「ジオパークとは何かわからない」という疑問が理解できない | 地質・地理と文化 ージオサイト巡りの旅-

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おもに近畿・中国・四国地方を中心に
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思い出しながら書いているので、記事の日付が前後することがあります

今日から新年度

昨年度末の山陰海岸ジオパークは、1月から3回のステップアップ会議(1/26、2/4、2/19)、みんなの発表会(3月18日)、ジオ談会(3月27日)とイベントが続き、3人の外部講師にもそれぞれお話しいただき、中身の濃い3ヶ月でした。

ジオパークは難しい?

 さて、こういうジオパークの活動をしていると、時々「ジオパークとは何か、わからない」「ジオパークは難しい」と言われることがあります。私の偏った印象では、そういう質問をする人は往々にして、思慮深い人、まじめな人、学識のある人、だったりします。しかし正直なところ、私自身はなぜ「わからない」と思うのかがわかりません。それは私がジオパークにどっぷりつかりすぎているのかもしれないし、何も考えていないからなのかもしれません。

 そういわれれば、私自身ジオパークとは何か、などと深く考えたことがありません。2006年ごろにジオパークというものを知って、ネットでヨーロッパのジオパークのサイトを見て、非常にすんなりと理解でき、これは面白い、と思うと同時に、素晴らしいジオサイトを並べただけの当時の山陰海岸ジオパーク活動を見て、これじゃあ世界ジオパークは無理だ、と思った記憶があります。

 

ジオパークは何か、と問われれば

(1)貴重な地形や地質資源があり、それに関連した生態学や歴史的・文化的な遺産があり、明瞭な境界で囲まれた地域で、

(2)それらの遺産を確実に保護し、

(3)その価値を知ってもらうための教育活動を行い、

(4)ツーリズムや産業、防災などに活かして

(5)地域の持続可能な発展を促す活動をする地域

と答えるしかありません。

この(1)~(5)の文のどこが難しいのかがわかりません。

日本ジオパーク委員会のサイトには、ユネスコ世界ジオパークのガイドラインとその和訳が載っているので、ぜひ読んでください。どちらもわかりやすい文章です。

 

 難しいのは、これらをどのようにして実現させていくのかであって、それは各ジオパークでそれぞれ考えていかないといけません。 ジオパークが難しいのではなく、ジオパークの運営や活動の方法が難しいのです。

 よくジオパークには正解がないと言われますが、上の(1)~(5)に関しては憲法のようなもので、普遍的であって変えることはできません。それに対して、そこへ向かう方策はジオパークによって違い、年々進化していくべきものです。それを考えるのは現場でジオパークを進めていく私たちであり、世界ジオパークや日本ジオパーク委員会の先生の意見に従ったり、首長に支持を仰いで推進するものでもありません。

 

 先日のジオ談会で講師に指摘された「理論から入るのはやめたほうがよい」というのも同様の考えで、(1)~(5)は歴然としてあるので、それはそのまま受け入れて、それに向かってどうしたらいいか考え、実践していくのが良い。「ジオパークとは何か?」から入るとそこで思考が止まってしまい、前へ進まないという意味だと思います。

 

そんなことをを含めていろいろ考えさせられた年度末でした。