「推し」 のカジュアル化が生んだデメリット
競争意識、無理な資金工面がパパ活・闇バイトに繋がる
* J-CAST ニュース (5月4日) より *
現在 「推し」 がいる人は約6割で、10代女性になると9割強──。
LINEヤフーが13歳以上の男女2万8182人を対象に実施した調査結果だ。
さまざまな企業「推し」 を活用したマーケティングも生まれている。
だが、 「推しのカジュアル化」 が負の側面を生んだと、オタク文化に詳しいニッセイ基礎研究所研究員の廣瀬涼 氏は指摘する。
推しの市場が広がったことで、誰もが 「推して当たり前」 という風潮が生まれた。
SNSの普及も相まって “ 他人の推し活が可視化 “ されるようになった結果、推し活に競争意識が生まれ、無理した資金工面が行われることもあり、パパ活や闇バイトなどの社会問題に繋がっているという。
廣瀬氏に詳しい話を聞いた。
推し色、推し香水、推しチョコ。
近年、 「推し」 を冠したコンテンツが増えている。
推し色とは、応援している人物やキャラクターをイメージする色のこと。
アイドルグループなどのメンバーカラー、髪や服で色が決まる。
こうした 「推し」 をターゲットにした市場が広がっている。
廣瀬氏は、 「推し」 がカジュアル化したことで、さまざまなコミュニティーで行われるファンの活動が総称できるようになったと話す。
その結果、推しグッズ、推し色、推しに 「貢ぐ」 ために必要となるクレジットカードなど、大規模なマーケットが生まれた。
そもそも 「推し」 とはどんな定義なのか。
廣瀬氏によれば、自分が他人に勧めたいほど応援している好きな対象を指す。
また、精神的充足感に繋がる対象であることも。
推すことで “ 心を満たしてくれる “ 存在ということだ。
最近では、推しの応援活動を意味する 「推し活」 のレベルや熱量の差に関係なく、 「好きならば好き」 と言える風潮が生まれた。
推しの意味が 「自分の好きなもの」 と、アイドルやアニメキャラだけでなく、ラーメンやカフェなど幅広い対象を指すようにも変わった。
◈ 他人と競い合うためではない
こうした広がりは、 「推し」 という言葉の “ カジュアル化 “ と関係する。
では、そのメリットは何か。
廣瀬氏は 「あまりないと思います」 。
なぜなら、好きな人物やキャラを応援する活動は昔からあるからだ。
強いて言えば、先述した推しマーケットの広がりだ。
一方、 「推し」 のカジュアル化にはデメリットがある。
廣瀬氏はこう説明する。
「推すことが当然視されるような世の中になった。
『自分が好きならばそれでいい』と思って推し活が始まったはずが、どうしても他人と比較してしまう。
以前に比べて競い合いが露骨になってくるわけです」
推しを応援する活動が精神的充足な繋がるならば、他人を顧みる必要はない。
だが、推しに依存的な人は、他の何よりも貢献したり、認知されたりすることが精神的に満たされるようになる。
握手会や投げ銭にお金を使うため、稼ぐ必要がある。
大金が必要になれば、パパ活や闇バイトといった社会問題に繋がる恐れがあるのだ。
推し活で精神的充足を満たす人に、それをやめさせるのは難しく、その権利もないと廣瀬氏。
だが、初心に立ち返ることの大切さを訴える。
他人と競い合うためではなく、 “ 好きだからこそ推す “ のではないか。
また、推せる範囲で推すことが大事とも話した。
『 自分が好きならばそれでいい 』
拙者は “ 自分が (本当に) 好き“ なものは、他人に勧めることはしないです。
「好き」 の定義は人それぞれですから。