好みではないけれど、物凄い熱量を感じさせる作品! 辻村深月『凍りのくじら』 | GESHICOMのブログ

GESHICOMのブログ

CINEMA、BOOK、EVENT、LIVE&PERFORMANCE...

 

500頁以上の大作という事実だけではなく、

全編通じて中身の密度も半端なく濃い、

もの凄い熱量の作品だった。

ただそれは決して良い事ばかりでは無く、

寧ろ一冊の本に様々な要素を詰め込み過ぎて、

読んでいて消化不良を起こしてしまった。

 

物語の核となる主人公の少女の孤独と苦悩、

そしてそこからの脱却と成長。

それに纏わる様々な意味深なエピソード。

例えば…、

随所に行間から溢れ出るドラえもんへの愛。

父と自分の物語。

母と自分の物語。

父と母の物語。

父の親友で自分と母の後見人である男の物語。

元彼の狂気と恐怖。

少女を成長へと導く上級生の謎。

う~ん、盛り沢山!!

 

とは言え、物語の中に巧みにミステリーの要素

を潜ませて、最後の最後に鮮やかに伏線を回収

する術には大いに感心させられた。

しかもその高度な技術によって、寧ろエモさを

最大級に際立たせたのはお見事!

余談ですが、名作映画「シックスセンス」を

思い出したのは私だけ?。

 

人間の内面の深い所をしっかりと描いた

文学作品であり、上質なミステリーであり、

ハラハラドキドキのサスペンスの要素もあ

って、素晴らしい作品だと思います。

 

が、悲しいかな、メインテーマであろう、

今時の思春期の少女の揺れ動く心については、

全く理解も共感もできなかった。

 

80点