる。

 そして・・・ステァリング横の赤いスタートボタンを押す。






 カシュツ!!シュルルル・・・・

 


ウォーーン!!

 


ボボボボ・・



と、少し図太い音がして、軽やかにVTEICエンジンが鳴り響く。

 この赤いスタートボタンを押す行為が、いかにもレーシングカーに乗るというという気分を味わえ、運転をやる気を起こす行為の為、オヤジは満足している。


 さて、今日はこれからどこに行こうか??行先はまだ全然決めていない。

とりあえずはいつもの近間のB峠へ。(ここは恒例のカタナの行先と全く同じである。)


 S2000は旧車である。カーオーディオはカセットで、しかもステァリングの横にオーディオコントローラーが付いているために、普通のカーコンポの取り換えが出来ない。


 HONDAさん。高級感を出す為かもしれないが、流石にこの点は唯一気に入らないところである。その為、今までは運転中はFMを聞くか、FMが入らない場合は、本当にエンジン音を楽しむしかできなかった。

(まあ、バイクの場合は一部のバイクを覗いて、ラジオも聴けないから、普通と言えば普通なのであるが・・・・)ただひたすら一日中、運転だけに徹したら流石にオヤジも疲れてしまうのでR。


 そこで、今回の秘密兵器を用意した。

 なんてことは無い。単なるデジタル・ウォークマンとFMトランスミッターを持ちこんだのだ。

 多少雑音が入る時もあるが、それでも音楽があるのと無いとでは天地の開きがあるのでR。

 このおかげで、今回のドライブはとても大成功となった。


いつもはカタナでこの峠に行って、引き返すパターンだが、S2000はあっという間に峠に着いた。ここでコーヒーとトイレタイムとする。








 オヤジは甘いものや炭酸が大好きだ!!そこで、今までは甘ったるいカフェオレや栄養ドリンク風炭酸飲料水を好んで飲んでいたが、糖尿を患って以来、もう半年以上、飲み物はブラックのコーヒーしか飲んでいない。

(甘いもの飲みで~~~。)と、心で密かに思いながらも、泣く泣く自動販売機は、無糖のブラックコーヒーを選ぶ。


さて、先を急ごうか。と、Sのシートに乗り込み、再びエンジンをかける。

ここで、コーヒーを飲んで一息入れようとしたら・・・・・


「クソッ!!この車。ドリンクホルダーも付いていない。今時、ドリンクホルダーの無い車なんか、車じゃねぇーー。」

 


「マジに運転以外、楽しむな。という車かよ。」と、オヤジは毒付きながら、コーヒーを助手席に立たせて静かにS2000を発進させた。


 そして、B峠を下って弟子屈方面に向かう。

ここからがS2000の本領発揮である。タイトなヘァピンを軽々とクリァしていく。








 こいつの性能は、時としてあのHONDAの誇る、超一級のスポーツカーのNSXのコーナリンをも凌ぐハイスペックな足回りと、公道用にデチューンされたレーシングエンジン搭載した、公道レーサーなのだ。

 


 しかしその代償として、一部の選ばれた者しか、その神の領域に入ることは許されないマシーンなのだ。


 峠を下り弟子屈を抜けた。ここから先は、中標津か釧路方面に分かれる。


オヤジはこの段階で、S2000のハンドルを釧路に向けた。ここから釧路までまだ1時間以上かかる。


 淡々とオヤジは時速50km/hでS2000を走らせる。


時折、長距離トラックがすごい勢いでオヤジの後ろに迫ってくる。

オヤジはS2000の左ウインカーを出して、左に避けて先に行かせる。


 スポーツカーだから飛ばして乗らないとおかしいと、大半の人は思うだろう。

 現にオヤジもこいつを手に入れてから、多分、スピードに歯止めがきかない。と思っていた。が、しかし、実際はその反対であった。


 こいつと走るときは、淡々とのんびりと気にいった音楽でも聞きながら、走っていても運転が楽しいのだ。

 


 今はまだ冬だからホロは付けたままだが、これから暖かくなって、幌を外してオープンにすると、更にもっと季節を身近に感じることが出来る。まるで今まで走っていたバイクと同じ感覚にもなる。


 トップ6速でもアクセル一発で加速するぶっといパワー。更に6速ギァーシフトで好きなギァーで走れる楽しさ。本当にマニュアルにして良かったと思った。

 


 弟子屈からそろそろ運転にも飽きてきた頃合いなので、好きな音楽を入れて、再び運転を始める。


 昔、オヤジが家族旅行の時に、みんなが疲れて寝静まった時に、好きで同じ曲ばかりを聞いていた音楽が静かに流れだした。


 かみさんが亡くなる前にオヤジは最後に二人でドライブをしていた時に、オヤジが唯一望んでいたことをかみさんに告白したことがあった。

 

 それは子供達が独り立ちして、お互いに自由な時間が出来たときに、二人でこうやってのんびりと北海道中を旅をしたかった。ということだ。


もう二度と手に入れられないかなわない望みである。

 かみさんはその時、静かに寂しそうに微笑んでいた。


 古い曲が流れ始め、そんなことを不意に思い出してしまった。

何故だかかみさんが横にいるような気がして涙があふれて止らなかった。

 


 時折、後ろから猛スピートでやってくる車が、ゆっくり走るオヤジを不思議そうな感じで見つめて抜かしていく。


 今は誰にもこの貴重な時間を邪魔されたくなかった。

 


