【BLCD感想】おやすみなさい、また明日(2017年/凪良ゆう/古川慎×松岡禎丞)
大好きな原作。特に最後のSS部分は泣けて泣けてどうしようもなかった。
小説ならではの演出の良さだと思っていたから、大好きなキャストとはいえ、CD化には不安があった。
冒頭から違う。BLCDは800枚以上聴いているから、それ自体は珍しいことでも悪いことでもないとわかっているが、大好きな原作となると…。
しかもそれが、そんな感性があるのか!と非常に感銘を受けた表現だっただけに、ここでいきなりそれを…?とモヤモヤする。
けれど、木を見て森を見ずは愚かなこと。
松岡さんの情感溢れる、しかし静謐なモノローグで進行する話は心が洗われるような美しさ。
古川さんも抑えた精悍な演技がピッタリ。
「泣いてはいけない。泣いたら負けてしまう。このさびしさに負けたら…」
涙声のモノローグが胸を打つ。
自分を律するつぐみの人間性。
これが最後まで揺らがない強さとなり、二人は共に歩む人生を全うするのですよね…。
まだ2枚組のトラック2なのに、既につらい…。
このあと、公園で佇むつぐみに声をかける古川さんがあまりにやさしく、気を使った声なのもつらい…。
やさしい人同士の心の交流の話。
丁寧に、繊細に織り上げるのは、CDでも変わらない。
「恋や愛じゃなくても、誰かのあたたかさに触れて、救われることがある」
からの「朔太郎さん」「はい」
なんと誠実な…。愛しかない。
濡れ場は「いい、朔太郎さんはなにもしないで」が色っぽい。
感じ入った声で、つらそうじゃないのがいい。
ギリギリ聴こえる声で「じれったい…?」
本当に顔を近付けて言われているようで…。男っぽいなあ…。
カッコイイ。古川さんの存在に感謝しかない。
「お願いだから」の切羽詰まった感じ。
二人とも本当に上手。臨場感が違う。
しかし。私が原作で感動した一節「朝を待てなくて、そのとき、そばにいる誰かと橋が架かってしまうことがある」
このくだり(9行分)が丸ごとカットされていたのは解せない!!!!
つぐみの考え方を理解する上で極めて重要ではないですか?!
葬儀の帰り道、泣くのも、泣きながらのモノローグも、もらい泣きしてしまう。
「誰かのためでなく、自分のためだけに生きるのは、ひどく疲れる」
つぐみは30代半ば。
私は20代後半で「もう自分のためだけに生きるのは虚しい」と悲しくなったことを思い出す。
あなたに迷惑をかけたくないから、そのときは「俺を捨てて行ってほしい」
大好きだからだよね…彼がいつも自分にやさしかったからだよね…。
ここの古川さんも、松岡さんに負けず劣らず、素晴らしかった。
本当に二人とも役にピッタリで、確かな演技力。
そしてトラック12、原作のSS部分。
晩年に移行するところ、震えた。
どうするのだろうと思っていたけど、これは正解だと思う。
夢うつつで、ぼんやりと、朦朧と…。
健忘と、意識が混濁していく様子。なんてことだ…。
松岡さんが「読み進めていくうちに、収拾がつかないくらい泣いた」と言っているが、私ももうダメでしたね…。
原作も、ここから号泣でしたが…CDも。
「俺より長生きしてくれてありがとう」
重い。重いけど…私も夫に同じことを願っている。
また忘れて、また思い出す。
彼が書いた小説の中で自分は生きている。
自分を思い出すと同時に彼も思い出す。
原作では「悲しみよりも懐かしさのほうがもう深い」「毎日、毎日、繰り返される。愛しさと懐かしさが、途方もない深さで混ざり合っていく」と書かれる。
歳をとること、添い遂げることの尊さに打ちのめされたが…カットしたな…。
ここで冒頭の話に戻りますが…
指先が空気にとける話は作中に数回出てくる。
それが「伸ばした指先が空気にとけて、彼に触れる」
彼との邂逅なわけです。
何もかもを超えて、何度でも彼と会える。
その絆と儚さが圧倒的にドラマチックで胸が潰れるほど泣いた。
パートナーと慈しみ合った日々の象徴。
そのクライマックスがここだった。
原作の表現は是非自分で読んで確かめてほしい。
全然違う。
しかし全体的には、及第点だし、間違ってはいないと思う。
私が原作で号泣したいくつかの場面は、松岡さんと古川さんのずば抜けた演技力をもってしても、原作の衝撃の半分にも満たなかったが。
メイト特典フリト。
演じ甲斐のある作品だったようで何よりです。
松岡さんはこういう話が好きだと思った。
小説原作の心情を細やかに追うCDが増えますように。
日野さんと良平さんのコメントもあり、このCPのCDも出していいのよ。