湾岸ミッドナイト  最強の敵!! | クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

クラブ・ミッドナイト:正伝!! =Sの称号= 第2章

TYPE Rの称号を与えられなかったもう一つの悲運の車


 相変らず休日前の仕事帰りは、ゲーセンの湾岸でウサを晴らしているオヤジ。

 しかし、今はもう連勝に次ぐ連勝で勝負の相手もいなく、そろそろ引退を考えていた。


 そこで、ふと、自分の腕は本当に速いのか??が疑問となった。


 それで、全国区の相手と勝負を行い、自分の腕は今はどのぐらいに位置にあるか、調べる気になったのだ。

 で、今日はしばらく行かなくなった、湾岸ミッドナイト3で勝負を行う事とした。


 理由は3のデーターのポルシェは700馬力、Vのポルシェは600馬力。その差100馬力。


 トップスピード(最高速)は320km/hと315km/hで、その差5km/h。

しかし、このたったの5km/hが、勝負では明暗を分けるのである。


まず、全国区のトップのデーターを見る。


 現在、データでは62機撃墜して、トップに君臨している、アスナさんというピンクのR35GTRである。


 ついでに、その方の勝利しているコースを見ると、名古屋区(だったと思う。)である。


 オヤジは早速、バトル相手をそのアスナさんと、場所をその名古屋区に指定した。

 多分、全国区であるから、相手は鬼のように速いのであろう。


久し振りにオヤジはポルシェをバトルモード(つまり自動車が全部映るモード)とした。

 このほうが、ドリフトの進入角度、状態が判るので、ノーブレーキ・アクセルベタ踏み状態の究極のドリフトの成功がしやすい。


スタートが近づき、緊張が高まるオヤジ。

久し振りだな。この感覚。アドレナリンが最大に放出される。


いよいよ勝負が始まった。やはりR35GTRは、鬼のような加速をし始めた。


人は極限まで緊張が高まると、高速感はうすれ、時が停まったように感じる。

今のオヤジがまさにそれであった。

 

 320km/hの超弩級クルージングの中、異常な遅さにイライラし始めていた。


 コーナリングでのドリフト状態の中、R35は蜘蛛の子のように、自由自在にラインを変えて、オヤジを抜かしていく。


 しかし、思ったほど差が開かない!!


イケル!!


オヤジはそう直感した。


 直線に入った途端。


 アクセルはベタ踏みの為、ダイレクトに加速しない分、ポルシェは徐々に加速し始めた。

たぶん、相手はコーナリングのスピードを高めるために、馬力をオヤジより落としているのだろう。


トップスピード。320km/h。

驚異の高速走行が始まった。一般車両が次から次にオヤジを襲ってくる。


 一般車を避けるための大幅なハンドル操作は、数キロのロスを生む。

その瞬間に、R35は背後からオヤジを襲う。


モァ・パワー!!モァ・パワー!!


 ひたすら馬力だけを追及したオヤジのポルシェは足回りはガタガタである。

右に左に大きく揺れながら、一般車を交わしていく。


勝負のコースが名古屋区だったのが幸いした。たった数キロの違いで、オヤジのポルシェのほうがストレートはスピードが伸び、近差で勝利した。


あまりにもあっけない勝利に、オヤジはあぜんとした。

もっと大差をつけて負けると思っていたのだ。


 次に選んだ相手は、オヤジと同じ黒いゲンパラ(ポルシェ)。

しかも同じ700馬力。名前は「シマ・タッヤ」である。


「ふっ!!。オヤジと同じ、良い趣味をしているな。」と、にやけたオヤジであるが、よくよく見ると、勝負の相手はオヤジ自身であった。

このゲーム機は、自分の走りを記憶しているので、自分自身と対戦できるのである。


「くっ!!ここで最強の敵かよ。」


 相手はオヤジと同じ、究極のドリフトをマスターしている人間なのだ。


よく、SFの映画で、オリジナルとコピーが勝負して、オリジナルが勝つはなしがあるが、今回はまさにそれだった。


勝負が始まった。

オヤジと同じ走りなので、相手もオヤジと同じ速度で並んでいる。


ここで、オヤジは痛恨のミスをした。

相手に気を取られて、ドリフトに失敗したのだ。


途端にはるか彼方に離れるコピーオヤジ。


「クソッ!憎らしいほど、良い走りしているじゃん!!」



久し振りに闘志が燃え出した!!


これだよ!!これっ!!誰にも負けたくない!!というこの燃えるような闘志が、今のオヤジを突き動かしていた。


その後、究極のドリフトは奇跡的に一度も失敗する事無かった。


そして、ジリジリとコピーオヤジに追いつく。


 そうさ!!オリジナルがコピーなんかに負けるかよ!!


 アクセルベタ踏み状態から、更に床をぶち抜く気迫で、オヤジはアクセルを踏み込んだ。


 残り数百メートル。ジリジリとオヤジはコピーオヤジを抜かし始め、本当に数センチ差で勝利をもぎ取った!!


やったぜ!!密かにガッツポーズを決めたのは言うまでもない。



 引退なんかクソくらえ!!


 こうなりゃ、本気でVの全国区を狙うぜ!!


 齢(よわい)53歳。シニア(年寄)と呼ばれる、遅咲きの湾岸レーサーが誕生した瞬間であった。





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