網走釧路間は速い人で2時間10分ぐらいで走りきるという。


 オヤジはなんと3時間近くかけて、ゆっくりと釧路に到着した。

そのころには、散々涙を流して久しぶりに心まですっきりしていた。




 オヤジ的、事故らない方式。


バイクや車を走らせていると、こんなシーンがたまーに現われると思う。大抵の人は、前が空いているので、スピードを上げて行こうと思うだろう。だが、オヤジはこんな時は決してスピードを上げて走らない。


 何故かと言うと、かなりの確率で左側の走行車線の車が、後ろを確認しないでオヤジ側の車線に変更してくるのだ。


 スピードを上げて走っているときに、後ろを確認しないで右側に変更してくる車。結果は見なくても判る事だろう。




 釧路に着いたら、ホーマック、ブックオフ、アストロプロダクツ、コーチャンフォーそして中古車屋さん巡りを行う。







 朝食を少し多めに食べ過ぎていたので、昼は抜きにした。

多少、すきっ腹のほうが頭が良く働くので、動きやすいし、運転も緊張して走れる。


 中古車屋さんには目当てのS660は無かったが、その隣の中古車屋さんで、プライスの無いGTR R33が置かれているのを見つけたので、早速、値段を聞きに行ったが、残念ながらその事務所は留守であった。








 改めてよくよく、真近でGTRを見る。


 昔、絶対に手に入れたかったGTRであったが、今は値段が吊り上り、もう2度と一般庶民には手に入らない価格となっていると聞く。


 しかしS2000を手に入れてからはもうそんなことはどうでも良くなってしまった。

 

 オヤジがS2000を手に入れても、更に中古車屋に行くのは、他の車を見る度に、手に入れた自分の車の良さを再確認する為なのだ。

 


 この心理、分かるだろうかなぁ????


 そろそろ帰る時間となった。一気に釧路の裏バイパスを通って、弟子屈経由の道に戻る。




 ただいま時間は午後3時。




来るときは帰る方面でネズミ取りをやっていたので、再びゆっくりと前の車の後を着いて帰る。




釧路市街を出たあたりである。

前の車は法定速度で走ってオヤジもその後を着いていた。信号待ちをしていた。


 途端、突然後ろの車が、右側の空地に走りこんで通過して、交差点の右がわの道路に走り込み、そのまま青信号でオヤジ達を抜かしていった。

 


そしてあっという間に見えなくなった。

 若い頃のオヤジも前の車が遅い時に、抜かすのも困難な時に良くやった手であるがドライバーとしては邪道である。


 その行為を見て、オヤジのスイッチが突然入った。

 


シグナルブルー。


 前走車はゆっくり走り出す。


対向車をやり過ごした後に、オヤジはシフトを2速に叩き込みアクセルを目いっぱいに吹かした。

 


クァオオオオオオーーーンン!!


と、VTECエンジンの官能的な音が鳴り響く!!


追い越した車はあっという間に見えなくなる。

バックミラーを見ると同じように前の車を追い越してオヤジの車を追いかけてきた白い車を確認した。


覆面だとしたら嫌なので、一旦、白い車が追い付くのを待つ。確認すると中型車クラスで。フロントはシルビア見たいな感じである。同じようなスポーツカーだと判断したオヤジは再び、あの無礼な車を追いかける。



  少し走ると登り坂の峠がやってくる。ここでまたS2000の本領を発揮!!

 

オヤジはためらいもなくS2000をノーブレーキのまま90度右ターンに突っ込む。

 後ろの白い車は少し遅れてオヤジを追いかけてくる。


 S2000の良さは、回るVTECエンジンと大半の人は言うが、やはりこのコーナリングに尽きると思う。

 かってバイクよりも速いと感じた車は友人I(Kでないよ。)の操る、チューンドGTR R33であった。


 あの時はブラインドコーナーにためらいもしないで入る友人Iのドライビングに恐怖を覚えたが、このS2000のコーナリングもそれに負けない性能である。



はるか先に走っていた無礼な車がみるみるうちに追いついてきた。



前の白い車が、オヤジ達の後ろから飛び出し、横の脇道から無理やり隣の信号に入り込み、抜かして行った車である。




 追いついたオヤジは別に煽るわけでもなく、少し間隔を開けて前の車の後を着いて行った。


 前に走る車が追い越し禁止車線が解除された途端に、前走車をすかさずに追い越すと同時に、オヤジもピッタリと後ろを走って張り付く。と、


 その瞬間、オヤジの後ろを走っていたあの白いスポーッカーが一気にオヤジ達3台を追い越し、


クォーーーーン



と甲高いマフラー音を轟くかせ走り去って行った。


速ぇーーーーーー!!

 


 走り去る後姿を見つめたら、その車はシルビアでは無く、同じVTECエンジン搭載車のHONDA インテグラ タイプRであった。


 あまりの圧倒的な速さに、オヤジの前の車はやる気を失い、早々と戦線離脱!!


 オヤジはというと・・・・前走車がいなくなったので、また来た時と同様に、ゆっくりと来た道を引き返していた。


 時刻は午後5時30分ごろに無事に家に帰宅。走行距離は昼も取らないで走りきって約340kmを越えていた。


PS。バイクから車に転向して、休日がとっても待ちどうしい状況です。

 


 

 

 やはり特別、目的も持たないで、気の向くまま、ブラーリと走るのがオヤジ的には合っているなぁーー。