新見市で羅生門ガイド養成講座が始まりました | 地質・地理と文化 ージオサイト巡りの旅-

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岡山県新見市では11月7日から羅生門ガイド養成講座が始まりました。これは、現在立ち入り禁止となっている羅生門内部に、ガイド付きでのみ入ることができるようにしようという計画の一環です。お客さんに羅生門の素晴らしさを体感し、地域を知っていただけるガイドを養成しようとするもので、その講師の一人として私も関わることになりました。

 

国の天然記念物「羅生門」

石灰岩の台地「阿哲台」にある羅生門(新見市草間)は、もともとあった鍾乳洞の天井が陥没し、その一部が天然の橋となって残ったもので、国の天然記念物(1930年指定)となっています。駐車場も整備され、遊歩道から階段を下りて近くで見上げると、高さ38mの洞門は見る人を圧倒します。また車いすや足の悪い人は遊歩道から見ることもできます。

 この洞門の景観だけでなく、そこまでの遊歩道の各所に現れる石灰岩の形や地形を見たり、夏にはヒメボタルの乱舞する姿を見ることもできます。

 

立ち入り禁止となっている羅生門

実は通常見ることができるのは羅生門のうち最も手前にあって、最も大きい第1門と呼ばれているものだけです。この先には第2門・大3門・第4門と続いているのですが、現在は立ち入り禁止となっているのです。その理由は落石などの危険があることと足元が悪いことです。

立ち入り禁止にはもう一つ理由があります。

羅生門は日本蘚苔類学会が認定した全国29カ所ある「日本の貴重なコケの森」に選ばれた場所なのです。ここには160種以上のコケ植物が存在し、その中には絶滅危惧種も多く含まれています。

来訪者の靴底についた泥によって外来の植物が移入しないように、また間違ってコケを踏み付けたりしないように、遊歩道を整備したりすることが必要となります。

 

ガイド養成講座の開始

とはいえ、いつまでも立ち入り禁止にしておくのはもったいない話です。これらを見て羅生門の自然や歴史を知り、さらに地域全体の成り立ちや環境に想いを馳せていただくことは大切なことです。しかしながら無制限に人が入ることは環境に対して決して良いことではありません。また、その場所の本当の素晴らしさは、ただ入って見て来るだけで簡単に伝わるものでもありません。

 そこで「ガイドど同伴でのみ、ヘルメット着用で入ろう」ということになり、そのためのガイド養成講座受講生を募集したところ、20名の方に応募いただきました。

 その初日は11月7日にあり、午前中は羅生門近くの建物に集まりオリエンテーション後、私が現地を案内しガイドのポイントなどを伝えました。この場所が新見市でのガイド事業の始まりの地となります。

 

 そして午後は草間公民館に移動し、オンラインで山陰海岸ジオパークの今井ひろこさん(NPOたじま海の学校)による「伝わるガイド手法」と「リスクマネジメント」の2本立て。ちょっとしたワークを交えた軽妙な講義で皆さん熱心に参加されていました。ただ、オンラインだからなのかまだ馴染めていないのか、質問が出なかったのが残念でしたが、今井さんとは直接お会いする機会もあるので、その時色々話をしていただければと思います。

今後7コマの養成講座と自由参加の5講座がおこなわれ、来年3月にはガイド実践をしたのち、初代の新見市認定ガイドが誕生する予定です。