トマトが真っ赤に熟れるまで 第19章 こころの授業2 | 【税理士】社長と会社を元気にする会計事務所

 

 

こんにちは、松井です。

 

 

 

この「トマトが真っ赤に熟れるまで」は、

毎月、クライアント向けに書いている

ストーリーでしたが、

第9章からは一般にも公開しています。

 

 

 

 

 

きっと何かのヒントになると思うので、

少し長めですが、どうかおつきあいください。

 

 

 

 

 

 

是非こちらも読んでみてください。

⇒ トマトが真っ赤に熟れるまで 第9章

⇒ トマトが真っ赤に熟れるまで 第10章

⇒ トマトが真っ赤に熟れるまで 第11章

⇒ トマトが真っ赤に熟れるまで 第12章

⇒ トマトが真っ赤に熟れるまで 第13章

⇒ トマトが真っ赤に熟れるまで 第14章

⇒ トマトが真っ赤に熟れるまで 第15章

⇒ トマトが真っ赤に熟れるまで 第16章

⇒ トマトが真っ赤に熟れるまで 第17章

 

 

 

今回のお話は前回からの続きなので、

是非こちらを読んでから読んでください。

⇒ トマトが真っ赤に熟れるまで 第18章

 

 

 

 

 

 

 

 

トマトが真っ赤に熟れるまで

 

 

 

【前回までのあらすじ】

 

 主人公の藤原和彦は、淡路島でトマトを生産する農業生産者。ある冬の寒い日、藤原のハウスに侵入したみどりは、藤原にみつかって逃げようとしてラックにぶつかったショックで記憶障害になってしまう。

 

 資金繰りに困った藤原は、融資の相談に行った銀行で、公認会計士の三浦と出会う。初対面なのに自分の状況をズバリ言い当てる三浦の心眼に心服するが、ポルシェを売ることを相談に乗る条件と言われて困ってしまう。

 

 ポルシェを藤原に売った張本人の角川のフォローもあって、三浦からのお題もなんとかクリアして、角川から環境整備や営業、みどりからは落ち込まないコツを教えてもらう。

 

 新しいスタッフの仲本(なかもと)が入って何かとイライラが絶えない藤原にみどりのこころの授業が始まった。みどりは心のタコメーター(クルマのエンジン回転数を表示したメーターで、心に置きかえると心の状態がわかるメーター)が見えるようになると言うのだが……。

 

 

 

 

 

 

 

第19章 こころの授業2

 

 十月とは思えないぐらい昼間は暑かったのに、日が落ちると急に気温が下がって肌寒さを感じる。店内には、コーヒーのいい香りとともに、アコースティックの曲がゆったりとしたテンポで流れていた。一人客が多いのか、どこからも話し声は聞こえてこない。

 

 みどりは、初めて食べるワッフルの美味しさに舌鼓をうっていた。ゆっくりとコーヒーを飲むことがなかったので、このまったりとした雰囲気は悪くない。

 

 

 

 

 

「心のタコメーターは、どうやったら見られるようになるんですか?」

 

 藤原の突然の言葉に、みどりはハッとした。目の前に藤原がいることを完全に忘れていたからだ。藤原の真剣な表情を見て、みどりは慎重に言葉を選んだ。

 

 

 

 

 

 

「では、心の話を始めるね。最初に大事は話からするね」

 

 そう言うと、みどりは藤原がうなずくのを待ってから口を開いた。

 

 

 

 

 

 

「今から話すことは全部ウソだから!」

 

 藤原は絶句した。何を言うのかと思ったらウソの話をするなんて……。藤原がなんて言おうかと考えている間にみどりは話を続けた。

 

 

 

 

 

「なぜウソの話をするのかと思ったよね。心については、どの視点、例えば脳科学からなのか、心理学なのか、古くから伝えられた考え方からなのかによって異なるから、こんな考え方があるぐらいの気持ちで聞いてほしいの。ただし、信じればいいことは必ずある!」

 

 藤原は少し安心した。ウソというから何を聞かされるのかと思ったが、変な反論はせずに素直に聞いてみよう。

 

 

 

 

 

 

「人にはみんな、心のタコメーターが存在するんだけど、その存在に気がついていないの。言い方を変えると、今、自分の心がどんな状態なのか、どこをさまよっているかに気がついていないの。だから、自分が今いる場所に気づくことがとっても大事なの。

 

 まずは、基本の話からね。心、わかりにくければ意識でもいいけど、意識がどこをさまようかという話をすると、3つの場所、敢えて場所という言葉を使うけど、3つあって、長くいる場所から順番に言うと、『想像』『感情』『身体感覚』」

