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いくつか

SS倉庫兼サイトの代わりなのでいくつか投下しといた。
書き込んで再投下したいのもあるのでウキウキである

【SS】壊れた 雨【スザルル】

今日も明日も雨らしいので、雨のお話を書いてみたよ。>












降り始めは、ぽつぽつ。
それがほんの一瞬でも、必ずそうして始まるのが雨というものだ。
そして、降り出す前には独特のにおいがする。
降り出した後も、止んだ後も。
それぞれ、違うにおいがある。
僕は一時、雨が好きだった。
雨のにおいが好きだった。
雨の中を歩くのが好きだった。
傘もささず、ぱたぱたと降る雨の中で外に出ると、濡れた土と緑の匂いに包まれる。
僕はそれが好きで、雨が降る日は大体、傘を持たずに外に出ていた。
ほんの幼い頃の話だ。
幼馴染たちの住まう土蔵に着くまでの、短い時間に限定された楽しみ。
いつも、扉を開けて出迎える幼馴染に怒鳴られていた。
ちゃんと傘をさせ、びしょ濡れじゃないか馬鹿。
風邪でも引いたらどうするんだ、馬鹿。
馬鹿スザク。
何回馬鹿って言われたかわからないくらい、毎回毎回。
絶対に途中から、馬鹿って言うときの彼の口の中は酸っぱかっただろう。
味見したわけじゃないけど、確信していた。
僕は雨が好きだった。
雨の匂いが好きで、そしてびしょ濡れになっては幼馴染に、ルルーシュに叱られるのが、好きだった。
今は、僕は雨が嫌いだ。
雨が降ると、自分の体中に染み付いた硝煙の臭いが鼻につく。
苛々する。
大嫌いだ。
硝煙の臭いを消したくて、僕は傘をささずに歩く。
びしょ濡れになっても、叱ってくれるルルーシュはいない。
僕は雨が嫌いだ。
雨と土の匂いが嫌いだ。
温かい夏の雨が嫌いだ。
凍えるばかりの冬の雨が嫌いだ。
大嫌いだ。
思い出に浸る自分が嫌いだ。
大嫌いだ。
思い出の中のルルーシュが大好きで、嫌いだ。
僕は僕が嫌いだ。
だから雨が大嫌いだ。
僕は傘を持たずに歩く。
硝煙の臭いがする。
雨がどれだけ降っても、消えない臭いがする。
今の自分と昔の自分の違いが嫌になって、僕は嗤った。
ぽつぽつから始まった大雨に打たれながら、僕は嗤った。
顔を打つ雨が痛いから、大嫌いだと叫んでやった。
可笑しくて仕方なかった。
嗤いながら歩く僕を、誰かが遠巻きに見ては逃げていった。
きっと気狂いに見えるに違いない。
可笑しくなって、また嗤った。
もう下着までびしょ濡れだ。
屋根はまだ見えてこない。
ああ、嫌な匂いがする。
大嫌いだ。
けらけらと嗤いながらただ歩いていたら、突然雨が消え失せた。
目の前30センチのところは土砂降りなのに、僕に降る雨は消え失せた。
振り返ったら、思い出と同じで違う顔が目の前にあって。
「……っの、馬鹿!!」
思い出と同じ口調で、だけど今は違う声が僕を叱り付けた。
「どうしてお前はいつもいつも傘をささないんだ!?風邪でも引いたらどうするんだこの大馬鹿がっ…!」
毎回同じだった叱り文句に、大がついた。
僕とルルーシュは大きくなって、変わったのに、雨の中の僕らは変わらない。
「…何笑ってるんだ、大馬鹿」
ルルーシュの不機嫌な顔が、嬉しいくらい記憶とおんなじで。
「やっぱり、好きだな」
「?…雨がか?」
相変わらずおかしな奴だなとぼやいて、ルルーシュは僕の手を引っ張った。
「…ほら、行くぞ大馬鹿。俺まで濡れるのは御免だ」
狭い傘の中で手を繋いだまま、僕らは歩いた。
雨の匂いと、硝煙の臭いと、それからルルーシュの匂いがした。


