アウシュビッツのユダヤ人強制収容所内で起き
ている惨劇を、収容所内を一切描かず、そこに
隣接する民家の日常を描くことで、よりリアル
に想像させる。
例えば、お茶の間の家族の団らんや、プール付
きの庭で催されるホームパーティの最中に、時
折り塀の向こうから聞こえる、銃声や悲鳴のよ
うな叫び声。でも住民もゲストも、その音には
何の反応も示さない。夜通し鳴り続ける大量の
何か(!?)を燃やしているらしいボイラーの
ような地鳴りを伴う音にも。
それは多分、それが日常になってしまっている
から。生の現場を見せられるよりもずっと恐ろ
しい、まさに悪夢のような狂気の世界。
薄い塀で仕切られた隣り合わせの天国と地獄。
オープニングとエンディングのタイトルバック
のBGMも、かつて聞いた事のない不穏な不協
和音の連続で、まるで収容者達の断末魔の叫び
を聞かされているよう。
ただ、既成概念をぶっ壊そうとするチャレンジ
はまぁよしとして、あまりに説明不足で途中の
様々な意味ありげなシーンの理解が及ばず、何
度も置いてけぼりをくらわされたのは、ちょっ
とどうなの???それって私だけ???
とは言え、ずっしりと重いメッセージは、
十分過ぎるほどに伝わりました。
75点