 

 

 

 

 

 

 藤原は、「場所」という言葉と、「想像」「感情」「身体感覚」が結びつかなかった。どこか解せない表情をしている藤原に気づいたみどりは、言葉をつけ加えた。

 

「場所って言う言葉に、とらわれないでね。意識はどこか一か所にしかいないから、場所という言葉を使った方がわかりやすいかなと思っただけだから。実際にはほんの一瞬で意識は動くからほぼ同時にさっきの三つの場所にいるように思えるけどね。

 

 

 

 

 

 では、一つめの『想像』からね。『想像』は、経験したことをきっかけとして、経験していないことを頭の中で考えること。ちょっと、目をつぶって仲本さんのことを思い出してみて!」

 

 藤原は言われたとおりにした。

 

「仲本さんは何か言ってる?」

 

「『大丈夫っす。ちゃんとわかってるんで』って言っています」

 

 

 

 

 

 

 

「今、仲本さんはここにいる?」

 

 藤原はみどりが何を言おうとしているのかわからずに、店内をキョロキョロした。

 

「……いませんけど」

 

 

 

 

 

 

「だよね。現実には今ここに存在しない仲本さんが、あなたの頭の中に現れて話しているんでしょ? それが、『想像』。そういう頭の中で思い描くことが『想像』だよ。今のはたぶん、仲本さんが過去に言った言葉でしょ? それが過去の事実に対する『想像』。明日、仲本さんに会ったら、あなたはどうするの?」

 

 藤原は少し考えてから口を開いた。

 

 

 

 

 

 

「たぶん今日あった農作業のミスについて、注意すると思います」

 

「仲本さんはちゃんとあなたのお話を聞きそう?」

 

 藤原はかぶりを振った。

 

 

 

 

 

「聞いているフリはしますが、実際には聞いていないと思います。だからまた同じミスをするでしょう」

 

「それも『想像』。まだ起こっていない未来に対して、あなたが勝手に頭の中で考えている『想像』なの。ほとんど意識は『想像』の場所にいると言っていいぐらい。別の言い方をすれば、意識の場所に目を向けないと、つまり無意識状態だとほとんどずっと『想像』を繰り返しているの」

 

 

 

 

 

 

 言われてみれば、藤原はここのところずっと仲本のことを考えていた。どうやって教えてあげればいいだろうと考えていることもあったが、みどりが言うように、過去の仲本が言った言葉や気のない表情、勝手に自分で作った未来の仲本の行動を反芻(はんすう)することの方が多かった。

 

「二つめの『感情』はわかる?」

 

 

 

 

 みどりに見つめられて、藤原は思わず目を(そら)した。普段じっくりと見ていないから忘れていたが、あらためてよく見ると、やはりみどりは美人だ。

 

「楽しいとか、嬉しいとか、寂しいとか、腹が立つってことですか?」

 

 

 

 

 

「そうだね。『感情』の種類は確かにいっぱいあるけど、煎じ詰めれば結局二種類に集約できるの。『(かい)』か『不快(ふかい)』。さっきあなたが言った感情で言うと、楽しいとか嬉しいが『快』で、寂しいとか腹が立つが『不快』。もっと言うと、『快』でも『不快』でもない感情が『フラット』。結論から言うと、目指すべくはこの『フラット』だけどね」

 

「『快』の方がいいんじゃないんですか? ボクは、楽しい感情や嬉しい感情を味わいたいです」

 

 思わず藤原が大きな声を出した。

 

 

 

 

 

 

 

「うんうん、その気持はよくわかる。でもね、残念ながら『快』は長続きしないの。例えば、わたしとあなたと彩乃(あやの)さんの三人でピクニックに行ったとするよね。で、ものすごく楽しくて『快』だったとする。ここまではいいよね?」

 

 藤原は嬉しそうに頷いた。

 

 

 

 

 

「翌週、同じ三人で違う場所にピクニックに行くんだけど、今度はちょっと場所が遠いこともあって途中渋滞に巻き込まれちゃう。そうすると、途端に『不快』が顔を出す。ようやく着いたけど、思ったほど綺麗な景色じゃなかった。また『不快』になる。そして、帰りも渋滞になって……。

 

 という事で、さらに翌週はやっぱり最初に行った所に行こうということになるんだけど、行ってみると二回目ってこともあって、あれっ、こんな感じだっけ? ってなったりするの」

 

 

 

 

「でも、楽しい可能性もありますよね?」

 

