速さより丁寧さ! | 彼は彼で、必死で生きてる           

彼は彼で、必死で生きてる           

良いも悪いも善も悪も
優れているも劣っているも
社会や時代が引っ張った
一本の線の上か下か。あるいは右か左か。

静かに目や耳を澄ませた時
見えてくるもの聞こえてくるものって
何なのだろう?

早いことより、丁寧なこと。

これは僕の価値観。

遅いぞと、よく怒られた。
もういい、と途中の仕事を取り上げられた。

不器用と言われ、
僕は、雲を見ながら、土手の上を歩くのが好きになっていった。

ある日やっていた仕事は、
新築の家のガレージの掃除。

家のガレージ前に竹箒と一緒に車から降ろされた。

いつまでにどうしたらいいのかもわからないまま、
ただひたすらに掃いた。

砂埃の上に竹箒で掃いた後のすじが残り、
そして、やがて砂が一切なくなると、
コンクリートは磨かれた石のようになった。

長すぎる時間の後、会社の人の車が来て、
僕はまた車に乗って次の家へ。


その夜、その小さな会社の現場主任の人は、
アルバイトの僕を居酒屋に招いて、
「ありがとう。きれいになっていて、
見学に来たお客さんがものすごく喜んでいた」

昔むかしの話だけれど、
作業の遅い僕の仕事が
ほめられた最初の時だったかもしれない。

ゆっくりと丁寧にやりつつ、
速さや要領の良さは後から付いてくる。
慣れるほどに手を抜くようにもなる。

初めから手を抜いて、要領よくやることを覚えてしまったら、
丁寧な仕事を身につける機会を失ってしまう。


速さのない丁寧な仕事は時に認められるけれど、
丁寧さのない早いだけの仕事は、
やがて、見捨てられていくってこと。

これは、もちろん僕だけの価値観。