僕は雨が好きだった。
僕は雨が嫌いだった。
壊れた雨に、僕はさよならをした。
僕は昔も今も、ルルーシュが大好きだ。


だからさよなら、壊れた 雨。













>壊れてるのはお前だ馬鹿w
いや俺かw
そんな雨のおはなし。
タイトル拝借しただけで、カイト兄さんの「壊れた 雨」とは全く関係ない話になってました。
なんだかスザルル上げるの久しぶりだ。

【SS】鬼籍の誕生日【暗いスザ誕】

ずっと不思議に思っていた。
ルルーシュが僕用にって遺した、モバイルパソコン。
個人的な情報はほとんど入っていなくて、でもモニターの端では何かがずっと、点滅していた。
消し方もわからないし、ほんの小さな丸いアイコンは邪魔なわけでもないから、そのままにしていた。
ずっと。
クリックしても何の反応もない、意味のわからないアイコン。
時刻表示を見るときに目に入るだけの。
それでも、それが何なのか知りたかった。
だからずっと、不思議に思っていた。

エアコンの効いた自室では、視界を狭める仮面もマントも必要ない。
暦の上では夏…その実梅雨から抜けきれていない半端な季節。
僕がいつものようにパソコンの電源を入れると、あのアイコンの形が変わっていた。
丸から、星へ。
色も、紫色になっていた。
それはこのアイコンを見つけてから初めての変化で、僕はなんだか嬉しくなってそのアイコンを、クリックしてみた。


開いた画面は、苺の乗ったケーキの画像。
画像の上にかぶさるように、短い文章が書かれていた。
それは、僕への


『誕生日おめでとう、スザク』

メッセージ…

『お前のことだからきっと自分の誕生日なんて忘れてるだろうと思って、設定しておいた』

ルルーシュ、からの

『これを見てるってことは、俺はもう居ないけど』

視界が霞む、目蓋が痛い…

『お前が枢木スザクとして生まれた日を、祝いたかったんだ』

暖かい感触が、頬を滑った。

『だから』

先を読むのがつらくて、僕の視界はぼやけていく。
でも、文章を追うのがやめられなくて。

『最後に伝えたかった』

……ルルーシュ、待って

『スザク、誕生日おめでとう。』

涙が

『生まれてくれて、ありがとう』

涙、が

『お前に出会えて、良かった』

お願いだ、その先は

『ずっと、お前を好きでいるよ』

もう

『実際の言葉では、きっと言えなかったと思うけど』

涙が止まらなくて、僕はパソコンを閉じた。
たった一言、閉じる前に見えてしまった言葉が嬉しくて、どうしようもなく痛かった。

…ああ、君はもう、この世界のどこにもいないんだ。
この機械の中にたった一つ残った、君の遺言。
君を抱き締めて何度もなんどもささやいたのと同じ…ことば。

涙は後から後から流れ続けて、服を濡らした。


「僕の気持ちも…変わらないよ、ルルーシュ…っ」


もう誕生日なんて必要なかったのに、君がこんなメッセージを残さなければ思い出しもしなかったのに。


「ずるい、よ……」


僕は…とても久しぶりに、大声を出して泣いた。
泣くな馬鹿、とルルーシュが苦笑してる、そんな気がした。





『俺は、変わらないから。ずっと、スザクを』







『愛してるから…』













窓の外で、空は僕と同じように、泣いていた。














>スザク誕生日おめでとう。。。って今日16日なんだけどもね。
10日は鬱々したり仕事だったりそれ以降も鬱々鬱々してたからちゃんとお祝いできなくて、ごめんな。。。スザク。

あ、SSの内容が全くめでたくなくてすみません。