 と、藤原。みどりは、ニコッとしてから(うなず)いた。

 

「あるよ。でもそれくらい当てにならないものってことなの。『快』はあればラッキーぐらいで、『フラット』を目指そう。最後の『身体感覚』は、いわゆる五感だと思ってもらえばいいわ。視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚のことね」

 

 

 

 

 

 

「あの……、ちょっといいですか? 『身体感覚』は、心というよりも身体(からだ)の一部という気がするのですが」

 

「いい質問だね。確かに身体の感覚だから、身体の一部とも言える。けど、それを心で感じるってことだから心とも言える。これはもう単なる考え方だから、そこはあまり深く考えないで。それを言い出すと、脳科学的には別の見解もあって、話がどんどんややこしくなっちゃって本質からずれていくから。ここでは、『身体感覚』は心のひとつだと思っておいて。もっと理解が進んだら、次の段階にいけばいいから」

 

 みどりにも藤原の真剣さが伝わって、だんだんと熱を帯びた口調で語り始めた。

 

 

 

 

 

 

「ここまでの話をまとめるね。心の行き先は三箇所っていうことだったでしょ。一つめが『想像』、二つめが『感情』、三つめが『身体感覚』。これが心の中では一つめから始まって、二つめ、三つめに進んでいくことが多いのね。

 

 もう一度さっきの仲本さんの話に戻すね。仲本さんに『大丈夫。ちゃんとわかっている』って言われて、『どうせわかっていない癖に』というあなたの『想像』が始まるの。

 

 あなたは、頭の中で『想像』し続けていることに気がつかなくて、やがてイライラという怒りの『感情』が生まれる。そして、それにも気づかずにやがて胃がキュッとしめつけられるような『身体感覚』が出る。実はここまでは結構一瞬で起きている。

 

 でも、あなたは心の中で何が起こっているかがわからないものだから、どんどん怒りの『感情』は溜まり続ける。たぶん一回か二回で仲本さんが言うことを聞いていれば、さっきの怒りの『感情』も徐々に消えていくんだけど、何度も同じことを繰り返す内に、知らず知らずのうちに怒りの『感情』がマックスになって、そうなって初めてあなたは自分がイライラしていることに気がつくの」

 

 

 

 

 

 

 

 藤原は、みどりの話を聞きながら、思い当たることがあった。ここのところ、時折、舌が(しび)れる感覚を覚えていたのだが、どうして舌が痺れるのか考えたこともなかった。今の話を聞いて、仲本に対するイライラが引き起こした「身体感覚」だということがわかった。

 

「何度も言うけど、意識は大抵『想像』にあって、さっきのようにその『想像』が暴走して『感情』が動く。だからまずは、自分が『想像』していることに気づけばいいんだけど、前にあなたが言ったように、普段自分の内面ではなく、自分の外にしか意識が向いていない人は、自分が無意識に『想像』している事自体に気づかないのよ」

 

 

 

 

 

 

 確かに無自覚に想像を続けている気がする。

 

「では、どうすればいいんですか?」

 

 藤原の素朴な質問に、打てば響くようにみどりは答えた。

 

 

 

 

 

 

「ズバリ、『ラメラのプラクティス』をやってみて!」

 

 ラメラと聞いた藤原は、カメの怪獣の名前を思い浮かべて吹き出しそうになったが、みどりに悟られないように唇を噛み締めた。

 

 みどりによれば、「ラメラのプラクティス」とは、「ラベリング」「メジャリング」「ライティング」の頭文字をとった練習法らしい。この「ラメラのプラクティス」を続ければ、心のタコメーターが見えるようになるのだそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

「ラベリングは前に話したから、だいたいわかるでしょ。ただし、『想像』や『感情』のラベリングは若干上級編になるから、最初は自分の行動、つまり『身体感覚』のラベリングがオススメ。

 

 最初に『身体感覚』のラベリングから始めるのがいいのはね、わかりやすいというだけじゃなくて、さっきも話したように心は大抵『想像』か『感情』にいるから、『身体感覚』に集中することで、『想像』や『感情』がリセットされる効果もあるの。

 

 だからね、できれば毎日五分間を三セットやってみて! 毎日十五分間ラベリングをすれば、つまり『身体感覚』に目を向ければ、自分の内面に目を向けるクセづけになるし、何よりもスッキリしていることに気がつくはずよ」

 

 

 

 

 

 ここのところやるのを忘れていたが、ラベリングは以前少しやっていたので、やり方はわかるし、やれそうだと藤原は思った。

 

