阪急今津線の車内を舞台にした人間模様を描いた物語。ひと駅ごとに主人公が変わるので、いつでも好きな章を読めるのがいい。それでいて前の章を引き継ぎながら話が進むので、同じ登場人物が何度も登場して愛着が湧く。気が向いたときに何度でも読んでしまう読みきりマンガみたいな本。入院している人への御見舞にちょうどいい一冊。

 圭一と美帆の見ているとムズムズするような話や、征志とユキの穏やかな関係は読んでいるとほっとする。宝塚から西宮北口までの片道分は雑誌で連載されていた話で、新たな出会いや生活の始まりを予感させる爽やかなストーリー。後半は折り返しで西宮北口から宝塚に戻る書き下ろしの物語。前半で気になっていた話の後日談に新たな出会いが加わって、気持ちのいい話が続く。実際に「生」の字を探してみたくなったので、行ってみたら武庫川の中州にちゃんと残っていた。しかし、宝塚から西宮北口を向かう電車では「牛」に見えた。