今朝の新聞記事で、ジェリー・アンダーソン氏の死去を知った。
筆者を機械好き、科学好きに引きずり込んだ張本人である。
まぁ、その名を知ったのは随分と後になってからではあるが。
TV番組「サンダーバード」の生みの親である。
幼少の頃、TV画面に現れたメカ達は、すべて斬新だった。
窓すら殆どない稼働式コクピットに、可変翼を備えた1号。
子供心には、とてもカッコイイとは思えなかった前進翼を持った2号
。
前進翼、未だに本格的な実用化には至っていない当時としては最先端の技術を取り入れていた訳である。
その他、3号、4号があって、全世界の救難信号を傍受する宇宙ステーションの5号がある。
サンダーバードと言えば、何と言っても、そのロケットエンジンの炎と排煙の迫力だろう。
日本の特撮メカがチョロチョロとした花火の火を吹きながら飛んでいた時代に、TV画面一杯に広がるロケットエンジンの炎を迫力は絶大だった。
これも後に知る事になるが、サンダーバードでは実際に小型のロケットエンジンを使って撮影されたらしい。
各話で登場するゲストメカも秀一だった。
当時の日本のヒーロー物では正義の味方が乗るメカはピカピカだった。
そんな時代に、ウェザリング(汚し塗装)が施された救助メカ達は、歴戦の強者に見えた。
唸るエンジン音に合わせるように吹き出す排煙、地面の凹凸に軋むサスペンション。
すべてがリアルに見えた。まさに重機の持つ迫力が模型で再現されていた。
今、思えばサスの動きも大きすぎるし、巻き上げる砂埃も大げさだが。
それは、特撮で使われる手法のデフォルメの範疇と見ていいだろう。
デフォルメと言えば、登場人物たちもそうである。サンダーバードは、マリオネットを使った人形劇だった。
目、眉、口が動き、表情豊かに感情を表現していた。
マリオネットならではの動きもかえって新鮮に思えたものだった。
その体型は5等身。でも、それが妙に人間臭く、後に8等身にした「キャプテンスカーレット」の方が不自然に感じたりもした。
また、忘れてはならないのが、その日本語訳。
国際救助隊の隊長であり、隊員たちの父親でもあるジェフ・トレーシーが息子たちに出動を命じると、皆「はい、パパ」と答えて各々にメカに乗り込む。
この「はい、パパ」の部分は原語では「Yes,sir」である。よく訳しても「はい、隊長」くらいであろう。言わば、軍隊と同じ感覚なのだが。
ここを「はい、パパ」と訳したのは名訳と言われている。この訳こそが、サンダーバードの世界を日本に馴染ませたと。
すでに、一部の設定や小道具たちは時代に追い越されつつある。もはや時代遅れの部分さえある。
しかし、フルオートメーションの巨大機械が暴走を始め、人の制御を超えた時の危険性を的確に予言していたサンダーバードの世界。
科学が万能ではない事に警鐘を鳴らしていたサンダーバードの世界。
この素晴らしい作品を残してくれたジェリー・アンダーソンに
乾杯!!