「次のメジャリングはね、自分の『感情』に点数をつけるということ。今のあなたの怒りの『感情』に点数をつけてみて。百点満点で何点ぐらい怒ってる?」

 

 

 

 

 

 

 藤原は自分の怒りに意識を向けた。かなりイライラはしている。でも、どのくらいイライラすると百点なのかがわからなかった。今の気分は八十点ぐらいという気もするし、六十点ぐらいという気もする。

 

 中々答えようとしない藤原を見て、みどりは言葉を継いだ。

 

 

 

 

 

 

 

「あまり難しく考えないで。たぶん初めて自分の『感情』に点数をつけるから戸惑っていると思うけど、段々とわかってくるから大丈夫。大事なのはね、自分の『感情』を客観的に見るってことなの。いつもは呑み込まれて気づかない『感情』に目を向ける練習なの。

 

 無自覚に溜まり続けない限り、不快な『感情』もやがて消えていくということを知ってさえいれば、それで十分」

 

 なるほどそういうものなのか。ついつい生真面目に、正確な点数をつけないといけないと思っていた藤原は少し気分が楽になった。

 

 

 

 

 

 

「最後のライティングは、心の日記をつけるということだね。ポイントは、事実と心の状態を(つい)にして書くこと。一日を振り返って、事実とその時に考えた『想像』、感じた『感情』『身体感覚』を覚えている範囲で書けばいい。

 

 そして、もうひとつ大事なことは、自分の心の状態が、正常範囲なのか、それを超えてレッドゾーンにいるのか、あるいはブレーキを踏みすぎてエンスト状態なのかも合わせて書くこと。これを続ければ、自分の心のタコメーターが見えるようになるし、正常範囲を広げていくこともできる」

 

 

 

 

 

「みどりさん、どうもありがとうございます。さっそく今日から実践してみます」

 

 藤原はそう言ってから、みどりにずっと聞きたいと思っていたことがあったのを思い出した。

 

「そう言えば、みどりさん。以前、心の授業という話を……」

 

 

 

 

 

 

 その時、藤原の携帯電話が鳴った。妹の彩乃からだった。みどりに目配せしてから、藤原は電話に出た。

 

「お兄ちゃん、すぐ戻ってきて! 仲本さんが大変なの!」

 

 仲本という名前を聞いて、すぐさま藤原の怒りのメーターが振り切った。それに気づかない藤原は、慌ててレシートを掴むとレジへと急いだ。中々レジに来ない店員を待ちながら、藤原は完全に怒りの感情に呑み込まれていた……。

 

 

 

(つづく)

 

 

 

 

 

前回から続く「こころの従業」について、

その道の専門家でもない私がこんなことを

書いていいのかという葛藤がありました。

 

 

 

 

いろいろと考えた末、

専門家ではないけど、

重度の障害がある娘の親ということもあって、

波乱万丈の人生を歩んできた一人の実践者の

経過報告ぐらいの気持ちで書いてみました。

 

 

 

随分とお金を使って、

いろいろなセミナーに通ったり、

本を読んできましたが、

結局溜め込む前に対処する方法に限る!

という結論に達しました。

 

 

 

 

と言っても、

まずはとりあえずの結論ということで、

マインドのマネジメントは特に経営者にとっては

必須のスキルとも言えるので、

さらに学び続けるつもりです。

 

 

 

 

元々遅筆ですが、

今回は特に何度も何度も書き直したので、

本当に時間がかかってしまいました。

 

そして、

書きたいことの3割ぐらいしか書けていません。

 

 

 

本文に出てくる話の中で、

わかりにくい言葉があったかもしれません。

 

 

悪いクセで、

いろいろなことを

ついクルマと結びつけてしまうので、

心のタコメーターという表現に

してしまったことです。

 

 

クルマを運転しない女性には

かえってわかりにくいかもしれないですね。

 

 

そんな方は、

圧力鍋についている圧力計をイメージ

してもらってもいいと思います。

 

 

 

美味しい料理を作るためには

強い圧力をかけることが必須ですが、

許容値を超えてしまうと危険です。

 

逆に、低い圧力では料理そのものが

できません。

 

 

 

許容範囲の中で、

できるだけ高い圧力をかけるための

練習法が「ラメラのプラクティス」

という訳です。

 

 

 

 

 

という訳で、

まだまだこころの授業は続きそうです。

 

 

 

何かのヒントになることを祈りつつ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


  松井浩一公認会計士税理士事務所
  兵庫県芦屋市宮川町1-10-304 
  0797-25-1575(平日9:30~17:30)
  info@genkizeirishi.com
  http://genkizeirishi.com


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