【BLCD感想】すみれびより(2016年/月村奎/興津和幸× 松岡禎丞) | twilight

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【BLCD感想】すみれびより(2016年/月村奎/興津和幸× 松岡禎丞)

 

小説を1枚でCD化。
原作はかなり地味なピュアラブ。

細かな出来事を積み上げて人物像を描いていたが、バッサリ切ってある脚本。
前半は、出来事が超ハイペースで進む。
原作未読だとキャラの考え方が伝わってこないので行動が唐突に思えるのでは?
キャラの掘り下げがされていないので、感情移入できず、
これでは地味というよりつまらない話に感じてしまう懸念…。
あまりにマイナス思考な芙蓉は原作だと歯痒いが、その印象は軽減。

トラック4のお互いの募る想いを吐露する場面は、さすがに聴かせます。
「会いたかった、死ぬほど会いたかった…」と泣く松岡さんが絶品。
原作未読でよくわからないと思っても、ここまでは聴いてほしい。
このあたりから話が動き出すので演技にもメリハリが出て楽しめると思う。

後半は、初々しいラブストーリー。

原作を読んだときに、ここがこの話の言いたいところなのだと感じた箇所が2節あった。
ひとつはp172
「存在を肯定してくれる人がいることは、多分、人生で一番幸せなことだ」
芙蓉の自己肯定感の低さをこれでもかと書き綴る中で、これはカタルシスだろうと思ったが、
このシーン自体がカットされていた。

もうひとつはp211
「この清らかで明るい幸福感が間違いだというなら、この世に正しいことなんてひとつもないと思う」
これは初めて身体を重ねるシーンのモノローグ。
なんという瑞々しさ!

総括。
これだけ端折られると、地味だが良作とも言い難い。
ラブストーリーとしても弱い。
濡れ場は原作通り、かなり少量。
演技は安定しているが、そんなことはわかっているし、ここでしか聴けない演技は無い。
どこで満足度を得るか難しい作品。
王子様興津×小動物松岡なら「嘘つき溺愛ダーリン」を推す。